![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/66/fc2c043ad683c9af301992a5307fefd7.jpg)
惜しくもアカデミー作品賞を逃したサム・メンデス監督の第一次世界大戦もの。
全編(疑似)ワンカットで話題。
どんなものかと品川IMAXで観賞。
その感想。
これは星3つ半。★★★1/2
観ればオスカーを逃したのがよく分かる内容。
撮影賞は獲ったのも当然だけど、作品賞はこりゃ無理だわ。
全編(疑似)ワンカットでオスカーを獲った「バードマン」よりも中身が薄いし、体感映画的なすごさで言えば「ゼロ・グラビティ」の方が上。
正直、面白いし、凄いっちゃあ凄いんだけど、惜しいのよ。
こりゃ「パラサイト」に勝てないなぁという感想です。
以下ネタバレで、この映画の問題点を挙げる。
僕が感じたその問題点を、看過出来るか出来ないかで、この映画の評価は大きく変わると思う。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
この映画、前半はものすごく良い。
ワンカット撮影も大迫力だし、俳優2人の演技もいいし、ロケの臨場感も凄い。
ところが、である。
2人の伝令兵のうち1人が死んでしまうところまでは最高だけど、それ以降、かなり雑じゃないですか?
突然大勢現れる味方の兵隊。
え、こんなに簡単にこの人数ここまで来れるの?
は? ……みたいな違和感に始まり、トラックを降りたところからすぐの廃墟で狙撃される主人公。
え、だったらあのトラックの連中も狙撃されてたろ、……とか。
あの燃えていた町でドイツ兵に追われた末に出会う女と赤ちゃん。
あのくだり必要?
大体あんな場所にいてもすぐ見つかるよね?
男しか出て来ない映画に無理矢理女の人出してポリコレ的なバランス取っただけなんじゃないの?……とか。
え、森の中であんなに歌ってた兵隊から少し歩いたらもう最前線?
距離近すぎない?……とか。
いろいろ雑すぎやしないか?
で、しかも肝心のワンカットを途中で一度諦めましたよね?
え、諦めるの?……とか。
で、見終わって思うよね。
たいした話はなかったなぁって。
ストーリーにひねりはほぼない。
序盤で2人のうち1人が死ぬという点だけがひねり。
「1人で伝令するな」というフリとか、「兄貴は顔が似てる」ってフリも未回収。
そもそもドイツ軍が撤退してるのになぜ無人地帯を抜けなきゃならないのか?
伝令は飛行機で飛ばせば良いじゃないか?
あんな大事な伝令をたった2人だけに頼むか?
もっと何組も同時に伝令に出されるんじゃないか?
だから映画のラストは、例えば「すでに別の方法で伝令は伝わっていた」みたいな終わり方もあっただろうに……とか。
後半、雑すぎません?
これ、ワンカットにこだわったがゆえ、戦場の距離感が全部適当になっていて、ワンカットの分移動の距離が取れてなくて、まるで戦場の箱庭みたいになっていて、リアル感が後半どんどん失われていくっていう致命的な構造矛盾抱えてるのよ。
実際は半日以上かけて移動する距離なのに、映画だから2時間にしなきゃダメで、でもワンカットだから、A地点からB地点、B地点からC地点が余りにも近くて、リアリティが全然なくって、どんどんどんどん醒めてくるのよ。
それなのに、一度気絶するシーンでワンカットを諦めてたりして、おいおい、中途半端だなぁ〜としか思えん。
だったら、ワンカットなんか最初から捨てて、カット割りして良いから、半日間のあの兵士の伝令の行軍模様を、もっときっちりリアルに描いたほうがよほどいいんじゃないかとしか思えないのよ。
つまり、ズバリひとことで言っちゃえば、「策に溺れた」のよ。
ワンカットという策に中途半端に溺れ、結果としてリアリティや物語性など失ってる。
ワンカットなんかやめて、もっとストーリーにひねりを持たせ、「1人で伝令するな」というフリでラストはベネディクト・カンバーバッチ大佐とひと悶着あるべきだし、「兄貴は顔が似てる」ってフリをしたんだったら、少なくとも顔が似てないとダメじゃんw(←兄貴は弟とすがすがしいほど似ていないの)
ということで、1人が死ぬところまでは緊張感やワンカット撮影の臨場感、ロケセットのリアリズムなど秀逸だったんだけど、それ以降が余りにも雑な映画だった。
まぁ、素晴らしかったという人もいるだろうし、僕も最後は泣いたけども、オスカー獲るまでの中身ではないなぁというのが結論。
どう考えても「パラサイト」の方が上。
投票したオスカー会員はなかなか優秀ね。
ただし、撮影賞受賞だけは文句なしです。
| Trackback ( )
|