拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

カマル王子とブドゥール姫の物語の粗筋

2021-06-24 15:21:55 | 日記


ドイツ語で千一夜物語を読む苦行はいつ果てるとも知らずに続いているが(二千ページ余りのうちまだ500ページ行ってない。実際は千一話はないそうだが、私が完読するまでには千一夜以上かかりそう)、つい最近読み終えたエピソードはとてつもなく壮大であった。普通ならめでたしめでたしとなるところでならない。更に次の苦難が振ってわいて物語が続いていく。そして、三代にわたる大河ドラマの締めくくりは怒濤のエンディングであった。これが私にとって苦行なのはドイツ語であること。そして、アンチョコ(ネットの日本語の粗筋)を見ようにも、「Kamr王子とBedur姫の物語」の読み方(イスラム名のドイツ語表記の読み方)が分からない。どうやら、「カマル王子とブドゥール姫」と分かっても、その物語がアンチョコにない。だから、その粗筋をここに記すことは世のため人のためになると信じて行うものである。始めに、因んだ話を書いておこう(長文なので、最後まで読まれない可能性があるので)。文中に、Magier教の信者が登場する。辞書で調べたらゾロアスター教のことだった。ゾロアスター教は拝火教ともいう。なるほど、登場人物は火を拝んでいた。この「ゾロアスター」をドイツ語で発音すると「ツァラトゥストラ」になる。世界史で習ったゾロアスター教と、リヒャルト・シュトラウスの交響詩は、ここで結合するのである(間に、ニーチェの著作が入るが)。では始める。登場人物の名前は、本当の名前で書くとたくさんいて混乱するだろうから(そもそも先の二人以外の名前の読み方がよく分からない)、A王、A王子……で表す。相関図も付けた。

A国をA王が治めていた。A王にはA王子がいた。超美男である。本を読みすぎて、二十歳そこらで「女で身を滅ぼす」という人生訓を持っていて、頑に結婚を拒んでいた(女嫌いである点は私と同じである(ん?いつから?))。またB国をB王が治めていた。B王にはB王女がいた。男嫌いで頑なに結婚を拒んでいた。この二人の王子と王女にはそれぞれ推してくれる魔神がいて、その魔神達の間でA王子とB王女のどっちがより美しいか言い争いになり、じゃあ、並べて比べてみようってことになり魔力によって全然別々の所にいる二人をある晩だけ同じベッドに寝かせた。するとA王子とB王女は恋に落ちてしまった。だが、翌朝はまた元の場所に戻されて離ればなれ。A王子とB王女は恋の病にかかってしまう。その後、あーだこーだがあってA王子は、A王に内緒で国を抜け出しB国でB王女と再会。めでたしめでたし、その後二人は幸せに暮らしましたとさ……にはならない。二人は、A王にも挨拶しなきゃ、とA国(A王子の故国)に向かって旅立つ。ところが、途中ではぐれて離ればなれ。B王女は、女の旅は危ないからと男の成りをして旅を続けてC王が治めるC国に入り、C王に気に入られてC王の娘のC王女と結婚させられる。ところが、B王女がちっともC王女に手を出さない。C王女は不満(なんでしてくれないの?)、C王も怒り心頭(娘のどこが不満なのだっ)。このままではまずいと思ったB王女は密かに秘密をC王女にばらし(あたしホントは女なの)、C王女も事情を察して二人は仲良しになる。そのC国に、あーだこーだで方々を彷徨った末にA王子がたどり着き、離ればなれになっていたB王女と再会。B王女はC王に事情を明かし、C王は、いったんB王女に娶らせたC王女をA王子に娶らせた(あらま。A王子にはB王女がいるのにな。「砂の惑星」で、パートナーのいるポールが皇帝の娘を娶ったことを思い出した。イスラムだから一夫多妻ってことか。そもそもA王子の父A王には正妻4人のほか「Beischläferinnen」(側室。直訳すると一緒に寝る女性)が60人いた。これだけの数だと、公平に愛を配分しようと思ったら1日二部屋を訪問しなければ間に合わないだろう。光源氏の数倍の精力を要する計算である)。その後、A王子とB王女の間にはD王子が生まれ、A王子とC王女との間にはE王子が生まれたてめでたしめでたし……にはならない(まだ物語は半分くらいである)。普通の物語だと、それぞれの母親は自分が産んだんじゃない方を邪険に扱うのだが、全くそうではない。B王女はE王子に、C王女はD王子に並々ならぬ愛情を注ぐ。私、最初に読んだとき、ドイツ語で理解が難しいこともあって、血がつながってなくても麗しい親子愛が培われたのだと思った。さにあらず。この愛情は「邪な愛情」であったのである(このあたりが「千一夜物語」である。以下、この愛を「横恋慕」という)。そのことが、互いの夫であり二人の男子の父親であるA王子にバレそうになったので、二人の母親は、若い男子が自分達にちょっかいを出したとウソをつき、怒ったA王子は家来に二人の息子の処刑を命じる。だが、若者を不憫に思った家来が二人を逃がし、二人は放浪の旅に出る。そして二人はF王が治めるF国に着いた。だが、そこで二人は離ればなれになり、D王子は、Magier教の信者某に「儀式の生け贄用」として捕えられ、船に乗せられるが、船は大風にあおられてG女王が治めるG国に流れ着き、そこでD王子はG女王に見初められる。だが、あーだこーだの末、D王子はF国で再び某信者の囚われ人となる。他方、E王子は、あーだこーだの末、F王に気に入られてF国の大臣になっていた。そして、E王子が町を巡回しているのを見た某信者の娘(密かにD王子に思いを寄せていた)が、D王子を外に連れ出しE王子に引き合わせた。D王子とE王子は再会を喜ぶ。さあ、ここからは怒濤のエンディングである。F国に大軍が迫った。それはG女王が率いる軍勢であった。G女王はD王子がこの地で囚われているとの情報を入手し、救出に来たのである。さらに別の大軍が迫った。それはB王が率いる軍勢であった。B王は、A王子と共に旅に出たまま行方不明になったB王女を探していたのである。さらに別の大軍が迫った。それはA王子の軍勢であった。真相(自分が処刑を命じたD王子ととE王子が無実であること)を知ったA王子はD王子とE王子に詫びるために二人を探していたのである。さらに別の大軍が迫った。それはA王の軍勢であった。A王は、失踪したA王子を探していたのである。期せずして一族三代が勢揃い。D王子はG女王と結婚し、E王子は某信者の娘と結婚し(この娘はD王子が好きだったはずだが)、それぞれ王様になった。ここに至って初めてめでたしめでたし、老後は互いに訪問しあって仲良く暮らしましたとさ。因みに、物語のタイトルにもなったB王女(ブドウール姫)は、横恋慕事件の真相がばれてからはA王子の愛を失い、大団円の後、父のB王と共にお里(B国=中国)に帰って行った。同様に真相がばれてA王子の愛を失ったC王女についてはその後語られることはない。