ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第33回 Champagne Bollinger@「キャッチ The 生産者」

2009-03-22 10:46:03 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年4月11日)

第33回  Sonia de la Giraudiere   <Champagne Bollinger>
 
シャンパーニュ訪問記第4弾は、アイ村のボランジェ です。
瀟洒な外観が美しいボランジェ社で 笑顔のソニアさんが 出迎えてくれました。



<Sonia de la Giraudiere> (ソニア・ド・ラ・ジロディエール)
今回、案内をしてくれたボランジェ社スタッフのソニアさんは、知的な雰囲気漂う素敵な大人の女性です。
でも、「“アイ(愛)”(Ay村と同じ発音)は日本語では“ラブ(love)”という意味よ」と私が言うと、「本当?どういう綴り?」と嬉しそうに目を輝かせ、まるで少女のような表情を見せてくれました。

“アイ村は愛の村”という話は、もしかしたら村中に広がっているかもしれません。


フィロキセラ以前のブドウ樹
私がボランジェ社を訪問したいと思ったきっかけのひとつが、古い仕立てのブドウ畑の存在でした。

現在のブドウ樹は、クローン選別したものを培養したり、取り木した枝を挿し木するなどして増やしていきます。

ところが、昔々の方法は違いました。ブドウはツル性植物ですから、成長期にはどんどんツルを伸ばします。そのツルの一部を土に埋めると、そこから根が生え、新しい株ができます。この方法を“provignage”(プロヴィニャージュ)といいます。

今では見られない手法ですが、フィロキセラ禍(19世紀後半)以前からのプロヴィニャージュのブドウ畑がボランジェにあるのです。これはぜひとも拝見せねば!



『007』とボランジェ
ジェームス・ボンドが活躍するハードボイルド映画『007』にはシャンパーニュが登場しますが、そのシャンパーニュは実はボランジェ社のものです。
2006年に公開された最新シリーズ『007/カジノ・ロワイヤル』にも出演しています。

ボランジェとジェームス・ボンドとの共演は『007/ムーン・レイカー(1979年)』から始まりました。
“ジェームス・ボンドの非の打ち所のない嗜好と洗練されたパーソナリティにマッチするシャンパーニュ”ということで、彼の愛飲するブランドとしてボランジェが選ばれたといわれています。

ボランジェの“スペシャル・キュヴェ”は、イギリスでは“ボリー”と呼ばれて親しまれているので、イギリス秘密情報部に勤務するジェームス・ボンドの目に留まったのかもしれませんね。

映画館でシャンパンボトルを抱えながら、というのはちょっと厳しいですが、部屋でお気に入りの『007』をDVDで楽しみながらボランジェのグラスを傾ける、っていうのは手軽にできそうです。




Bollinger
1829年、ドイツからやってきたジャック・ポランジェが、1750年からアイ村を拠点にいくつもの畑を所有するアタナス・エヌカン・ド・ヴィレルモンと出会い、シャンパーニュメゾン“ボランジェ”をアイ村に創立しました。

その後、メゾンはボランジェのファミリーに受け継がれてきましたが、1941年からはマダム・ジャック・ボランジェ(リリー)が取り仕切り、彼女の死後は2人の甥に、そして現在はその子供たちに引き継がれています。

アイは、第30回(ゴセ・ブラバン)でも紹介しましたが、グラン・クリュ格付けの村であり、ピノ・ノワールで名を馳せている村です。実はゴセ・ブラバンとは狭い道を挟んで向かい合っています。

「うちはボランジェ社にブドウを売っていたんだ」と、ゴセ・ブラバンのクリスチャンは言っていました。両社は縁の深いお向かいさんなのです。




まず「プロヴィニャージュの畑が見たい」 とお願いしたところ、建物の裏手に案内されました。家庭菜園風の小さな畑です。

「ほら、これを見て(下の写真)。この畑のブドウの樹の配置図を点で表したものなんだけど、左は点々が不規則でしょう?ツルを埋めて増やしているから、こんなふうにバラバラな配置になっているのよ。根元も畝を高くしているの。

右は“en foule”(アン・フル)(密集させるという意味)という植え方で、きれいに整列しているでしょ?」とソニアさん。



たしかに、樹はてんでバラバラに植えられ、ネギ畑のように畝が高くなっています。なるほど、伸びたツルを埋めるために盛り土をしているんですね。




Q.このブドウ品種は?これでワインをつくっているのですか?
A.ええ、ブドウはピノ・ノワールで、“Vieilles Vignes Francaises”(ヴィエーユ・ヴィーニュ・フランセーズ)(VVF)というシャンパーニュをつくります



収穫の終わった畑で数房のブドウを発見しました・・・・甘い!

