ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

女性醸造家がつくるドイツワイン@独ファルツ

2015-11-04 10:04:01 | ワイン&酒
昨日まで、都内の都立青山公園で開催されていたドイツフェスティバルが大盛況だったと聞きました。
私は仕事で全然覗きにも行けなかったのですが、ドイツワインが大人気だったようです。
日本人って、実はドイツワインが大好きなんですね(笑)

そこで、今日は、ドイツはファルツ地方のダイデスハイムのワイナリーの社長兼醸造家を務める徳岡史子さんと、そのワインを紹介します。
夏に史子さんによるプレゼンテーションが都内で行なわれた時のリポートです。

ワイナリーの名は、Weingut JOSEF BIFFAR -ヨーゼフ・ビファー醸造所

ヨーゼフ・ビファー醸造所は、かつては、ファルツのダイデスハイム村、フォルスト村、ヴァッヘンハイム村などに畑を所有する銘醸でしたが、ビファー家には後継者がいなかったため、2010年に一時閉鎖を余儀なくされました。
ビファー醸造所が次の世代となる後継者を探していた時、偶然出会ったのが、徳岡史子さんでした。


徳岡史子さん

史子さんは1994年に大学を卒業したその年にドイツに渡り、ダイデスハイムのライヒスラート・フォン・ブール醸造所で一年間研修をしました。
この醸造所は、1989年から日本企業「株式会社徳岡」が経営する会社が所有していました。徳岡は史子さんの父が率いる会社です。1989年というと、日本はバブル絶頂期ですね。

史子さんは、1995年から4年間ラインガウのガイゼンガイム大学ワイン生産学部で学び、2001年に同大学付属微生物学研究所に入社します。

その後、史子さんはブール醸造所に入社して醸造家として活躍し、赤字続きの同醸造所を10年で黒字経営に転換します。
その時代に私はブール醸造所を訪ねたことがありました。今回はそれ以来の再会になりますが、違う醸造所の社長に転身されていたのが驚きでした。

実は、ブールと徳岡との契約が2013年12月末で切れることが8年前からわかっていたそうです。
次のプロジェクトが決まっていなかった史子さんと、後継者を探していたビファー家が出会ったのは、本当に偶然だったといいます。

「ビファーという自分のファミリーネームを冠する会社を他人に委ねることは大変なこと。でも、日本企業がブールに24年間関わって立て直した成果が評価され、同じドイツ人に託すよりも確実と思われて、交渉がうまくいったんです」と史子さん。

2013年、史子さんはヨーゼフ・ビファー醸造所の社長に就任します。
ビファーの生産量は、ブール時代の100万本から1/10の10万本という規模です。

ブールで醸造責任者を長年務めていたミヒャエル・ライプレヒト氏がビファーに移り、また、他のスタッフでビファーに移った人も多く、なんと、ビファーのスタッフはブール時代の社員が100%来ています。
当時のビファーには社員が誰もいなかったので、人が移りやすかったとのこと。全スタッフがブール出身なので、最初から気持ちをひとつにしてスタートが切れたといいます。

現在、ビファーの所有する畑は7.5ha。この先、20haまでは買い足したいそうです。
しかし、今はドイツの景気が良く、土地を売りたい人がいないので、待っている状態だそうです。



上の画像では JOSEF BIFFARLOUIS FEISのラベルワインがあります。

史子さんがビファーと出会う前、ブールの後始末をして切羽詰まっていた時期に、別の醸造所でつくっていたワインが「LOUIS FEIS -ルイス・ファイス」です。
それを引き受ける際、史子さんは、醸造所の建物をつくった人の名前から、ルイス・ファイス醸造所と名付けることにしました。
ルイス・ファイスでは、リースリングのワインのみを生産していました。

そのすぐ後に、史子さんはビファーと出会います。
ビファーを引き受けることが決まった際に、今後は “ルイス・ファイス”の名前は止め、“ヨーゼフ・ビファー”に統一することに決めました。



現在、まだ、“ルイス・ファイス”の名前のワインが市場に出ています。
ルイス・ファイスは、ビファーのブランドのひとつ、という位置付けで、ルイス・ファイスのワインの販売元がビファー醸造所であることがバックラベルに明記されています。

ルイス・ファイスという名での最後のヴィンテージは2012年です。
2013年からはビファーのラベルに統一されます。2012年は貴重なラストヴィンテージなんですね。
ルイス・ファイスは、史子さんにとって、苦労していた時期の思い出のワインだそうです。




