ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

新美南吉の童話を読んだベラルーシ人の感想文

2013-10-23 |   新美南吉
 新美南吉作品のロシア語・ベラルーシ語訳の朗読会を通じ、ベラルーシ人から感想が集まっています。
 一部を日本語に訳しましたので、ご紹介します。

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 「『手袋を買いに』を読みました。新美南吉の童話はとても繊細で優しく子どもに何かを教えてくれます。」
オリガ(ミンスク 出版社勤務)

「『でんでんむしのかなしみ』の感想。
 よい翻訳のおかげで今まで知らなかった日本の作家の作品を読むことができました。日本の童話を読むときは少しでもいいから日本人の哲学について知っておいたほうがいいです。日本文化と密接に繋がっているからです。
 でも人間が感じることは世界のどこの人でも共通しています。ですから、人生に何かあった人は『でんでんむしのかなしみ』を読むのがいいかもしれません。あるいはこれから何か起こるかもしれない人も。人間は精神的に失敗したことに気がいってしまうものです。
 この作品で私が気に入ったのは導入部分がとてもロシアやベラルーシのお話と似ていたことです。もしかすると読者が入り込みやすいようにこのように翻訳したのかもしれません。会話のシーンもとてもおもしろかったです。実際私たちベラルーシ人も友達にこんなふうに愚痴をこぼしているのです。結末は前向きで教えがあります。よく練られた翻訳は年齢に関係なく読めるようになっていると思います。

『あめ玉』の感想。
 世界のお話はとても大きくておもしろいです。全てのお話にその民族の文化や伝統が登場人物の表情に物語の中で起こる出来事に表現されているものです。世界中の人が才能ある作家のよい作品を知るには翻訳されなくてはいけないと思いました。
 私はこのお話を知り合いに話して聞かせました。年齢はばらばらです。(6歳、12歳、17歳、31歳、65歳、80歳)この6人はこの作品を理解することができました。唯一6歳の子どもが尋ねました。『侍って何?』次の質問は『どうしてみんな侍を怖がっているの? 侍は兵隊さんみたいに優しくて、みんなを悪いやつらから守ってくれるんでしょ? 侍は強くて何でもできるんでしょ?』 つまりこのお話からこの子どもは想像をふくらますことができたということです。小さい子供向けの作品だと思います。作者と翻訳者に感謝します。
 大きい読者も大変楽しく読むことができたと思います。それぞれがこのお話の哲学的な意味を汲み取ったことでしょう。一方で私たちの日常生活に重なる部分も多い話です。親が子どもをなだめたり、びっくりすることが起こったり、怖いと思っていた人が実は優しかったりして、いい大人が恥ずかしくなったり。この作品からは日本人の賢明さが伝わってきます。

『去年の木』の感想。
 新美南吉の人生はとても短かったですが、多くのことを児童文学に残しました。私が思うに、彼の作品は子どもだけではなく、大人のための寓話だと感じます。『去年の木』は過去を持つ真の友情の物語だと思います。小鳥は友達のために歌を歌い、会えない時間があっても木のことを忘れませんでした。そしてずっと友達を探し続けました。最後の歌を歌うことに間に合い、木もそれを聞くことができました。感動的な瞬間です。友情を理解するという哲学がここに表現されています。私たちの生活の中でもこのようなことは起こります。多くのことを考えさせてくれる作品です。」
タチヤーナ(モロジェチノ市立中央図書館司書)