Q.VVFはどういうシャンパーニュですか?
A.ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールです。畑はここ(Chaudes Terres)の他にもあと2箇所(AyのClos St-JacquesとBouzyのCroix Rouge)あり、それでも全部合わせて0.6haほどです。

だから生産量も少なくて2000~3000本ほどで、毎年つくれるとは限りません。セラーで最低6年寝かせるので、リリースするまでに時間もかかるし、とても手のかかるシャンパーニュです。(現在は1998年のものがリリースされています。2695本)

Q.現在のボランジェについて教えて下さい。
A.マダム・リリーが経営を引き継いで以来、ずっとファミリーで運営するという姿勢を崩していません。外部から干渉を受けることなく、自由にシャンパーニュをつくりたいからです。

畑は70%が自社畑(150ha:ピノ・ノワール95ha、シャルドネ40ha、ピノ・ムニエ20ha)で、30%が契約栽培ですが、すべて長い付き合いのある栽培者です。

Q.ボランジェ社のワインメーキングのこだわりは?
A.ピノ・ノワールをベースにしていること、最初にプレスしたキュヴェしか使わないこと、そして“樽”です。

シャンパーニュでは、第一次発酵の際にオーク樽を使うところは稀ですが、ボランジェのプレスティージ・キュヴェである“ラ・グラン・ダネ”と“R.D.(エル・ディ)”は必ずオーク樽を使いますし、“スペシャル・キュヴェ”(他社でいうノン・ヴィンテージ・シャンパーニュ)も部分的にオーク樽で発酵させます。

Q.なぜオーク樽にこだわるのでしょうか ?
A.ステンレスタンクでは、果汁がダメージを受けることがあると考えるからです。だからといって何でもオーク樽に入れればいいわけではなく、その果汁が充分な資質を持っていることが必要です。当社は熟成期間を長くとっていますので、力のない果汁ではそれに耐えることができません。
また、樽はワインにアロマや独特のキャラクターを与えてくれるからです。ただ、それが過度にならないよう、新樽は使いません。

オーク樽には、村ごと、区画ごと、セパージュごとの単位で小分けにして仕込みますので、それぞれのキャラクターを掴めますし、出所の追跡もできます(トレサビリティ)。



樽にこだわるというだけあって、醸造所内には樽を整備する作業場があり、樽職人(クーパー)の姿もありました。

Q熟成期間が長いということですが、どのくらいでしょうか?
A.スペシャル・キュヴェで最低3年、ラ・グラン・ダネで6年以上、R.D.で8年以上、時に20年になることもあります。

Q.ラ・グラン・ダネとR.D.の違いは?
A.まず、ラ・グラン・ダネをテイスティングし、アロマや酸、ストラクチャーなど、全ての要素でR.D.になれる可能性を持っていると判断されたら、1年後にもう一度テイスティングします。そこで認められたものだけがR.D.への切符を手にすることができるのです。

Q.リザーヴワインはどうしていますか?
A.当社ではリザーヴワインをとても重要視しています。実はヴィンテージ・シャンパーニュよりもノンヴィンテージ・シャンパーニュの方がつくるのが難しいのです。天候が悪い年でもコンスタントにつくっていかなければならないのですから。

そこで、味のベースとなるリザーヴワインが重要になってきます。

リザーヴワインはクリュごとに全てマグナムボトルに詰められ、酵母と糖分を添加して5年から12年寝かされます。その際、ラ・グラン・ダネとR.D.用のものはコルクで、スペシャル・キュヴェ用には金属キャップで栓をします。

なお、当社のリザーヴワインの使用比率は5~10%です。

Q.ルミアージュ(動瓶)は手作業ですか?
A.ラ・グラン・ダネとR.D.は手で、スペシャル・キュヴェは機械(ジャイロパレット)で行います。前2つは特殊なコルク栓を使っているので、機械にセットできないからです。

