そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





最近地下室のシアタールームを使っていないなぁと思い、たまには名画でも見るかとこの映画をチョイス。
かなり昔一度観ただけで細部は忘れていた「史上最大の作戦」。
英題は「The Longest day (最も長い日)」。
第二次世界大戦の転機となったノルマンディ上陸作戦を描いた1962年の映画。
その感想。

さすがの名作。
星3つ。★★★
本作未見の方も、映画終盤に出てくる長い長いワンカットのシーンだけでも観たほうがいい。
凄すぎて呆気に取られるレベルのことを今から60年も前のハリウッド映画製作者たちはやっている。

まず出演者が凄い。
ジョン・ウェイン。
ヘンリー・フォンダ。
ロバート・ミッチャム。
若かりし日のショーン・コネリー。
他にもどこかで見た顔が続々。
これら豪華ハリウッドのスター軍団が大勢出演しつつ、主人公は1人もなし。
同じ日、同じ作戦に従事した人々が、誰を中心ともせずオムニバスで描かれていく。
そこが戦争映画でありつつもドキュメンタリーっぽさを出していて素晴らしい。
そして先ほど述べたワンカット撮影。
本編中に2箇所、凄いワンカット撮影があって、1つはドイツ軍戦闘機がビーチの連合国兵士たちを砲撃していく空撮シーン。
もう1つはカジノの建物に立てこもっているドイツ軍に連合国軍の兵士たちが突撃する空撮シーン(おそらくワイヤー撮影)。
この2つのワンカット長回しシーンの凄さたるや、本当に凄い。
CGも何もない時代に、エキストラ兵士を何千人も投入し、多量の爆薬を仕掛けて、一連の戦闘を再現しつつ撮影するという、筆舌尽くしがたいシーンになっている。
これは明らかに、全編をワンカットにこだわった「1917 命をかけた伝令」に影響を与えているだろう。

しかも、だ。
ここに描かれているノルマンディ上陸作戦で起きたあれやこれやは、全て実話。
原作者が生き残った兵士たちにインタビューをして収集した話を元に構成されている。
第二次世界大戦当時の実際の戦闘の空気感を、おそらく忠実に再現しているのだろう。
最前線の悲惨さは、この映画のオマハビーチ上陸作戦の描写をかなり参考にしているスピルバーグの「プライベート・ライアン」と同等に悲惨だが、それ以外の後方では案外のんきなことも起こっており、戦争というのは生身の人間が行うことだというのが実感できる。
生き死にに直面しているのは最前線だけで、それ以外の場所では普通の人の営みが続いているのだ。
この辺は「この世界の片隅に」が表現した戦時の生々しさ、リアルさと同等だろう。

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全世界で今年のナンバーワン大ヒット中の映画「バービー」。
日本では原爆がらみTweetで炎上して要らんニュースになっていたが、世界の映画史に残る女性映画監督史上ナンバーワンのヒット作・金字塔ということで、お盆休みの二子玉の映画館で観てきた。
その感想。

これは大傑作。
星3つ半。★★★1/2
素敵なムチャクチャで最高だ。
女性監督が、女性として、世の中に言いたいことを全部ぶちまけてやりたい放題した、「痛快」そのものの映画だった。

