そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





公開初日に観てきた。
庵野秀明監督最新作「シン・仮面ライダー」。
期待は大きい。
果たしてその出来は?

評価は、星1つ半。★1/2
これは、駄作認定してもいいのではないだろうか。
「シン・ゴジラ」は素晴らしかった。
「シン・ウルトラマン」はまぁまぁの佳作。
でも今回は、やっちゃった感がハンパなかった。
映画として、とにかくグダグダだし、正直面白くない。
仮面ライダーとしては、マニアック視点的には旧作をオマージュしてたりして面白いのかも知れないが、それ以前に劇場映画として成立させないとダメだろう。
ひとことで言えば「実写版キューティー・ハニーの二の舞」といった感じ。
庵野秀明監督は実写のアクションが得意じゃないのかも。
「なにこれ?しょうもな」のオンパレードだった。

以下ネタバレでたくさん文句を言っていく。










まずギャグなのかシリアスなのか、バランスがすこぶる悪い。
ところどころゲラゲラ笑ってしまうようなクソダサいシーンがあるのだが、すぐにシリアスなドラマに戻ったりして、どういった感情でこちらが観ればいいのか分からない。
ギャグならギャグで振り切ってくれれば良いし、シリアスならシリアスでもっと押し切ってくれ。
「シン・ゴジラ」はその辺バランスが取れていたし、「シン・ウルトラマン」もそこまでバランスが崩れてはいなかった。
だが今回はすこぶるバランスが悪い。

そして、CGがチャチすぎる。
ほんと庵野秀明監督の「キューティーハニー」の時から進歩がない。
あれ何年の映画だよと思ったら、2004年だ。
20年近く経ってCGが全く同じチャチさで、10年前のインド映画にも劣っている。
そんなに金ないんかいというような、ひっどいCG。
ここまで酷いと狙いでもなんでもないと思う。
チャチすぎて爆笑していた。
それは映画の本筋と違う。

エヴァ風味が直接的すぎる。
人類補完計画の焼き直しみたいなショッカーの目的を始め、なにかエヴァで見たような要素ばかり。
ここまで来ると、庵野秀明ほかに引き出しないんかいといわざるを得ない。

アクションシーンがほんと下手。
画面が暗くて何やっているか分からない。
動きとカットが速すぎて何やっているか分からない。
気付いたら、地面で取っ組み合っている子供のケンカみたいなものを延々見せられていたり。
敵も理由もなく突然弱くなったり。
庵野秀明は、等身大の人間サイズのキャラが戦うアクション実写は下手。
やめたほうがいいと思う。
プレヴィズ作ってこれだったらホントやめたほうがいい。

庵野組の大した意味のない多用。
竹野内豊と斉藤工と長澤まさみ好きやなぁ。
……で?
それで、なに?
どうせなら同じ世界線の話にすればまだいいのに、その勇気はない。
あと、主演の池松くんっていう俳優さん、セリフが棒読み過ぎんか?
ライダー2号の柄本くんは上手かったのに。
池松くん、うーん。

そもそも、なんの話なのかタテ軸が分かりにくく、ショッカーVS仮面ライダーの対決全てが局地的に行われていて、世界に危機が起きている感じは皆無。
「シン・ゴジラ」は東京が焼き払われたり、「シン・ウルトラマン」は町が破壊されたりしていたからまだ良かったが、「シン・仮面ライダー」は一般人が1人も出て来ない。
だから(まぁ元の仮面ライダーもそんなモンなのだが)、コスプレーヤーとコスプレーヤーがなれ合いのケンカをしているだけにしか見えない。
なんか知らんが、敵のアジトに次々と簡単に乗り込み、大して苦労せずに怪人を倒していくだけの繰り返し。
格好いい必殺技も、そもそも戦いに、大きな動機や試練や苦難が全く描かれないので、見ていてなんのカタルシスもない。
脚本は乱雑で、難しいセリフで観客を煙に巻こうとするのは庵野のいつもの通りだし、同じセリフ繰り返すのもお馴染みの焼き直しだし、まぁ、ホントいいところがひとつもない。

