横野好夫です。O姫がメンテのため短期入院。入院先は、ちゃんとした人がちゃんとした楽器を診せにいくちゃんとした工房。そういうちゃんとした所に私のようなちゃんとしてない人間が行くのは憚られたが、O姫自体は元はと言えばマリゴ家という由緒正しい旧家の出身である(その後、身を持ち崩して私の元に来たが。因みに、来週の朝ドラでは、ヒロインのクラスメイトだった元華族様が登場する模様である)。
その工房の主人(とっても親切)が、私に「高いレはどういう指遣いで出してますか?」と聞く。その指遣いによって調整が違ってくるらしい。よかった。私は高いレまでは出している。これが高いミだったら答えられないところであった。
O姫の入院中は影武者にがんばってもらう。
この影武者、生まれは平民の家であるが、何処の馬の骨とも分からなくはなく、一応、お里が知れている。その点、ウチにいる鞍属のベー姫(旧家出身)の影武者(お里知らず)よりはずっとましである。しかも、大吠属の姫で最初にわが家に来たのはこちらである。大吠を一度触ってみたくて、どうせちょっと触るだけだからと家名を気にせず安く購入したのだが、これが箸にも棒にもかからなければそれで終わったのだが、思いのほかいい音が出る。すると欲が出てきて、それで旧家出身のO姫を迎え入れた次第である(そのときO姫はもう身を持ち崩していたから、家の名前からすれば格安であった)。その影武者であるが、久しぶりに吹いてみたらかなり良い。ウチに来た当初、いろいろ不備があったが(だからO姫を迎え入れたのだが)、今回、ほとんど気にならない。当初の不備は結局私の腕の問題であったか(そりゃそうだ。そのとき私は初めて大吠に触ったのだから)。家のせいにした私は間違っていた。平民出身でもちゃんと扱えばそれなりに使えることが分かった。リードについても同じである。当初、5枚一組の安い輩が箸にも棒にもかからないと思って、どんどん高いヤツを買い足していったのだが、今回「安い輩」がそこそこ鳴るのでびっくりした。考えてみたら、家柄を言ったらそもそもの私が影武者嬢とどっこいどっこいである。家がどうのと言える立場ではなかった。
O姫をドックに入れたのは、とある本番にO姫で出演する話(既述)が、どうやら夏の夜の夢で終わらずホントになるかもしれないので、焦って、できることは全部しとこうと思ったからである。
短期入院で思い出すのは亡き母のこと(がらっと変わって次は人間の話である)。ペースメーカーの電池の交換のため入院したとき、当初は二泊の予定だった。ところが、入院した翌日病院から電話があり、母が病院内を徘徊して手に負えないから今日にも引き取ってくれ、ということだった。だから引き取った。え?じゃ、もともと一泊でも足りたの?とも思ったが言わなかった。その電池について言われたのは、「これまでペースメーカーはあまり動く必要がなかったみたいなので(え?じゃ、もともとなんでペースメーカー入れたの?と思ったが言わなかった)、電池の電力をしぼって10何年持つようにした」ということだった。母が亡くなったのは、その半年後である。そんなこんながあったので、私は、ペースメーカーだけは生涯何があっても絶対入れないつもりである。
因みに、写真に写っている黄色いメガホンのようなブツは、メガホンとは逆で、歌用の消音器である。