そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





3.11の映画はたくさんあるようで、「Fukushima50」より前に作られていたこの映画は、官邸を中心に3.11を描いているという。
ストリーミングで観られるところはなさそうだったので、DVDを購入して鑑賞。
その感想。

おいおい、もう少しどまんなかの中道で作られた3.11映画はないのかよ?笑
こっちはこっちでいろいろ問題が多い映画だった。
「Fukushima50」は完全に右寄りで、当時の菅直人首相を叩き、東電の責任をうやむやにすることを目的にしていたが、こちら「太陽の蓋」は、逆に当時の民主党政権を持ち上げ、原発反対の主張を非常に強く打ち出した左寄り映画。
菅直人周りの描き方は史実に近いので納得だが、後半余りにも原発叩きの主張が出過ぎていて、少し引いた。
ただ「Fukushima50」が福島第一原発内で作業していた東電の従業員をとにかく主軸に据え、東電本店と官邸しか描いていないのに対し、こちらの映画は避難を余儀なくされていく福島県民の姿を厚く描いていく分、感情移入はしやすかった。
映画としては冗長な部分や、思わず首をひねる安い演出などもあるので、「Fukushima50」とどっこいどっこい。
星は2つ。★★

「Fukushima50「にしても「太陽の蓋」にしても、日本映画ってしょぼいよねぇ。
いつかもう少しまともな3.11映画が作られる日はくるのかな?

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今年の日本アカデミー賞は意外な結果に。
作品賞を獲ったこの「新聞記者」が、リバイバル上映中だ。
ハリウッドや韓国と違い、時の政権を揶揄するような作品はまず日本では作られない。
映画会社は忖度し、芸能事務所も忖度し、日本の女優はこの企画への出演を断ったという。
だから主演女優は韓国のシム・ウンギョン。
出演を決めた松阪桃李は男気溢れるのかなんなのか分からないが素晴らしい。
結果、日本映画界ではなかなか作られない、「エンタメなのに政権批判」という映画が出来上がった(ドキュメンタリー映画では政権批判目線のものも珍しくはない)。
そして、映画業界で働くアカデミー会員たちの匿名投票で決まる日本アカデミー賞で、作品賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞。
つまり、映画関係者はみんな、本音ではこのような映画にチャレンジしたいのだ。
だって映画を始めとする芸術には、元来政治的な意味が含まれる。
政権批判のメッセージ性の大きい映画をなぜ作っちゃダメなのか?
なぜ自由主義のはずの日本で、そんな不自由を強いられているのか?
みんな忸怩たる思いがあるのだ。
その結果が今回の日本アカデミー賞の結果に表れていると僕は見る。

この映画、正直言って映画としてはかなり問題点が多い。
とくに本田翼が出てくるパートは観ていられないほど酷い(彼女自身は悪くない。仕事としてやっているだけだもの)。
シム・ウンギョンは、日韓ハーフでアメリカ帰りの帰国子女という設定で、たどたどしい日本語を喋る新聞記者なのだが、この設定自体が(日本の女優たちに軒並み出演拒否されたから作られたから)そもそもムチャクチャで、物語の進行に影を落とす。
こんな奴ぁいねぇよ、だし、この会話能力で新聞記者(しかも政治部)で働けるわけないだろ、と思わずツッコまざるを得ない。
そういう映画のリアリティのライン確保が、ほかにもいろいろ微妙すぎて、どうしてもまともに観ていられない観客は出てくるだろう。
だから映画としては「え?」とか「は?」とか思う瞬間が結構あり、ひどいっちゃあひどいのだが、この8年間続く、総理がお友だちを優遇し、公文書改ざんが起こり、官僚が自殺し、さまざまな言論封殺に近い状況が生まれている中、この映画を作った意義に星3つだ。★★★
しかし、このぐらいのものを作れない日本ってそもそもどうなのかって話である。
「バイス」みたいな映画「アソー」とか、メッチャ面白くなるだろ。
なのに作られた映画が「Fukushima50」なのだから、日本はつくづくこの8年間でひどいことになったもんだと暗澹たる気持ちになる。



P.S.
最近、一部のアンチが僕のブログの過去記事を漁っていて、この記事が人気になっています。
確かに過激で事実と確定していない思い込み記述が多かったので、一部修正させて頂きました。
2020年7月21日

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レネー・ゼルウィガーがアカデミー最優秀主演女優賞を獲った本作。
作品賞にはノミネートされていなかったので、映画としてはイマイチなのだろう、と予想しつつ映画館へ。
その感想。

確かに映画としては微妙。
出来の悪い「ボヘミアン・ラプソディ」という感じ。
ただしレネー・ゼルウィガーは凄い。
本当に歌っているのだが、その歌含め演技が凄い。
だから星2つ半。★★1/2
映画の最中いろいろモヤモヤするが、レネーを見に来たのだと思えば許せる。
そんな感じの映画。