その後、デゴルジュマン(澱抜き)をしたら4ヶ月ほど寝かせ、落ち着いたらクリーニングをしてラベルを貼って出荷します。




<テイスティングしたシャンパーニュ>

Special Cuvee
イギリスで“ボリー”と呼ばれているポピュラーな“マルチ・ヴィンテージ・シャンパーニュ”。
他社でいう“ノン・ヴィンテージ・シャンパーニュ”に当たりますが、“マルチ・ヴィンテージ”と呼び、“スペシャル・キュヴェ”と名づけたところにボランジェの誇りとこだわりを感じます。
力強さ、フィネス、深み、バランスを兼ね備えた、ボランジェのスタイルをよく表したシャンパーニュです。プルミエ・クリュとグラン・クリュのブドウが使われ、ピノ・ノワール60%、シャルドネとピノ・ムニエが各15% 。

「アペリティフや、サーモン、白身の魚の料理がおすすめです」(ソニアさん)


La Grande Annee 1999
“偉大な年”という名のプレスティージュ・キュヴェ。非常に良い年で、テロワールをよく反映し、しかもボランジェらしさがよく出た年のみに仕込まれます。丸みのあるストラクチャーと、豊かで複雑な深みのあるアロマを備えたシャンパーニュで、基本セパージュは、ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%。1999年はピノ・ノワール63%、シャルドネ37% 。

「サービス温度は10℃くらいで。魚料理などと一緒に楽しんでください」(ソニアさん)


R.D. 1996
先述したように、エイジングのポテンシャルと良いコンディションを持ったラ・グラン・ダネだけが“エル・ディ”になることが許されます。
長い時には20年以上もセラーで寝かされるというから驚きです。長い熟成を経てもなお生き生きとしたフレッシュさが残り、非常にデリケートで複雑なアロマを持っています。1996年はピノ・ノワール70%、シャルドネ30% 。

なお、“R.D.”とは“Recemment Degorge”(レサマン・デゴルジュ)の頭文字をとったもので、“最近デゴルジュマン(澱引き)をした”という意味。そのため、バックラベルにはデゴルジュマンをした日付が明記されています。

「トースティなアロマがあり、ノワゼットのようなナッツの風味があります。シャンパーニュをよく知り尽くした上級者に飲んでいただきたいですね」(ソニアさん)



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インタビューを終えて

ボランジェは、いわゆる“通好み”のシャンパーニュとよくいわれます。もちろん、ボランジェが超一流ブランドということもあるでしょうが、めざすスタイルを明確にし、それに向けての最大限の努力をしていることがすべてに現われているからでしょう。

“ボディを与えるピノ・ノワールをベースに選び、樽を使うこと。そして、樽に負けないポテンシャルの高い本物のブドウを手に入れること” がボランジェの真髄といえます。

そして、脈々と受け継がれているプロヴィニャージュの奇跡の畑もまた、ファミリーを大切にするボランジェを象徴するもののひとつ、ということがわかりました。



テイスティングにお付き合いいただいたエチエンヌ・ビゾ氏(1962年生まれ)
マダム・リリーの甥クリスチャン・ビゾ氏の息子で、ゼネラル・ディレクター。



このプロヴィニャージュの畑から生まれる“ヴィエーユ・ヴィーニュ・フランセーズ”は本当に貴重なシャンパーニュで、非常に高価な超高級品です。一生のうちで一度でも口にできたら、天にも昇るような幸せな気持ちになるに違いありません。

あの畑で育ったVVFと、いつかどこかで再会できますように…。



オフィスに飾られていた古いエチケットラベル

取材協力:JFLA 酒類販売株式会社 アルカン事業部
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第32回 Champagne de VENOGE@「キャッチ The 生産者」

2009-03-22 10:40:58 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年3月11日)

第32回  Julien Martin  <Champagne de VENOGE>

シャンパーニュ訪問の第3回目となる今回は、
エペルネにある “シャンパーニュ・ドゥ・ヴノージュ”社の輸出マネージャー、
ジュリアン・マーティンさんが登場します。



<Julien Martin>(ジュリアン・マーティン)
シャンパーニュ・ドゥ・ヴノージュの輸出マネージャー。
ランスでワインビジネスに携わった後、4年前にドゥ・ヴノージュ社に入社。
親しみやすい笑顔の、癒し系ジェントルマン 。