これは酷い、というのが見終わった直後の感想。
仮面ライダーの懐かしの音楽がかかったり、お馴染みのビジュアルでバイクにまたがって変身したり、一瞬格好いいシーンはあるのだけれど、それだけ。
Amazonプライムとかでそのうち配信されるから、それで見れば十分。
映画館の大スクリーン大音響で観てこんな感想なんだから、テレビで見たら、途中で観るのやめたくなると思うけれど。

関連記事をいろいろ読んでいたら、これは言い得て妙という素晴らしい文章を発見した。
僭越ながら引用させて頂く。
ここに僕が感じた違和感の全てが言語化されている。

「国家へのボンヤリした恭順、社会への無関心、見識の狭い世界観、生活実感の希薄さ、身体感覚の欠如、必然性を無視して見映え優先、生身の役者にアニメの如き設定を課してキャラ表にしてしまう。これら庵野秀明の拭いがたい悪癖が、震災という強烈なツールで観客を不条理な世界に巻き込んだ「シン・ゴジラ」では尽く裏返ってすべてがうまくいったのに、空っぽの器に初代ライダー再現してお好みで盛りつけましょうという安易な企画では悪癖が悪癖のままゴロゴロと転がってるだけで無様だ」(原文ママ 引用元「なぜ作る「シン仮面ライダー」筆者 挑戦者ストロング 氏)

冒頭の血みどろアクションで始まったところだけは「おお」と思わせる。
最後まであの血なまぐさい仮面ライダーのダークな解釈で全てを作れていたら違っていたのに。
勿体ない。
以上。


コメント ( 0 ) | Trackback ( )






アカデミー作品賞は逃した「スピルバーグの自伝的作品」。
いったいどんなものなのか、二子玉の映画館で観てきた。
その感想。

これは星2つ半。★★1/2
素晴らしいと思う人も多いだろうし、期待外れに思う人も多いであろう映画。
「スピルバーグの自伝的作品」という宣伝文句にどんな映画をイメージして観に行くかで評価は変わる。
僕の場合は、前半ニヤニヤして観ていたのだが、中盤から「あ、そっちですか」となり、最後はまたニヤニヤで終わるという不思議な時間だった。
あらゆる感情で構成された変わった映画なので、若干、散漫でとっ散らかっているイメージもある。
なので、星2つ半。
ただ、スピルバーグがこの映画でやったことはある意味ですさまじくて、恐ろしい。
以下、ネタバレで詳しくその辺の理由を述べる。







これ、「映画の映画」である。
で、世の中の「映画の映画」は、大抵「映画っていいもんですねー」と淀川長治みたいなことを言って終わるのだ。
「ニュー・シネマ・パラダイス」なんかはその代表だろう。
最近だと「バビロン」もそんなエンディングでまとめていた。
そこで、「スピルバーグの自伝的作品」と宣伝されたら、観客の多くは「映画っていいもんですねー」を当然のように期待するんだと思う。
僕もそれを期待して観に行ったのさ。
そうしたら、この映画、それとまるで真逆の方向に振ってくるのだ。
なんと「映画ってこんなに酷い面があるんですよー」の、映画製作者が映画によって呪われる映画なのだ。
この、映画に呪われるというストーリーを、きっちり受け止められるかどうかで、この映画の評価は変わってくるのだろう。