フェミニズム&ポリコレ映画だと噂には聞いていたが、そんなちっぽけな枠に決して収まらない熱量の高いコメディ。
主演のマーゴット・ロビーが自ら映画化権を獲得し、「レディ・バード」や「私の若草物語」で絶賛された女性監督グレタ・ガーウィグに演出を任せ、センスと風刺と毒と思想に溢れた2時間弱のめくるめく映像体験。
バカな男(男社会)に向けてはもちろん、それだけではなく全世界の全方位に向けてケンカを売り、一方で全方位を懐柔しようとしつつ、結局ナンセンスにまとめ上げるこの手腕。
バービー人形をテーマにして映画を作るって時に、バービーを作ったマテル社の自己否定をまっすぐやりつつ、言い訳的に歴史の話も織り込み、女性監督ならではのフェミニズム的思想を皮肉と下ネタと最終的にはおバカで包み込むという、なんて素晴らしい映画なのよ?
これをこんな脚本で作らせたマテル社の戦略も、スゲー優秀。
これでまたバービー人形がめっちゃ売れてウッハウハなんじゃねーの(笑)。
映画観ている最中ずっとニヤニヤ、時に爆笑、時に(男である僕は)身につまされ、男のバカさ加減(自分のバカさ加減)を思い知らされ、肩身が狭くなる濃い〜2時間弱。
人間世界に初めてやってきたバービーが、バス停で隣に座っていたしわだらけの老婆を見て、「綺麗……」ってつぶやいたら老婆が返す言葉は、「知ってる」だぜ。
スゴくないか、この映画!!
映画館で近くに座っていた黒人の太った女の子が終始「ヒャッホー」とウケていたのがとても素敵だった。
この映画を観てどこかの「GANTZ」とかいう漫画を書いた日本人おっさん漫画家が「自立した女性が男性なしでウンヌン……」と文句言って炎上したらしいけど、いやいや真面目に打ち返したらその時点で負けなのよ。
本物の女子が女子として今の世の中に言いたいことを全部ぶちまけてんだから、男子はそれをうんうんと受け止めるだけでしょーよ。
各所に散りばめられた様々なパロディ。
日本語字幕では伝わりきらない、皮肉と下ネタ、米国あるあるとスマッシュギャグ。
こりゃ世界でヒットするわなって感じ。
世界の中で日本と韓国だけでぜんぜんヒットしていないっていうのも、このアジアの辺境の一部の地方のフェミニズム環境の異常さを顕著に表していて、まさに地獄の差別社会よねって。
この映画がスッと入ってこないって、どんだけ凝り固まった思想なんだよお前、って指差して笑ってくる映画ですよ。
女性監督が作った最高に男前なコメディ。
最、の高!
女性は絶対映画館で観たほうがいい快作です。
男性はこれを見てどう感じるかで自分の立ち位置が分かるでしょう(笑)。

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↑剣が峰直下から撮影。ご来光に照らされた富士山自らの影


先日、生まれて初めて富士山に登ってきた。

今夏「無謀な弾丸登山が危険」だとか、「登山客が多すぎ問題」などがニュースになっている富士山だが、現実問題どうなのか?
今後富士山に登ろうと考えている方の参考になればと思い、この記事を書いておく。

①日帰り登山は無謀
よほど普段から登山経験を積んでいる方なら十分日帰りも出来るだろう。
コースタイムは長いが、登り6時間下り3時間行動できる体力と登山スキルがあればイケる。
しかし、たまにハイキングする程度の体力の人は、悪いことは言わないから1泊2日の小屋泊登山を選択すべき。
僕もいろいろ調べた結果、1泊2日の小屋泊を選んだ。

②ルートは吉田ルートが無難
富士山には4つの登山ルートがあるが、最初は吉田ルート一択だと思う。
吉田ルートは途中の山小屋も多く、トイレの数も売店の数も登山客の数も他とは段違いに多い。
それだけ安全安心なコースだということ。
富士山の初回登山は必ず吉田ルートで行くべき。

③山小屋の個人予約は困難
富士山に登ろうと思い立ったのが5月の末ごろ。
しかしその時点で吉田ルートにある10を越える山小屋の宿泊予約は、 夏の山開きシーズンを通して全日埋まっていた。
つまり、山小屋予約不可能ということ。
ただし、これは『ツアー会社各社が予約を押さえているから』というのが理由。
つまり、数ある富士山ツアー会社のツアーに申し込めば、山小屋泊の1泊2日登山が出来る。
僕は某ツアー会社で『新宿発・富士山バスツアー本8合目宿泊プラン・ガイドなし』を5月末に申し込むことで、山小屋泊の権利を得た。
朝、新宿に集合してバスで吉田口5合目へ。
そこから自由に登り、山小屋にチェックイン(バス会社に貰ったチェックインカードを渡す)。
夕食を食べ、次の日の朝の弁当を受け取り、寝て、翌朝1時過ぎに起きて、ご来光を見るための登頂を目指す。
帰りにはバスは温泉にも寄ってくれる。
これで料金は18000円ぐらい。
初回登山はこういったバスツアーを利用するのが最善と思う(なお山小屋の予約に関しては直前にキャンセル等が出て偶然取れることも多いらしい。ただし天気が悪いことが理由だったりするので、出来れば早い時期に予定を立ててツアーに申し込むことをオススメする)。

