| 手紙 スタンダード版日活 |
毎週恒例の、週末1人ぼっちの映画鑑賞会。
ある女の子に「号泣した」と聞かされたので、今日はこの映画を鑑賞することに。
東野圭吾原作の「手紙」
小説は未読なので、映画が初となる。
なかなかの秀作だった。
犯罪者の家族に対する社会差別がテーマだ。
山田孝之演じる主人公は、たった1人の身内である兄が強盗殺人の罪で服役したため、その事実が周囲に知られるたびに不当な差別を受け、職を追われ、アパートを転々とし、夢や希望を無惨に奪われていく。
苦しみ抜き、社会を恨み、最後には兄との縁を切ろうとさえ考える主人公を、親しい人たちが支え、変えていく。
おおざっぱに書けば、そんな話だ。
で、おそらく映画より小説の方が、もっといいのだろうと予想する。
というのも、登場人物の一部が非常にプロトタイプだったりする上、主人公がお笑いを目指す若手という設定であるため、それらの舞台装置が映像化するとどうしてもチープに見えてしまうのだ。
そういう点で、少し損をしている映画かな、と思う。
東野圭吾さんの小説は、中心にえぐるテーマを、この現実世界に存在する(であろう)非常にシビアなものに設定し、そのテーマをきっちり伝えきろうとするため、周囲の人物造形や舞台装置を意識的にシンプルに、ベタに、描いている気がする。
周囲まで複雑にしてしまうと、テーマをズバリ伝えきれず、モヤモヤした小説になる可能性があるからだろう。
テーマをズシンと直球で描ききるからこそ、東野さんの小説は人気が高いのだ。
だけど、小説では文字の力と読者のイマジネーションによってリアルに描ききれる「お笑いを目指す若手」や「大金持ちとその令嬢」や「都合よく起きる展開」などの持つ「分かりやすさ」は、映像にするとたちまち「チープ」に見えてしまうという弱点を持つ。
映像にすると、「こんな奴ぁいねぇよ」になってしまう。
それこそ韓流ドラマみたいなことになってしまう。
だから、どちらかというとSFに振り切れた設定の小説や、それこそ時代小説など、今の現実とは関係ないものの方が、映像化はしやすいのかも知れない。
東野圭吾さんでいうと「秘密」などは、映像化に向いた作品だった。
あれは出発点がSFだ。
そもそもリアリズムが関係ない設定からスタートすれば、観客は、リアルを求めない。
しかし、この「手紙」の場合はリアルを求めてしまう。
だから「こんな分かりやすい金持ちいねぇよ」とか「こんなこと起きねぇよ」とか思っちゃうのだ。
そういう意味で難しいのだ、たぶん、小説が原作の映画って。
……などと難癖を付けてみたが、テーマはズシンと直球で描かれるのだ。
僕も、劇中何度か涙がにじんだ。
「号泣した」にも納得。
山田孝之、沢尻エリカ、玉山鉄二ら、俳優たちの演技は見応えがある。
とくに、沢尻エリカ。
なんだろう、この存在感は……と思ったら、声がいいのだな、この女優さんは、と気付いた。
オススメです。
星4つ ★★★★
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