名門揃いのシャンパーニュ通りへ
ジュリアン・マーティンさんとの最初の出会いは2006年3 月。彼が来日し、滞在期間はわずか3日間でしたが、興味深いテイスティング会を開いてくれました(注*)。
そんなわけで、シャンパーニュに行くからにはドゥ・ヴノージュ社を訪問し、今度こそ彼の話をじっくりと聞かねば!です。

そして2006年の初冬、エペルネのシャンパーニュ通りにある“ドゥ・ヴノージュ”社のオフィスでジュリアンさんが出迎えてくれました。




エペルネのシャンパーニュ通りは、その名が表すように、名だたるシャンパンメーカーがずらりと軒を並べています。街としてはランスの方が格段に大きいのですが、シャンパーニュ委員会の本部もあるエペルネはシャンパーニュの心臓部といっていいでしょう。

1837年創立ドゥ・ヴノージュ社は、元々はこの通りでも2番目に大きな敷地(最大はモエ・エ・シャンドン社)にあったそうですが、1998年にボワゼル・シャノワーヌ・シャンパーニュ(BCC)グループ(ボワゼル、シャノワーヌ、アレクサンドル・ボネ、フィリポナ、ランソンなどを抱える)の傘下に入ったため、現在の場所に移ってきました。

通りに面した門を入ると、右手に同グループのボワゼル、左にドゥ・ヴノージュのオフィスがあり、正面には醸造所があります。



“コルドン・ブルー”の由来
ドゥ・ヴノージュの代表銘柄は “コルドン・ブルー”(Cordon Bleu)
フランス語で“青いリボン”という意味で、これは、ドゥ・ヴノージュ家がスイス出身であることから、スイスのレマン湖に注ぐヴノージュ川の水の青さを青いリボンになぞらえて、名づけています。

この青いリボンは、1578年にフランスで結成された“精霊騎士団”にも関係しています。彼らは青いリボンで十字架を下げていましたが、彼らの晩餐の食卓が豪華で素晴らしかったことから、青いリボンは素晴らしい料理人を意味するようになり、1895年にはパリにその名を付けた名門料理学校“ル・コルドン・ブルー”が誕生しています。

“青いリボン”は、昔も今もまさにガストロノミーの象徴というわけです。

(注*)
このときのテイスティング会の模様は、ソムリエ協会機関誌(『sommelier』90号)をご覧ください。



ドゥ・ヴノージュ社のオフィスには古い書物のようなものがたくさんありました。
「これらは何?」と尋ねると、
「これこそがドゥ・ヴノージュの歴史が詰まった宝物さ」と、自慢げなジュリアンさん。



ボロボロの表紙のそれらを開くと、素晴らしいエチケットのコレクションが目に飛び込んできました。100年以上も前に使われていたものもあります。
ドゥ・ヴノージュ社の代名詞“コルドン・ブルー”も、ずいぶんとデザインが変わっています。


Q.“コルドン・ブルー”はいつ頃誕生したのですか?
A.名前が誕生したのは1851年で、シャンパーニュとしてリリースしたのは1864年です。
ほら、今はマム社のブランド名にもなっている“コルドン・ルージュ”(赤いリボン)は、ドゥ・ヴノージュでもつくっていたんですよ。



ほかに“コルドン・ブラン”(白いリボン)もあるし、面白いところでは、
“ドン・ペリニヨン”もあるんです。驚きでしょう?