④富士山登山は本当にめちゃくちゃキツイ
5合目から山小屋まではだいたい4時間。
体力のない人だと6時間ぐらいかかるかも知れない。
その間、ひたすら滑りやすいジャリ道をつづら折りで登り、たまにゴツゴツした岩登りも混じってくる。
景色が良ければ良いが、少し曇ればなにも見えず、ただ単調な急坂を登るだけの苦行。
よほどの健脚なら問題ないが、少々登山経験があるぐらいの人でも相当キツイだろう。
その上、渋滞している。
ガイドさんに連れられたツアー客が30人規模で並んでゆっくり登っているため、その後ろに付いてしまうと渋滞。
無謀にもスニーカーで登ったり、赤ん坊を背負って登ったりする輩が、登り専用の登山道を下ってきたりするので、登り客が待つことになり渋滞。
……などなど、精神的にもいろいろと追い詰められる。
普通の登山とは話が違うと思っていた方が良い。
道中、太ったおばさんとか、半ズボンの太ったお兄さんとか、年取ったおばあちゃんとかが、道端で疲労困憊し、倒れているのを何人も見た。
そういう人たちには「なぜ登れると思った?」と聞きたい。
見た目からして『あなたには登るのは無理でしょ?』という人が、『ガイドツアーだから誰でも登れるんじゃない?』と気楽に参加しているようだが、なんといっても標高3667メートルの山だ。
高尾山に登るような気持ちで来るのは本当にやめたほうがいい。
つらい目に遭うのは自分自身だ。

⑤防寒着は必須中の必須
ご来光を見る場合、翌朝1時に起きて、ヘッドランプを頼りに夜道を渋滞しながら山頂まで登るのだが、問題は山頂に着いてから。
ご来光を待つ時間が、恐ろしく寒いと思っておいたほうが良い。
晴れていても体感温度は10℃以下。
雨でも降って風が吹いたら体感温度はマイナスだろう。
フリースとシェルジャケットぐらいでは凍え死にそうになる。
ダウンジャケットが必須。
そして忘れてならないのが『冬用の手袋』。
温かい手袋を持っているのといないのとでは大違い。
軍手ぐらいではとても無理。
手が凍えてブルブル震えてしまう。
富士山の山頂でご来光を見るのなら、ガチガチの冬の服装を持っていくべき。
カイロとかその手のものもなんなら持っていた方が良い。

⑥ストック(杖)は必須
登山用ストックを2本持っていれば、登りも随分有利になる。
テクニックは必要だが、登りでストックを使うと、腕の力を使えるので、足だけで登るより体力を温存できるからだ。
しかし、ストックが一番必要なのは、吉田ルートの下りだ。
下りは専用の登山道となる吉田ルートは、ひたすらジャリで滑りやすいつづら折りの下り坂が続き、ストック(杖)を持っていない人は、降りるのが恐ろしい道だ。
健脚でバランス感覚がまだ若い人は、転ぶ前に次の一歩を踏み出し、走るように降りていけるのだが、そうではない一般人はストックがないと転びそうで一歩一歩慎重に降りていくしかない。
結果、精神的なプレッシャーがずっとかかるため、疲労が蓄積し、「登りよりも下りがツラかった」という感想になる。
ストック(杖)があれば、4本(もしくは3本)の足でバランスを取るのと同等になり、いざ転んでもバランスを崩しにくく、また腕の力で耐えることも出来る。
吉田ルートで登る人は必ずストックか杖を持つことをオススメする。

以上が実際に登ってみて感じたことだ。
他にも『100円玉をたくさん持っていけ』とか『水や行動食は小屋で買えるから少量でいい』とかいろいろコツはあるみたいだけど、その辺は各自ネットの記事やらYouTubeの動画やらで調べれば良いと思う。

ご来光を剣が峰で見たのだが、渋滞というか混雑がえげつなかった。
狭い山頂が足の踏み場もないほどの人で溢れかえっていた。
一度でいい、と思った。

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