「『でんでんむしのかなしみ』と『あめ玉』を読んで。
 どちらの作品も人生の意味にういて考えさせられます。特にでんでんむしのお話が気に入りました。悲しみを自分の殻の中に入れておくことをいやがり、最初は友達に愚痴をこぼしていました。この重荷をなくすにはどうしたらいいのか助言を求めていました。でも他のでんでんむしも同情してくれませんでした。でも最後には友達が正しかったと認めるのです。人生に苦労があってもそれから逃れようとしてはいけない、がまんして嘆くのをやめるようにしないといけないと理解したのです。
 『あめ玉』のほうですが、人を見かけで判断してはいけない、と教えているように思いました。侍は非情な人間で荒っぽいものなのだと母親は考えています。黒いひげを生やした外見というだけでもそうです。だから子どものわがままを理解しようとせず、切り捨ててしまう人物だと母親は考えました。でも怖そうな侍でもあめ玉がほしいと言う子どもの気持ちが理解できるとは母親は分かっていませんでした。作者は侍が本当は優しい人であることを示しています。子ども二人とも満足するようにちょうど半分ずつになるようにあめ玉を切ったからです。このようなお話を子どもに聞かせることは大変ためになります。」
スベトラーナ(ポーロツク市立第7児童図書館司書)

「お話で癒されるとはこういうことを言うんですね。ストレスが消えました。
 『でんでんむしのかなしみ』『あめ玉』『ごんぎつね』『去年の木』『手ぶくろを買いに』を朗読会で聞きましたが、全ての作品が気に入りました。民族の違いはあっても、お話にはやはり共通する部分があると感じました。『でんでんむしのかなしみ』は勇気を出して人生に向き合うことを言っている話だと思いました。
 『手ぶくろを買いに』は人生ではポジティブな考えを持つほうが、うまくいくことが多い、ということを教えてくれています。
 『あめ玉』は外見は怖そうでも、中身は必ずしもそうではない、ということ、力が正義に変わることを教えてくれます。
 『去年の木』は永遠の友情があることを思い出させてくれました。
 新美南吉の作品はどれも教育的な面が行間に隠れていると思います。でも子どもでも理解できるように書かれています。
 『ごんぎつね』は確かに悲しい物語ですが、テーマは他人への理解であり、これは大切なことであり、苦労があっても相互理解ができるようにならない、というテーマだと思いました。全てのよいお話というものは読者にとって限りなく深く読めるものだと思います。」
リュドミーラ(ミンスク 出版社勤務)

「『ごんぎつね』も『でんでんむしのかなしみ』も私たちの人生を反映しています。人の優しさに気づくのはいつも遅すぎるのです。新美南吉の全ての作品がいい話だと思いました。深い意味がつまっており、さまざまな視点での見方を示唆しているからです。」
リジヤ(ミンスク 「ビブリヤテカ・プラパヌエ」誌編集長)

「『でんでんむしのかなしみ』は哲学的な話です。この作品はどちらかと言えば大人向けでしょう。それぞれみんな自分の悲しみを抱えて人生を歩んでいかないといけない、というのは本当のことだと思います。
 『去年の木』は信じることと友情についてがテーマだと思います。そのほかの作品も全てとてもいい話ばかりで、多くのことを教えてくれます。」
オリガ(ミンスク 「ビブリヤテカ・プラパヌエ」誌副編集長)

「『手ぶくろを買いに』が一番気に入りました。きつねの親子の姿が感動的に描写されているからです。」
タチヤーナ(ミンスク 図書館員)

「『ごんぎつね』が気に入りました。この作家の作品はとても優しくそして哀しい。」
ニコライ(ミンスク 画家)

「『去年の木』がよかったです。寓話的、多重構想を持ち、深遠な作品。この作品だけではなく、全ての作品が深く、才能にあふれているが、少し悲しい。」
エリザベータ・ポレエス (ミンスク 詩人)

「『ごんぎつね』は教訓的で哲学的な意味が行間に隠れている。『でんでんむしのかなしみ』も同様です。」
ニーナ・ガリノフスカヤ(ミンスク 詩人)

「『でんでんむしのかなしみ』はとても奥深く哲学的な作品だと思いました。私たちみんなに多くのことを教えてくれます。この作品を読めば何かあったときに自分はどうしたらいいのか、絶望しないこと、常に賢明に折り合いをつけること、自分と調和して生きること、などを教えてくれると思います。」
アンナ(ミンスク 図書館司書)