モエ・エ・シャンドン社の“ドン・ペリニヨン”がリリースされたのは1937年ですが、当社ではそれより以前の1892年に出していたわけです。



Q.ドゥ・ヴノージュ社のワインメーキングについて教えて下さい。
A.まず、果汁は最初にプレスしたキュヴェしか使いません第一次発酵は100%ステンレスタンクで行います。

その際、ひとつの村のひとつのセパージュごとに仕込みますので(例:アンボネ村のピノ・ノワールはひとつのタンク)、21のタンクができます。

ブレンドは1月から2月にかけて行い、大きなタンクに移して酵母を添加し、ボトルに移して二次発酵を行います。

Q.このフラスコ型のボトルは“グラン・ヴァン・デ・プランス”に使われているはずだと思うのですが、透明なバージョンもあるのですか?(“グラン・ヴァン~”のボトルは緑褐色)
A.これは新しいキュヴェで、“Louis XV”(ルイ・キャーンズ)(かつてのフランス王“ルイ15世”の意味)です。



グラン・ヴァン・デ・プランスはシャルドネ100%のブラン・ド・ブランでしたが、ルイ15世はシャルドネとピノ・ノワール各50%のシャンパーニュです。10年間瓶で熟成を行い、1995年ヴィンテージを初めてリリースします。
日本には、2007年3月のFOODEX JAPAN (幕張)で披露する予定です。

Q.なぜ「ルイ15世」という名前が付いているのですか?
A.1728年5月25日、ルイ15世はシャンパーニュのワインだけにボトルの使用を許可しました。その頃は、ワインを運ぶのはもちろん、売るときにもボトルは使われていませんでしたが(樽が使われていた)、唯一シャンパーニュだけが認められたのです。このことは、シャンパーニュのワインだけが瓶内で発酵する間に泡を閉じ込めることができるようになったことにつながります。そうした意味から、ルイ15世の名を冠しました。

Q.Louis XVは10年という長期の熟成をしているということですが、通常、瓶熟成期間はどのくらいですか??
A.当社では、ノン・ヴィンテージものは最低3年、ミレジメものは最低5年瓶熟成を行っています。

ドサージュの量がごくわずかの極辛口“Cuvee 20ANS Extra-Brut 1983”の瓶熟成期間は20年です。これは非常に長熟タイプのシャンパーニュです(ピノ・ノワール60%、シャルドネとピノ・ムニエ各20%)




Q.赤ワインもつくっているのですか?
A.“コトー・シャンプノワ ラ・フォレ”(Coteaux Champenois “La Foret”)で、ピノ・ノワール100%のスティルワインです。



元々シャンパーニュの地でつくられていたのは赤ワインで、ルイ15世の時代にはこの赤ワインが好まれていたことを忘れないようにつくっています。ピノ・ノワールはリセ村のものを使っています。

Q.聞くところによると、シャンパーニュをデカンタージュして飲むことがあるそうですが?
A.はい、古いヴィンテージのシャンパーニュを飲むときに、アロマを開かせるためにデカンタージュすることがあります。




地下のセラーの壁は厚さ50cmのチョーク層で、長さは1.2km。
温度は1年中12~13℃に保たれています


<テイスティングしたシャンパーニュ>

Cordon Bleu Brut Select
ピノ・ノワール50%、シャルドネとピノ・ムニエが各25%。
フレッシュで、ヘビーになりすぎないシャンパーニュです。

「ピノ・ノワールを使うことによって、ワインにボディを与えています。アペリティフに向きますが、軽い魚料理、日本の寿司などにも合うと思いますし、ランチタイムに飲むのにぴったりです」(ジュリアンさん)


Rose Brut
ピノ・ノワール60%、シャルドネとピノ・ムニエ各20%。
きれいなばら色で、酸とボディがしっかりとし、果実の豊かさがあり、スティルワインぽいシャンパーニュです。

「赤い果実のニュアンスのあるエレガントなロゼで、アペリティフにおすすめです。エチケットの女性はイボンヌです(1869年生まれのドゥ・ヴノージュ家の娘。マン伯爵と結婚し、パリの社交界にシャンパーニュ・ドゥ・ヴノージュの名前を広めた)」(ジュリアンさん)



左から Cordon Bleu Blanc de Blancs Millesime 1996、 
Cordon Bleu Brut Select、Blanc de Noirs Brut、Rose Brut


Blanc de Noirs Brut
ピノ・ノワール80%、ピノ・ムニエ20% 。
とても複雑なアロマで、ナッツ、ノワゼット、バターといったものを感じ、味わいもしっかり。エチケットの男性は、イボンヌの夫であるマン伯爵。

「非常に貧しい土地のぶどうを使っていますが、力強いシャンパーニュです。ゲーム(狩猟した鳥獣類)、鹿肉のトリュフソース、フォアグラのソテーに小さいたまねぎを添えたものなどに合わせたいですね」(ジュリアンさん)