そもそも、ジュディ・ガーランドに関して知識がないと、相当敷居の高い映画だろうと思う。
僕は事前にWikipediaでざっとジュディ・ガーランドについて読んでから観たのでまだ良かった。
だが日本人の多くは、彼女が「オズの魔法使い」に出ていた少女スター、という知識で終わってると思う。
その主題歌「オーバー・ザ・レインボウ」は有名だが、彼女に対してそれ以上知らないだろう。
なので、もし映画を観に行くなら、先に知識を入れたほうがいい。
別にネタバレにもなんにもならない。
例えば……
・少女のころにデビューしたが、少女趣味の映画会社社長からのセクハラを受けていた
・映画会社にダイエットを命じられ覚醒剤を飲まされ中毒になった(当時覚醒剤は合法的なダイエット薬だった)
・覚醒剤中毒に加え、睡眠薬の服用やアルコール中毒、自殺未遂などがあり、映画撮影をすっぽかすなど悪行が続き、ハリウッドを干された
・再起を賭けた映画「スタア誕生」主演で、アカデミー賞確実と言われつつ、ハリウッドの妨害に遭い受賞を逃す
・5度の結婚を繰り返し、中でも最初に産んだ長女はミュージカル女優のライザ・ミネリである。
・LGBTに深い理解があり、差別意識もなく、だから彼女の代表曲「オーバー・ザ・レインボウ」から現在もLGBT運動の象徴は「虹」になっている
このぐらいは知識として押さえた上で観賞したい。
そうすれば、なかなかグダグダな映画の中身もなんとか楽しめるだろう。

歌だけは圧巻です。
ただ「虹の彼方に」はなかなか歌ってくれません。
出し惜しみかよ!w

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はい、出ました。
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故を描いた大作、「Fukushima50」。
日本映画界の名優たちが一堂に会し、大金をかけて作られた3.11の映画とあって、超楽しみに観てきた。
その感想。

これはね、久々に出たよ、星1つ。★
とんでもない問題だらけの映画。
なぜかというと、余りにもプロパガンダだから。
本当に酷い。
酷いったら酷すぎる。
これで感動する人がいるのも分かるが、騙されてるんだよ。
事実をここまでねじ曲げて、何が「事実に基づく物語」だよ?
観客の思考をある方向にねじ曲げるために作られたプロパガンダが、21世紀の日本で、こんな形で実際に映画館で上映され、少なからぬ観客が感動していることに、軽いショックを受けた。

映画の冒頭、「事実に基づく物語」とテロップが出る。
その直後、大地震が発生。
さらに津波が福島第一原発を襲う。
全電源喪失。
免震棟にいる吉田所長(渡辺謙)、コントロールルームにいる1・2号機当直長の伊崎(佐藤浩市)らが原発事故の収拾に当たる。
さぁ、どうなる、という導入部分は、確かに「事実に基づく」ので、思わず前のめりになる。
美術スタッフの努力により、極めて正確に描かれているという原発内部の地獄のような閉塞感は見事。
しかし、しかしだ。
そのあと総理大臣が登場すると、突然この映画は「事実に基づく」を捨てる。
当時の総理は民主党の菅直人だったが、この映画では「総理」としか呼ばれないし、クレジットされない。
吉田所長は実名なのに、なぜか菅直人は実名ではない。
その実名ではない総理が、事実とは全く違う行動を連発。
その辺の事実詐称がどのように行われているかは、さまざまな論評が出ているのでそちらを見て欲しい。
だが、とにかく言えることは、

この映画は、当時の民主党・菅直人首相を貶める方向で作られているように見える
そして、東京電力の責任をうやむやにする方向で作られているように見える


という事実だ。
そんなことをしたがるのは誰か?
8年も経っているのに未だにことあるごとに「悪夢の民主党政権」と言う総理とその一派ではないのか?
事故の対応が混乱した原因を菅直人に押しつけて得する、東電なのではないか?
そして、原発自体に問題はなかったとしたい、原発村の連中なのではないか?
(まあ、分かっちゃいるとは思いますが、断言はしてませんw)

さらに恐ろしいことにこの映画は、15メートルの津波が福島第一原発をのみ込み、全電源喪失に至った理由を、「自然をなめていた」で締めくくる。
いやいや、待てっつーの。
15メートルの津波が来ることは事故前に予期されており、その高さの防潮堤建設を握りつぶしたのは、吉田所長その人だ。
さらに原発の全電源喪失はあり得ない、と国会で答弁したのは、第一次政権時代の安倍総理その人だ。
この2人の責任にまったく触れることなく、「自然をなめていた」で締めくくるって、どうなのよ?

これ以外にもいろいろ問題点がある。
アメリカ軍の友だち作戦の描き方は、余りにも親米で、何かの意図を感じざるを得ない。
東電の職人たちは当時、とんでもないバッシングを受けたはずだし、事実、放射能が飛び散った福島では、肩書きを名乗れなかったほどだという。
それなのにこの映画では、福島の避難民が「お前らよく頑張った」などと言って東電職員に感謝を述べる場面を描く。
いやいや、それだけじゃないだろ、と。
何から何まで、裏側に透けてくる政治的意図が気持ち悪すぎて、見ていて背筋が寒くなるプロパガンダ映画ではないか?