僕は実はこれ「スピルバーグの自伝的映画」どころではなく、ガチの「スピルバーグの自伝」だと思う。
スティーブン・スピルバーグは長い映画人生で、「映画っていいもんですねー」なんてコトは実は感じていないのだ(恐ろしいことに)。
そして、そんな実感がこもっているから、そんな実体験をしてきているからこそ、こんな意表を突くリアルな脚本が書けたんだし、ストーリーが描けたんだと思う。
何しろ、本物のスピルバーグ家と同じ状況で物語は始まる。
父は理系の技術者、母は芸術系のピアニスト。
この2人の板挟みで子供時代を送ったスピルバーグ。
母に似て芸術系だったスピルバーグ、父に似てオタクだったスピルバーグは、両親の離婚と別離を経験し、その後の映画では不仲な夫婦とか、父の不在とか、不倫に走る母とかを、そういうモチーフをたくさん描いてきた。
この映画の中で、主人公の少年が撮る映画は、人と人を引き裂き、人の本性を図らずも映し出し、意図した編集によってあることをないことに、ないことをあることに、醜いものをより醜く、ときには醜いものを美しく演出していく。
映画が人を傷つけ、また勇気づけ、でも全てはカメラに切り取られ、編集された虚構であり、映画によって世界を切り取った結果、映画が世界を壊すという罪深さ。
そんな映画が持つ悪魔的な側面に、この映画はずっと焦点を当てていく。
こんなの、実際に監督をして、映画作りの本質として感じていなければ描けないものだと思う。
頭の中で考えた「映画の映画」は「映画っていいもんですねー」の結末になって感動を呼ぶだけだが、この「フェイブルマンズ」は「映画の映画」として映画の闇を映し出す。
だから映画の中盤、僕は「あ、そっちですか」となった。
期待外れの人が多いのもだからだろうと思う。
でも、世界一の映画人、スピルバーグが描いた自伝は、「映画ってこんな酷い面もあるんですよー」だったのだ。
それだけで、いたく感慨深い。

とはいえ、少々とっ散らかっている。
「フェイブルマンズ」というタイトルが現すように、これはユダヤ系の家族フェイブルマン家の物語だ。
家族の崩壊を、サムという映画の天才である長男が、客観的に見つめていくのがストーリーの骨子だ。
「スピルバーグの自伝的映画」ではぜんぜんない。
宣伝が間違っていると思う。
「映画の恐ろしさを描いたスピルバーグの伝記」と宣伝されれば、また違っただろうに。

なお、最後の10分ぐらいに、映画ファンなら大喜びするサプライズが待っている。
スピルバーグの語り草である「若いとき、名匠ジョン・フォード監督にどやしつけられた」という実際のエピソードをそのまんまオマケとして用意してくれている。
「駅馬車」とか「怒りの葡萄」「捜索者」などで知られ、アカデミー賞を何度も獲っている巨匠ジョン・フォード監督(年老いた頃は片目に眼帯をしていた)を演じているのは、なんと、デビッド・リンチ監督だ。
で、デビッド・リンチが登場するやいなや、映画はスピルバーグのものではなくなり、リンチの磁場に侵食されてしまって急に不条理な編集と間の取り方になるのも最高。
若きスピルバーグはジョン・フォードになんと言われたのか?
そしてその言われたことを使った最高のラストカットとは?
この映画、最後のワンカットで、鬱展開の中盤のストーリーを全てひっくり返し、観客をニンマリさせてくれる。
あのラストカットに、僕はスピルバーグの、映画に対する矜持の全てがあるような気がする。

あと、主人公役の青年。
スピルバーグに顔があまりにそっくりだろ。
あれはすごい。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )






なにやらクチコミでの評判が良いので、映画館へ。
原作は「ビッグコミック」で連載中のジャズ漫画らしいのだが、そちらは未読。
アニメ化されたこちら、全く内容を知らずに映画館に観に行った。
その感想。

これはね、傑作です。
星4つ半。★★★★1/2
とにかくジャズ音楽とアニメ映像の表現の相乗効果が素晴らしい。
映画館の大音量で上質なジャズを聴きつつ、そこに乗せられた凄くビビッドな映像表現を堪能するという、まさにジャズ映画。
音楽映画として少し突き抜けた表現まで到達していて、これは凄かった。
映画館の大スクリーンと大音量で観るべきアニメです。