「朗読会で聞いた全ての話がよかったです。特に『手袋を買いに』はとても暖かい、そしてハッピーエンドだから気に入りました。友情を大事にし、お互い信じあうことができる人が本当のプレゼントを受け取ることができるのだと思いました。このお話を読んだ子どもは優しい人になれると思います。」
ビクトリヤ(ミンスク 図書館員)

「『ごんぎつね』に表されている考えがよかったです。早合点してはいけない、前もって起こりうる結果についてよく考えないといけない、ということを教えてくれていると思いました。」
ゲオルギー(ミンスク 大学生)

「『ごんぎつね』は人間の行動が思ってもいない方向へ進むことを教えてくれていると思いました。生きている者同士の間であっても、ときどき分かり合えないことがあると思います。他の作品も言葉で表現できないほどすばらしい作品ばかりです。100年前に日本に偉大な作家が生まれていました。」
エブゲーニイ(ミンスク)

「『去年の木』は深い哲学を持っており、読んだ人に生活の中に隠れた意味について考えさせます。人がこの世を去るとき、残された人、子孫に多くの思い出を残すことができます。その人たちの人生の道を明るく照らし、善人になれるような教えを残すこともできるでしょう。この作品を聞くとき、作者が他界したことが重なって聞こえます。大変若くして亡くなりましたが、自分の作品を通して、人間の品位について、また現代の子どもたちに進むべき高い道徳を教え続けています。」
ワレンチーナ(オシミャヌィ)

「『ごんぎつね』がよかったです。ごんが兵十を助けていたからです。」
ダリヤ(モズィリ 9歳)

「『ごんぎつね』がよかったです。理由はごんが自分が悪かったと認めたからです。」
アンゲリーナ(ミンスク 12歳)

「『あめ玉』がよかったです。自分のすぐ隣にいる人のことを忘れないようにしないといけないです。」
アレクサンドル(モズィリ 8歳)

「『でんでんむしのかなしみ』と『あめ玉』を読んで。『あめ玉』のほうがおもしろかった。さむらいは子どもがけんかしないようにちょうど半分にしたから、えらいと思った。」
パブリナ(ミンスク 11歳)

「『あめ玉』『ごんぎつね』『去年の木』がよかったです。お話は人間関係が円滑にいくように必要な解決策を教えてくれます。
お話の中では、比喩的に登場人物が、他の形を取っても役に立ち、誰かの力になることを教えてくれると思います。どの話もとてもおもしろかったです。ありがとうございました!」
イリーナ(モズィリ)

「『でんでんむしのかなしみ』『ごんぎつね』『狐』がよかったです。悲しいお話で教訓的です。ベラルーシでは主人公が最後に死んでしまうようなかわいそうな話は子どもにはあまりしません。」
レイラ (ミンスク 幼稚園長)

「『でんでんむしのかなしみ』『去年の木』は哲学的な作品で将来起こる困難に対する心の準備になると思いました。」
アレーシャ (ミンスク)

「『でんでんむしのかなしみ』は人生について教えてくれる奥深い内容です。」
オクサナ(モズィリ)

「『ごんぎつね』は奥深い作品です。どんな行動を起こすとどんな結果が返ってくるのか教えてくれます。このお話はよい結果のために対策を採っても必ずしもうまくいくとは限らない、と言いたいのではないでしょうか。」
オリガ (ミンスク 音楽教師)

「『去年の木』もいいお話でしたが、一番よかったのは『ごんぎつね』です。普通はこんなお話はありません。他のお話と似ていないところが気に入りました。このお話から日本の文化についても知ることができます。それとごんのことが大好きになりました。ごんは人間のことを愛していて、でも難しいときもあったけれど、それでも自分の失敗を直そうとしたからです。」
ソフィヤ (ミンスク 13歳)

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 どうしてベラルーシ人が新美南吉の童話に共感を覚えたのか、これらの感想に表れていると思います。
 
 また感想が集まりましたら、追加します。