 
Cordon Bleu Blanc de Blancs Millesime 1996
シャルドネ100%。
非常にいい酸味を持っていて、ミネラル感がしっかりあり、しかも丸い感じがあります。

「フィネス、エレガンスを持つシャンパーニュで、非常に長熟なタイプです。セラーで20年から25年は持つと思います。魚料理、牛肉、山羊のチーズなどがおすすめマリアージュです。一般的に、白ワインはチーズとの相性がいいことを覚えておくといいですよ」(ジュリアンさん)



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インタビューを終えて


今回の訪問では、ドゥ・ヴノージュ社の社長 Gilles de la Bassetiere(ジル・ド・ラ・バスティエール)氏にも会うことができました。まだ30代と若いモデルのようなイケメン社長で(写真を撮り忘れたのが残念!)、日本の大学(慶応大学)に通っていたこともあり(住んでいたのは池袋だったとか)、日本語も少し話します。

そんなわけで、ジルさんは、日本はとても好きな国だと言い、日本の話に花が咲きました。私たち日本人にとっても、シャンパン会社のトップに日本通がいるということは親しみを感じます。ジルさんのように、国際感覚を持った若い世代の経営者は、これから先どんどん登場すると思われます。

ドゥ・ヴノージュの名は日本ではまだなじみが少ないかもしれませんが、ぜひ覚えておきたいシャンパンハウスです。



本文中で紹介した“Louis XV 1995”ですが、実はいち早く飲ませていただきました。

以前、シャルドネ100%のグラン・ヴァン・デ・プランス1992を飲んだときに、ずいぶんと若々しくてフレッシュだと感じたので、それよりも3年若いLouis XVはどうだろうかと、開ける前から胸が躍って仕方ありませんでした。



果たして、Louis XVはとてもまろやかでコクがあり、味わいに熟成感があります。泡は穏やかで全体的にしっとりと落ち着き、個人的にとても好きなタイプのシャンパーニュで、ノド越しを味わうより、じっくりとシャンパーニュの旨さを楽しみたい人向けです。

しかも、美しいデカンタに入り、ガラスの栓が別添えされているので、飲んだ後にデカンタとして使えるという嬉しいオマケもあります。

こんな素晴らしいシャンパーニュが、いよいよ日本に上陸します!

この3月に幕張で開かれる“FOODEX 2007”で紹介すると言っていましたが、ジュリアンさんは、私との約束通りに、Louis XVを携えて日本に来てくれるでしょうか 。



取材協力:富士貿易株式会社
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第31回 Billecart-Salmon@「キャッチ The 生産者」

2009-03-22 10:34:13 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年2月11日)

第31回  Claudia Meigneu  <Billecart-Salmon>

さて、今回も引き続きシャンパーニュからのレポートです。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のマレイユ・シュル・アイ村にある
“ビルカール・サルモン” を、スタッフのクラウディアさんに案内していただきました。



<Claudia Meigneu>(クラウディア・メニュー)
笑顔がチャーミングなクラウディアさんは、ビルカール・サルモンの窓口ともいえる存在。
訪問希望者の受け入れをはじめ、ツアー案内やテイスティングなど、さまざまな対応を行っています。英語もOKです 。


マレイユ・シュル・アイ村へ
エペルネの中心地から北東方向に進み、街中を抜けて東に折れると、日本の田園地帯を思わせるような、なんとものどかな地方道に出ます。右手には太陽の光を反射してキラキラ光るマルヌ川の運河がゆったりと流れ、初冬というのに、車窓に差し込む陽射しもポカポカと暖かです。
この東西に流れるマルヌ川の北側にマレイユ・シュル・アイ村があり、その奥には小高い丘が連なり、斜面から麓にブドウが広がっています。



Billecart-Salmon
  ―7代の歴史を持つ家族経営のシャンパンハウス―

17世紀にまで遡るビルカール家ですが、ニコラ・フランソワ・ビルカールと妻のエリザベス・サルモンがシャンパンハウスを興したのは1818年のことでした。
それ以来7代にわたってマレイユ・シュル・アイ村に居を構え、シャンパーニュをつくり続けています。