星5つでも良いのだが、1/2マイナスしたのは、演奏シーン以外のアニメの凡庸さと、(原作が漫画だから仕方ないとは思うけど)大詰めのストーリーのなんともいえない韓国ドラマ風のベタな展開(見てもらえば分かる)。
そこだけ勿体ないのだが、映画全体でいえば「THE FIRST SLAM DUNK」級に「おおおおっっっ!」と感動したので、凄い作品には違いない。
なにより平日の上映なのに満員だったし、小さい子供もちらほらいるのに文句も言わずにジャズを浴びてるし、なかなかのジャズ啓蒙映画だった。
これでジャズブームが来ることはないだろうけど、いくらかジャズの裾野が広がるといいなぁ。
そもそも原作の漫画に音楽は付いていないので、音は想像するしかないわけだが、実際に音が乗ったことで、この「BLUE GIANT」という作品は完成したのではないだろうか。
ピアノは上原ひろみが担当し、そりゃもちろん凄いパフォーマンスを見せているのだが、そこに組み合わさるアニメ映像がパワフルなので普通の上原ひろみの演奏よりもより感情を刺激する作りになっていて、凄い。
これはもしかすると音楽映画の新しい地平にまで到達しているのではないだろうか?(CGがひどいという悪評を聞くが、そこまでひどくはない。シンプルにしょぼいだけだw)
音楽映画というジャンル内での比較でいうと、「ファンタジア」とか「セッション」とか「ボヘミアン・ラプソディ」とかを完全に凌駕していると思うので。
必見です。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )






今年のアカデミー賞の最多ノミネート作。
作品賞も獲るのではといわれている低予算SFアクションコメディ。
予告を観てもお話の中身がまるで想像できない今作を、公開初日に観てきた。
その感想。

うーむ。
これはね、とても評価が難しい。
個人的には星3つとさせて頂く。★★★
でも、もしかしたら星5つかも知れないような気もするし、星2つぐらいかなぁって気もする。
つまり、かなり不思議な映画だったのだ。
変わった映画、ぶっ飛んだ映画、観たことない映画、そういう感じ。
ただ、一つだけ言えるのは「熱量」と「製作者のノリノリ具合」は、ハンパない映画だということ。
凄い情報量と、凄い情熱と、凄い撮影と、凄い編集、凄いテンポ、凄い意味不明な展開、凄いパロディ、凄い下ネタ、凄いベタ展開まで、とにかくずっと凄い。
凄いってだけでいったら、星5つ。
でも論理的には理解できない(理屈で追いつけない)ところも多いので、そういう意味では星2つ。
むずいよ。
うん、むずい。
アカデミー賞獲るのかな?
獲るような気もするし、こんなの獲るの?と思う自分もいる。

以下、少しネタバレ。
読んでも支障がないぐらいの、ネタバレまでは行かない軽ネタバレ。

始まってから中盤ぐらいまでが凄いので、とにかく呆気に取られるし、コメディ部分はきっちり笑わせてくれるので、面白いっちゃあ面白い。
でも、なんでこんなことになっているのかが、論理ではなくてもう情熱で突っ走っているような気持ちだけで書き殴ったような脚本なので、中盤以降「?」がいろいろ増えてきて、それでいてラストの展開が「うーん、ここまで来てこんなベタな落としどころかよ。残念」とも思えてしまい、でも全体を通していえば見たことない凄いことに挑戦している作品だよなぁ〜、凄いのかもなぁ〜という感想。
で、見終わって、映画館を出て、しばらくしたらジワジワ来て、「もしかするととんでもない傑作を見たのでは?」という気にもなってくるという、ね。
編集がとにかく凄いので、ソフトになったら一時停止とかして詳しく観たい。
主演のミシェル・ヨー、どれだけの日数、何着の衣装とメイクを替えて撮影したのか、途方もないと思うんだけど。
あ、そうそう。
キー・ホイ・クアン、最高でした。
アカデミー助演男優賞の受賞は当確です。


コメント ( 0 ) | Trackback ( )