ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

春こそボジョレー【前編】

2012-03-29 18:48:55 | ワイン&酒
フランスのワイン生産地 ボジョレー は、ボジョレー・ヌーヴォー でよく知られています。

そのため、ボジョレーは新酒で飲むもの、新酒解禁日(11月第3木曜)から初冬にかけて飲むもの、と思っている人が多いのではないでしょうか?

ボジョレーでは、AOCボジョレー、AOCボジョレー・ヴィラージュ、クリュ・ボジョレー と、大きく3つに分類されるワインがつくられています。
ヌーヴォーがつくられるのは、ほぼ前2つですが、ヌーヴォーではないAOCボジョレーやAOCボジョレー・ヴィラージュのワインもしっかりあります。クリュのワインに至っては、ヌーヴォーは稀。

実は、ヌーヴォーワインは生産量全体の約30% で、70%はヌーヴォー以外 です。

ヌーヴォーの解禁日は11月ですが、ヌーヴォーでないワインの解禁日は1月15日。
かつては12月15日でしたが、現在は1月15日となっており、2013年度の収穫からは2月1日になるようで、解禁日がだんだん遅くなってきています。

1月に解禁しても、ボジョレーワインは春のイースターを過ぎてから飲むもの、というのが、現代のフランスの常識になっています。
イースターは年によって日にちが変わりますが、3月後半から4月上旬頃になることが多く、2012年は4月8日です。
つまり、ちょうど今頃が新酒ではないボジョレーワインがおいしくなってくる時期 というわけ。

そんなことから、今週、ボジョレーの試飲会とプロ対象セミナーが開催され、私も出かけてきました。
テーマはもちろん、“新酒以外のボジョレーワイン”



ボジョレー地区は美食の町リヨンから北に30kmほどに位置し、南北に55km、東西に25kmの広さがあります。東の端にソーヌ川が南北に流れ、西側は山があり、ソーヌ川に向かって傾斜する丘陵から平地にブドウ畑が広がります。畑は全体で18,000haあり、年間80万ヘクトリットル、ボトルにして1万600本のワインが生産されています。

ボジョレーのAOCは 12 あります。
AOCボジョレー、AOCボジョレー・ヴィラージュ、クリュ・ボジョレー(AOC数10)を簡単に説明すると…

AOCボジョレー
ボジョレー地区の南半分の広範囲に広がり、畑の面積は最も大きくなります。全生産量の36%をつくり、うち54%がボジョレー・ヌーヴォーになります。

AOCボジョレー・ヴィラージュ
ボジョレー地区の北部、クリュ(下記参照)の地域を取り囲むように畑があり、起伏が多いのが特徴。全生産量の26%をつくり、うち43%がヌーヴォー(ヴィラージュ・ヌーヴォー)になります。

クリュ・ボジョレー (AOC-10)
ボジョレー地区の北部に10のクリュ(Cru)が存在します。
クリュとは、上級ブドウ畑、およびそのワインのことで、限られたエリア内でつくられ、地区全体の生産量の36%を占めます。
10のクリュは、土壌、標高、微気候、傾斜の程度や向きなどが異なりますので、それぞれの特徴を表現するワインができます。各クリュの特徴については、【後編】で紹介します。


左)Moulin-a-Vent 2008  右)Beaujolais Village 2010 Jean Mortet
(2,200円、2,800円、輸入元:カーヴかない屋)
左がクリュ・ボレジョレー(AOCムーラン・ナ・ヴァン)、右がAOCボジョレー・ヴィラージュ。

ボジョレー地区のブドウ品種は “ガメイ”(Gamay)です。
果皮が黒く、果肉が白い品種で、これを単一で仕込み赤ワインをつくりますが、ロゼワインもわずかに見られます(2%)。また、シャルドネが少量植えられているので白ワインもありますが、これもごくわずか(2%)。


左)Beaujolais Rose 2010 中)Beaujolais Blanc 2010 La Petite Maison Haut
右)Beaujolais Blanc 2009 Henry Fessy
(左と中 各2,200円、輸入元:カーヴかない屋)(右 1,785円、輸入元:株式会社アルカン)

桜色したロゼはフランボワーズのアロマが香り立ち、超チャーミング。花見にオススメ。
中の白は、キリリとした酸と果実味のバランスがグッド。酸味好きの方へのイチオシ。
右の白は、やさしいタッチでまろやか。癒し系ですが、クイクイ飲むと危険です(笑)



ボジョレーで生産されるワインの60%がフランス国内で消費され、40%が世界120カ国に輸出されています。
2011年、日本は対前年比10%増となってアメリカを抜き、世界1位のボジョレー輸入国となりました。日本に輸出された量は66,000ヘクトリットル、ボトル換算では900万本になります、驚くことに、そのうち6万リットルがヌーヴォーでの輸入です。

つまり、日本に入ってくるボジョレーワインの90%がヌーヴォー!
ヌーヴォーに偏る現象は日本だけに見られ、元々ヌーヴォーをつくらないのに、日本に輸出するためだけにヌーヴォーをつくる生産者もいるとか。しばしば見る “日本限定ヌーヴォー”はこうして生まれて います。

しかし、ボジョレーで生産される約70%が翌年の春から楽しみたいスタイルのワインです。
クリュのワインとなると、さらに1年、2年と熟成させることでよりおいしくなり、時には5年から15年…という長期熟成を遂げるものもあります。


左)Brouilly La Fantaisie 2002 右)Moulin-a-Vent 1997 Regnar

2002年のブルイイは、ちょうどいい飲み頃になっていました。
ムーラン・ナ・ヴァンは、なんと1997年!15年を経たおいしさがあります。
(3,300円、3,600円、輸入元:ブリストル・ジャポン株式会社)

ヌーヴォーこそボジョレー、と思っている人が多いと思いますが、他のワインと同様、熟成を重ねて変化を見せるボジョレーワインがあることを知らないのは大変もったいないことです。



【後編】 では、熟成を楽しむクリュワイン、近年のヴィンテージ、食とのマリアージュなどを紹介します。


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