現当主はフランソワ・ローラン・ビルカール氏で、弟のアントワーヌ氏がフランソワの右腕となり、ビルカール・サルモンを盛り立てています。

自社畑は10.2haですが、他に35のクリュ、合計140haのエリアからブドウを購入しています。そのうち90%は素晴らしい畑が集中するエペルネ周辺20kmのエリアのものです。

年間生産量は約120万本と中規模。
ちなみに、あのモエ・エ・シャンドン社は年間3000万本ですから、規模の違いがお分かりいただけるでしょう。





花のある季節ならどんなにか美しいことか・・・
と思われる見事なフランス庭園 を抜け、まずはオフィスから道を1本挟んだ醸造所へ。


美しいフランス庭園


樹齢200年のホースチェスナット(マロニエ)


Q.シャンパーニュづくりにおけるビルカール・サルモンのこだわりは?
A.まず、“keeping only Cuvee”、つまり、最初に搾るキュヴェしか使用しないことです。

シャンパーニュの場合、4000kgのブドウからまず2050リットルのキュヴェ(Tete de Cuvee)を搾り、そこからさらに“プルミエール・タイユ”と呼ばれる500リットルの搾汁を得ることができますが、ビルカール・サルモンでは、最初の2050リットルの部分しか使いません。

Q.温度管理はどうしていますか?
A.フレッシュさを保つために、12~13℃という低めの温度で3週間かけて発酵を行います。温度はタンクごとにコンピュータで管理し、セラーマスターが毎日チェックします。


右は各タンクの温度を管理するパネル。各々温度表示されてます。

Q.リザーヴ・ワインの使用比率は?
A.約25%です。ブレンド作業は、だいたい1月から6、7月頃にかけて行っていま 」

Q.瓶熟成の期間はどうなっていますか?
A.法律上ではノン・ヴィンテージもの(NV)で15ヶ月以上、ミレジメもの(収穫年記載のもの)で3年以上の瓶熟期間が必要ですが、当メゾンでは、NVは3~4年、ミレジメは8~10年瓶熟させます。この期間は年によっても異なります。



Q.動瓶(ルミアージュ)は手作業ですか?
A.今は機械(ジャイロパレット)があるので便利になりましたが、ミレジムシャンパーニュや、特殊な形をしているボトルは動瓶のバスケットに入りませんので、職人の手によって行います。

手作業の場合は毎日同じ職人が同じラインを担当し、3ヶ月かけて行っています。


ジャイロパレット用のバスケット

Q.貴社のラインナップは?
A.シャンパーニュで9のキュヴェを生産しています。赤ワインも醸造していますが、ロゼシャンパーニュのブレンド用のみに使い、スティルワインの“コトー・シャンプノワ”としてはリリースしていません。

Q.自慢のキュヴェはありますか?
A.醸造所の裏の畑のブドウからつくられる、ピノ・ノワール100%の“クロ・サン・ティレール”(Clos Saint-Hilaire)です。1964年にブドウを植え、1995年ヴィンテージを初めてリリースしました。
わずか1haの単一畑ですが、スロープがいいボディをワインに与え、素晴らしい品質のものができます。この単一畑の個性をしっかりと出すために、門出のリキュールは1gたりとも加えません。ドサージュは0gの、ノン・ノゼです。リリース後20年は楽しめるシャンパーニュだと思います。

Q.クロ・サン・ティレールの生産量はどのくらいですか?
A.年によっても違いますが、だいたい3500本から7500本の間です。今までリリースした年は1995、1996、1998、1999、2000、2002年です。毎年つくれるとは限りません。

Q.ドサージュの量にはこだわりがあるのでしょうか?
A.当社のラインナップの中には、ひとつだけ甘口(ドゥミ・セック)がありますが、それ以外はすべて辛口です。ミレジメものは3~4g、NVは10~12gを目安としています。

Q.主な輸出先は?
A.アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、日本、香港などです。同じアジアでも中国市場はまだまだ難しいですね。




<テイスティングしたシャンパーニュ>

Brut Reserve NV
ピノ・ムニエ40%、ピノ・ノワールとシャルドネは年によって30~35%ずつのブレンドとなるようですが(基本的にはピノ・ムニエ50%、シャルドネ30%、ピノ・ノワール20%とのこと)、1945年以来変わらないスタイルを持つ、ビルカール・サルモンのクラシカルキュヴェ。
コンセプトは“ハーモニーとバランス”

