カセットテープのデータ化作業をしていたら、20代のとき所属していたSM合唱団(下手に歌うと女王様がムチでびしばし叩く合唱団(ウソ))の演奏会の録音がぞろっと出てきて感慨もひとしお。その中で、カリッシミのオラトリオ「イェフテ」が2回出てきた。10年くらいの間に2度もやったんだなぁ。私がこの曲を合唱の一員として歌ったのは、この2回のほか学生んときの室内合唱団でも歌ったんで合計3回。その思い出を記す。
室内合唱団の定期演奏会んときの「イェフテの娘」(ソプラノ)は市川倫子さん(指揮者先生のつてでお願いしたに違いない)。当時楽譜係だった私は楽譜のことで直接お電話でお話をしたのだが、バカ学生相手にほーんとにご丁寧に応対してくださった。この方が、日本で「ナクソス島のアリアドネ」を初演した際にツェルビネッタ(超々難役。グルベローヴァが十八番にしていた)を歌われたえらーい方だと知ったのは卒業後だいぶ経ってからである。もちろん、素晴らしい「イェフテの娘」だった。♪ファソラソファミレドシードレミ、ド、シーラー……。残念ながら、このときの録音は見つからない。
SM合唱団の1回目のとき「イェフテの娘」を歌ったのは、「われらがディーヴァ」Y内さん。Y内さんはプロの歌手なのだが、どういうわけか、SM合唱団に団員として所属されていた。このときの録音が出てきたのである。Y内さんの「イェフテの娘」は、数十年前の記憶が頭の中で増幅しているはずなのに、その増幅した記憶を上回る素晴らしさ。こんなにすごい歌手がよくぞ私らごときと一緒に合唱団で歌ってくれたものである(それを言ったら、Hヶ崎さんが麹味噌合唱団でご一緒してくださったことも驚きである)。因みに、このとき、イェフテの娘のエコー(上記の♪ファソラソファミレドをイェフテの娘の後になぞる)を歌ったのが、現在いろんな音楽の場でご一緒しているS崎さんである。録音を聴くと、まさに今に通じるS崎さんの声である。
SM合唱団の2回目のときの録音も出てきたのだが、このときY内さんは既に団を離れていた。団員の入れ替わりもあった。そのせいもあったろうか。1回目よりかなり落ちる。つうか、今回、SM合唱団の演奏をずーっと聴いていて、時代が下るにつれレベルが下がってきている。この後、団を主宰してきたオルガニストの先生(ご本人の希望で団員は先生と呼ばずにさん付けで呼んでいた)が団を辞められた。理由は、団主催からくる負担が限界に達したいうことだった。たしかに、主催には有形無形の負担が降りかかってくる。それでも、それを上回る喜びがあれば続けられるものだ。前記した「レベル低下」がモチベーションに影響したのかもしれない、というのが、今回録音を聴いた私の見立てである。
因みに、このオラトリオはアルトのレチで始まるのだが、私はこのレチが最初に室内合唱団で聴いたときから大好きで、いずれ自分でもカウンターテナーで歌ってみたいと思っていた。で、近年、某ソロ・コーナーや某セッションで歌う機会を得たのだが、満足に歌えた試しがない。