リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

新たな選択?

2024年05月05日 14時08分21秒 | 音楽系

マティアス・ヴァーグナーという人がやっていたリュート弦等の販売サイトはとても重宝していました。ガムート社以外のほとんどの種類を取りそろえ決済も簡明で送付も早かったのですが、少し前に彼は事業から去り別の方たちに事業継承しました。そのサイトはマティアスがやっていた以上に便利になったので、弦を注文するときはやはりこのサイトを使っています。

先日このサイトから注文した弦が届いたとき、一枚のハガキ様のチラシがはいっていました。それは新しく出たバス・レンジ用の弦の宣伝でした。曰く:

 

この弦はリュート製作家のへンドリック・ハーゼフースのアイデアをもとにそれを更に発展させたもので、私たちが独占的に製造しています。

 

ヘンドリックはケルンの製作家で80年代の中頃にイタリアのウルビーノのセミナーで初めてお目にかかりました。彼の楽器に興味があったので、ウルビーノからそのままケルンの彼のスタジオまでついていって楽器を見せてもらったことがありました。(ついでに1泊とめてもらいました)その後彼にロマンティック・ギターを1本注文したことがあります。彼の楽器はヨーロッパ中の演奏家に使われており、今村泰典氏も一番新しいバッハアルバムで彼の楽器を使っています。

その新発売の弦はHFという名で次のような特徴があるそうです。

1.銀メッキの銅線をカーボン弦1本の芯に巻いた弦

2.音の持続がかなり押さえられている

3.暗い”ブラック”な低音

4.ガット相当のゲージ

5.長さは125cmと150cmの2種類

現在アキラはナイルガット芯の銅巻き線(Dタイプ)を出していますが、かつてはそのDタイプの音の持続を押さえた弦を出していました。それらを使ったことがありましたが、確かに音の持続時間は減少していますが、それ以前に不良振動ばかりで弦としては使いがたいものでした。なお今のDタイプの芯は今のギター弦と同じ、細い繊維を束ねたもの(multifilament)ですが、件のHF弦の芯は1本=monofilamentです。

1本のガット芯に金属線を巻いた弦もかつてキュルシュナーから出ていましたが、これも試したことがあり、やはり使い物になりませんでした。

さてこのHF弦、興味深いので早速人柱になってみましょう。5月6月はコンサートがあるので弦を替えるわけにはいきませんが、夏になったら試してみようかと考えています。そのためにはもうそろそろ注文しなくては。