非常に口当たりがよく飲みやすいシャンパーニュで、「アペリティフなどはもちろん、どんなシチュエーションでも気軽に楽しんでください」と、クラウディアさん。


Brut Blanc de Blancs 1998
シャルドネで有名なコート・デ・ブラン地区のグラン・クリュ畑(Avize、Cramant、Mesnil-sur-Oger)のシャルドネを使ってつくられています。Avizeは力強さを、Cramantはフィネスを、Mesnil-sur-Ogerはストラクチャーと長い寿命を与えます。
コンセプトは“生き生きとしてデリケート”

酸がキリリと素晴らしく、ボディはしっかりしているのに、繊細さも持ち合わせています。

クラウディアさんのおすすめマリアージュは、オイスターや魚料理、クリーミーなソースをかけたものなど。

Cuvee Elisabeth Salmon Rose 1998
濃いオニオンカラーを持つ美しいロゼ。これはロゼのプレスティージュで、創設者夫人の名(エリザベス・サルモン)を冠し、1988年に誕生しました。まずシャルドネとピノ・ノワールから白ワインをつくり、マレイユ・シュル・アイ村のピノ・ノワールでつくった赤ワインを少量(8%ほど)加えてロゼ色に仕上げます。
コンセプトは“力強さと複雑さ”

口に含むとものすごいブリュット!酸がとても豊かですが、全体の印象が華やかで、非常にバランスの良いシャンパーニュです。

10~15年ほど寝かせておくことができ、白身の肉料理(チキンなど)からデザート、赤い果皮のフルーツにまで幅広く合わせることができるとのこと。


 
左から、Brut Reserve、Blanc de Blancs 1998、Cuvee Elisabeth Salmon 1998

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インタビューを終えて


マレイユ・シュル・アイ村の畑の格付けはプルミエ・クリュ。グラン・クリュとして有名なアイ村のほんの少し東に位置し、アイ村同様、東西に流れるマルヌ川がブドウにとって非常に良い条件を作り出しています。

テイスティングルームでは、アントワーヌさんともご一緒しました。非常にインテリジェンスを感じさせる、存在感のある人物で、かなりの“切れ者”と見受けられました。彼はすでに次期社長の席が決まっています。

「そうそう、来月に日本に行きますから、よろしく!」

と言って別れた彼と、本当にすぐに東京で再会できましたが、その時はロゼをしっかりと味わわせていただきました。


東京で再会した時のアントワーヌさん


実は、ロゼシャンパーニュこそがビルカール・サルモンのオリジンともいえるもので、NVのコレクションシリーズの中でも、唯一ロゼだけが特別なボトルに入れられています。

ロゼシャンパーニュのつくり方には、7代に渡る秘訣があるとのこと。シャルドネとピノ・ムニエとピノ・ノワールの3種からつくられますが、ピノ・ノワールからつくられた赤ワインを少量加えてロゼ色にします。

そして、ロゼのプレスティージュ“キュヴェ・エリザベス・サルモン”は、口に含むと、複雑で落ち着いた旨味がジワ~っとしみ込みます。しっかりと飲みごたえのあるボディで、どこか妖艶な雰囲気も漂うほど。
大切な夜に飲みたい、そんな印象を改めて感じました。

ビルカール・サルモンのコンセプトは “フィネス”、“バランス”、“エレガンス”



2年ほど前に新しくつくられた、「BとS」をデザインしたロゴマークもこのコンセプトをよく表していて、これを用いたパッケージ(右の写真参照)はとてもスタイリッシュでファッショナブル!

また、2006年の7月には、英国の『デカンター』誌によるNVシャンパン118本のブラインドテイスティングでBrut Reserveが1位の座に輝くという快挙を成し遂げ、このところのビルカール・サルモンの躍進ぶりには素晴らしいものがあります。

これはアントワーヌさんの力によるものが大きいと思われます。その彼がこれからのビルカール・サルモンを統率していくのですから、これはもう目が離せそうもありません。



取材協力:三国ワイン株式会社

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