電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響・仙台フィル合同演奏会でドビュッシー、ラヴェルを聴く

2023年07月24日 06時00分48秒 | -オーケストラ
梅雨が明けた日曜の午後、山形市の県民ホールで、山響こと山形交響楽団と仙台フィルとの合同演奏会が開かれました。「東北ユナイテッド」と称して東北の2つのプロオーケストラが合同演奏会を開く試みは、すでにだいぶ回を重ねていますが、パンフレットには残念ながらそうした経緯を記録したデータはありません。このブログで検索してみると、最初に合同で演奏会を行ったのは、どうやら2012年のマーラーの交響曲第2番「復活」のとき(*1)らしい。以後、レスピーギ三部作やR.シュトラウス作品、あるいはマーラーの5番、ブルックナーの8番など、演奏規模が大編成を要するものを取り上げてきています。2020年からは「東北ユナイテッド〜東北は音楽でつながっている〜」と位置づけて取り組まれています。昨年は山響の50周年イヤーでしたが、今回は創立50週年を迎えた仙台フィルの記念年にあたりますので、仙台フィルの桂冠指揮者パスカル・ヴェロさんを迎えて、お得意のフランスものを取り上げた演奏会、ということになります。



開演前のプレトークは、山響の西濱事務局長が紹介して登場した指揮のパスカル・ヴェロさん、仙台フィルのコンサートマスター西本幸弘さん、そして今回出番が多い山響フルート奏者の知久知久さんの三人です。パスカル・ヴェロさんと知久さんは、同じパリ高等音楽院(のだめカンタービレ・ヨーロッパ編の舞台になった学校)で学んだ先輩後輩だそうで、フランス語でやりとり。うーん、フランス語ができるなんて、実にうらやましい(^o^)/ これに対して西本さんのほうは会場の山形県民ホールを絶賛、縄で縛って仙台に持って帰りたいほどだそうで、これにはパスカル・ヴェロさんも同意します。たしかに、宮城県民会館は私が学生時代の頃からの建物ですので、かなり老朽化しているのは確かだろうと思います。おそらく、2011年の東日本大震災の復興事業に予算を取られるため後回しにされて、仙台フィル50周年には間に合わなかったのだろうと推測しているところです。

さて、今回の合同演奏会のプログラムは、

  1. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
  2. ラヴェル:ダフニスとクロエ 第2組曲
  3. ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ(管弦楽版)
  4. ラヴェル:ラ・ヴァルス (管弦楽版)
  5. ラヴェル:ボレロ

というもので、オールフランス音楽。開演前のステージを見ると、その規模の大きさがわかります。ざっと見たところ、ステージ左から第1ヴァイオリン(12)、第2ヴァイオリン(12)、チェロ(8)、ヴィオラ(9)、コントラバス(6)という、12-12-9-8-6 型の弦楽セクションに、正面奥に木管・金管、パーカッションもかなりの人数になるようですが、オペラグラスを忘れてしまい、左奥のハープ2台とチェレスタ2台のほかの詳細は不明。



客席の照明が落ち、楽員の皆さんが登場します。今回のコンサートマスターは仙台フィルの西本さんのようで、脇に山響の平澤さんかな。残念ながら、県民ホールの客席照明はストンと真っ暗に近い状態になりますので、山形テルサと違い、手元でメモすることもできません。したがって全体的な漠然とした印象になってしまいますが、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」では、冒頭のフルート・ソロが見事で、その後の弦楽の量感を感じさせてくれるものでした。次はラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲。規模の大きいオーケストラ音楽を堪能させてくれる曲目です。すっきりした涼感を感じさせる面もあり、この季節にはぴったりかも。

ここで15分の休憩となりました。念のためお手洗いに行ってきましたが、とくに知人に出会うようなことはなし。なにせ客数が多いからなあ。テルサホールの2.5倍のキャパシティですから、顔見知りに出会う確率もそれなりに低下するのでしょう。

後半は、「高雅で感傷的なワルツ」と「ラ・ヴァルス」と続きます。鳴り物いっぱいでカラフルな管弦楽の響きを味わいます。そして弦楽セクションと木管楽器群の間に小太鼓が陣取り、「ボレロ」が始まります。3拍子の同じリズムをずっと繰り返すうちに、しだいに演奏者と聴衆の高揚感が一体化していく、そんな魔法のような音楽。大きな編成のオーケストラだけに、音のヴォリューム効果も絶大です。演奏が終わると、待ってましたとばかりにブラーヴォ!が出ました。

聴衆の大きな拍手に応えて、パスカル・ヴェロさん、アンコールのサービスです。しかも曲の途中から始めても含めて2回も! 曲は、ドリーブの「コッペリア」から、「スワニルダのワルツ」。後半はワルツとボレロ、3拍子で統一したんだよ、ということでしょうか。粋なプログラムというべきでしょう。



今朝になって、朝刊を見たら驚きました。地元紙・山形新聞にはすでにこの演奏会の記事が掲載されているではありませんか! 伊藤律子記者の署名記事で、コンパクトによくまとまった内容でした。某素人音楽愛好家ののんびりした記事とはだいぶ違います。さすがです(^o^)/



ただ、新聞社の表記基準により仕方がないのでしょうが、指揮者のパスカル・ヴェロさんのお名前が「ベロ」さんになっているのはどうも違和感があります。小学校でも英語教育が始まっているご時世に、「B」と「V」を区別しない表記基準は、時代遅れになりつつあるのではなかろうか。固有名詞や学術用語などについては、もう「ヴェルディ」「ヴェローナ」「ヴェニス」で良いのではなかろうか。

(*1): 山響・仙台フィル合同による第222回定期演奏会でマーラーの交響曲第2番「復活」を聴く〜「電網郊外散歩道」2012年7月

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