そして、もっとも恐ろしいことは、これを観た観客の大半が、それら事実を知らないため、この映画で描かれたことを真実だと思い込む可能性だ。
いくら何でもそれはないし、菅直人はこの映画訴えてもいいレベルだと思うし、福島の人たちも訴えていいと思う。
自分たちの責任と不作を隠蔽し、事故の原因、責任を他者に押しつけるプロパガンダ。
こんなものが民主主義国家日本で、普通に上映され、結構な俳優たちが出演してしまっていることに、恐怖を覚える。
東電から、原発村から、どれだけの金が映画に流れ込んだのか?
どこかのジャーナリストがその裏側を暴いてくれないだろうか?
日本、大丈夫か?
3.11を映画化したら、こんなのになっちゃうのか?

ちなみに、映画としての出来もなかなかに悪い。
お涙ちょうだいのくさい演出と演技に辟易する。

途中、ダチョウ倶楽部のギャグのような場面が出てきて、僕は映画館で吹き出してしまった。
「僕が行きます!」
「僕が行きます!」
「じゃあ僕が行きます!」
「どうぞどうぞどうぞ」
の流れを、あんなに真面目にやられたら、笑うっつーの。


P.S.
最近、一部のアンチが僕のブログの過去記事を漁っていて、この記事が人気になっています。
確かに過激で事実と確定していない思い込み記述が多かったので、一部修正させて頂きました。
2020年7月21日

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名作小説の映画化。
ハリソン・フォード主演。
しかし、大作揃いの映画館で、いかにも地味な公開。
果たしてどんな出来なのか?

これは、星3つ。★★★
十分、映画館で観賞すべき出来。
「Fukushima50」とかいうプロパガンダ映画を観るぐらいなら、こちらをぜひ。
愛すべき小品という感じに出来ている。

賛否が分かれるのはCGで描かれた主人公の犬、バックだろう。
CGで描かれた動物が会話し歌う「ライオンキング」というヘンテコ映画が昨年話題になったが、あっちよりも安っぽいCGで、喋りはしないものの表情豊かに感情を表現するバックを受け入れられるかどうかで映画の感想が大きく変わると思う。
僕は受け入れられた。
ストーリーは陳腐だし、登場人物の造形も典型的過ぎるというか、まぁ使い古されたものだ。
そりゃそうだ、120年前の小説なんだから。
でもその辺に目をつむって、ゴールドラッシュ時代のアメリカに思いを馳せられれば、そんな舞台で語られる一頭の犬の物語は深い感動を呼ぶことだろう。
ハリソン・フォード主演と書いてあるが、出てくるのはほぼ後半だけだし、実質的な主人公は犬である。
バックがどんな人間たちと出会い、何を学び、成長し、そしてどこに帰っていくのかという、この120年前の原作小説が書いた物語は正確に映画化されているので、決して期待せず、犬がCGでしょぼいのも覚悟の上、観に行って欲しい。
オススメ。
動物好きには特に。

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1980年に日本で公開された「地獄の黙示録」。
ゴッドファーザー1と2で二度のアカデミー作品賞を獲ったコッポラが作る戦争映画ということで当時凄く話題になったが、ロケ地のフィリピンで台風でセットが壊れて撮影延期になったり、主役交代騒動があったり、主役俳優が心臓発作で倒れたり、マーロン・ブランドが契約と違って太ってたり、デニス・ホッパーがセリフ全然覚えてなかったり、撮影資金が途中で尽きてコッポラが私財投げ打って借金して3回自殺未遂するとか、もういろいろありすぎて、完成までに4年も掛かったという悲惨な映画。
それでもカンヌで最高賞パルムドールを獲得。
未だにベトナム戦争映画の金字塔となっている大傑作。
その「地獄の黙示録」がファイナル・カットとなってIMAXで期間限定上映。
そりゃあ、観るっきゃないというわけで、観てきた。
実に40年ぶりの観賞だ。
その感想。

もうね、圧巻ですよ。
星5つ。★★★★★
とにかく、全編実写で作り上げた映像が素晴らしすぎて、ストーリーの不備とかもうどうでも良くなるレベル。
フィリピン軍に借りた本物の戦闘ヘリで、本物の銃器でバンバン撃ちまくっていて、撮影でもう何人ケガしてるか分からないレベル。
本物のジャングルを本物の火薬で盛大に焼き払っていて、今だったら自然破壊で訴えられるレベル。
凄い、凄すぎる。
それをIMAXの大画面大音響で観れてしまうなんて、もう二度とない機会。
強くオススメする。
ワンカットファンタジー戦争映画「1917」なんかを観るより、こちらを観ろ。

映画としてはそりゃあ問題がある。
前半はメッチャ良いテンポで進んでいくんだけど、中盤のフランス人入植者のくだりなんて丸ごと不要だし、後半マーロン・ブランドが太っててアクションシーンが出来なかったせいで、カーツ大佐の砦のあたりは脚本をコッポラが急遽書き変えたこともあり、グダグダ中のグダグダで哲学的になりすぎて、もうぶっちゃけ、よく分かんないよw
でも、戦争の狂気と本物の地獄を描くという意味で、この映画はある地点まで完全にイッテいる。
それだけで、もう十分すぎる名作なのだ。
必見です。

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