さて、試飲したワインを紹介します。

LOUIS FEIS Riesling Kabinett Trocken 2012
ルイ・ファイス リースリング・カビネット トロッケン2012
ほっとするエレガントな甘さのリースリングです。とろんと柔らかな口当たりで、アルコールは9.5%という軽さ。

JOSEF BIFFAR Weissburgunder Trocken 2012
ヨーゼフ・ビファー ヴァイスブルグンダー トロッケン 2012
さっぱりした口当たりの、軽やかでドライなワイン。軽いミネラル感があり、余韻にかけてスーッと消えていきます。強すぎない良さがあります。

JOSEF BIFFAR Grauburgunder Trocken 2012
ヨーゼフ・ビファー グラウ・ブルグンダー トロッケン 2012
少し厚みがあり、ミネラル感もある。果実味、ブドウの甘みがあり、初心者でも飲みやすいワイン。バランスいい。

JOSEF BIFFAR Chardonnay Trocken 2012
ヨーゼフ・ビファー シャルドネ トロッケン 2012
ドイツ風のシャルドネに仕上げているそうです。酸素をたくさん含ませ、バリック樽ではない木樽熟成2500リットルの楕円形の樽使用。樽の内側をトーストしていないので、トースト風味はブールなく、ワインに酸素を送り込む役割をしている。樽を買って2、3年は樽の風味が強く、6年めから樽の力を発揮してくれる。ワインが呼吸をしながら熟成。内側に酒石が貯まっていく

LOUIS FEIS Riesling Halbtrocken 2012
ルイ・ファイス リースリング・ハルプトロッケン2012リースリング・ハルプ・トロッケン
ミネラル感豊か。フレッシュ感があり、果実の厚みもあり、甘みがしっかりと感じられます。


ドイツでは新しいヴィンテージを好む傾向にあるが、長時間酵母と接触させながら寝かせて、アロマを複雑にしてから出したい。2014年はまだ寝かせている段階。2013年が8月に日本に入港します」と史子さん。

ビファーでは、中級からグランクリュクラスのワインを生産しており、生産量の80%がゼクトだそうです。が、日本へはゼクトはまだ入ってきていません。
ブールでは年間100万本を生産していたうちの20%がゼクト。私の中では、ブールはゼクトの印象がけっこう強かったです。史子さんのブール時代に仕込んだ、デゴルジュマン前のボトルがあり、それらはビファーに持ってきたそうです。

ビファーをベーシックワインのブランドとして広めていきたいので、ゼクトはまだしばらく寝かせておきます」ということなので、楽しみに待つことにしましょう。



JOSEF BIFFAR Deidesheimer Kieselberg Riesling Trockenbeerenauslese 2002

最後にサプライズで、甘口の2002年トロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)が登場しました。
ドイツのリースリングならではのしっかりした酸があり、長熟を可能にしています。
甘い!けれど、酸が意外とフレッシュ!


色を見ると、濃い黄金色をしていて、舌触りはとろ~り。甘美です。

「ドイツのリースリングだからできるワイン。TBAをグラスで飲めるレストランが、なかなかない。
話題提供という意味でも、こうした提案をどんどんしていくことが大事」と史子さん。

レストランで、TBAを少量20ccと、ロックフォールチーズとともに、クルミとマロングラッセ、といった組み合わせもオススメと言います。


史子さんは、ワインと食とのマッチングにこだわりを持っていて、2014年には醸造所内に 和食レストラン「fumi」をオープンさせました。
レストランでは、ワインと食のマッチングが楽しめるそうですよ。

今回、我々は 新橋の「京 NA-BA-NA」さんの料理と史子さんのワインとのマッチングを試しました。



ビファーのワインは、ワインだけが主張するのではなく、食事に寄り添い、ワインと料理の両者で盛り立てていくタイプだと感じました。
日本の食卓にも合い、使い勝手がいいと思います。



今回ご紹介いただいたワインの価格は、TBAを除き、2000円(税抜)と、かなりお手頃です。
コスパの面、使いやすさの面からも、オススメできます。

これからの季節は、 鍋料理なんかにも合いそうですし、年末年始で人が集まる時の和食のごちそう料理にも合わせてみるのもいいですね。

また、前述したように、ワイナリーの敷地内に史子さんの和食の店がありますから、機会があれば、ぜひダイデスハイムにあるワイナリーを訪問してみることをお勧めします。
ワイナリーでの和食とワインのマリアージュ体験は、きっと楽しいと思いますよ。
私も、機会があれば訪れてみたいです。

※ダイデスハイムの街は、ドイツらしくて素敵な所です。
 以前に書いた街紹介の記事がありますので、街並みなど、参考にしてください → コチラ

(輸入元:株式会社 徳岡)

コメント
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