拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

ヨアヒム・ヘルムスのロドルフォ

2016-01-31 18:31:15 | 音楽
(承前)前回のブログ記事、一つ訂正。「冷たい手」の歌い出し(Che gelida manina)、ヴンダーリヒはドイツ語で「Wie eiskalt ist dein Haendchen」と歌ってる、と書いたが、「dein」ではなく「dies」だった。つまり、冷たいのは「君の手」ではなく「この手」だった。さらに検索してたらこの部分が「Ihr」になってるのがヒット(これだと「あなたの手」になる)。なんだろう、と思ってクリックしたら、ヨアヒム・ヘルムス(Joachim Helms)って人がこのアリアを歌ってる映像が出てきた。こんな人、知らないぞ。聴いてみよう。おっ、ヴンダーリヒを少し重くした感じでなかなか美声。え?これいいじゃん。いい、いい。おおっ、かっこいい。なんでこの人を知らなかったんだろう。ということで経歴の洗い出し。Wikiには情報がない(日本語版はもちろんドイツ語版でも)。かろうじていくつかのサイトで情報をゲット。それによると、1980年代に主にドイツ国内(エアフルト、ドレスデン)で活躍したそうだ。ドイツ国外でも歌っているが、ヨーロッパに限られた模様。それで、日本では知られてなかったんだな。ドイツ・アマゾンで検索しても今売られてるCDはない。71歳で亡くなったときのエアフルト歌劇場の追悼文にはklangvollな(響きの豊かな)声だった、とある。いやあ、こういう人(すごいのになぜかワールド・ワイドにならない人)っているんだなー。私が子供の頃、ジルダ(リゴレット)で感動したソプラノのルイーズ・ラッセルも、ほっとんど情報がないもんな。

まさかの「オクターブ下げ」

2016-01-31 11:46:52 | 音楽
ネットで「冷たい手」を検索してたら、ヨナス・カウフマンの「冷たい手」の映像が出てきた。へーえ。ドイツ人がこのアリアを歌うのは珍しい。美声のフリッツ・ヴンダーリヒがドイツ語で「Wie eiskalt ist dein Haendchen」と歌ったのは聴いたことがあるが、カウフマンはヘルデン・テナーだしなー。でも、この人、ドン・ホセも歌うし、イタリア・オペラもよく歌うというから不思議はないか。で、聴いてみた。このアリアはパヴァロッティのリリックな声で慣れ親しんでるせいもあるが、それにしても重い声だ。まあ、こういうのもありか、と聴いていたら事件が起きた。「la speranza」(ハイC(ジュースではない)が出るとこ)、な、なんと、まさかのオクターブ下げ(NHKホールで、N響のコンサートにゲストで出たペーター・ホフマンがヴァルターの「懸賞の歌」(マイスタージンガー)を歌った時、高い「ラ」をオクターブ下げて歌ったことを思い出した)。この映像は、CD録音の様子。きっと、これはリハーサルだったんだろう。オペラ歌手は、リハーサルでは声を余り出さず、高音はよくオクターブ下げて歌うから……。さて、「冷たい手」がらみで検索してたらすごい歌手を見つけた。その話は次回。

クライバーの魔法(冷たい手)

2016-01-30 10:45:53 | 音楽

(承前)舞台が半分しか見えなくても、オケピットを全部見おろせたのはなんともラッキーだった。クライバーの指揮がまるまる見えたのだ。だもんで、クライバーばっかり見てた。で、第1幕も終盤、いよいよロドルフォが「Che gelida manina……」(なんと冷たい手……)と歌い出す。ドヴォルスキーも名歌手だが、びっくりぽんだったのはクライバーの音楽作り。普通の指揮者だと、終始叙情的にゆっくり音を運ぶのだがクライバーは違った。「Chi son?」(私は誰かって?)から「Vivo!」(なんとか)生きてます)まで、目もくらむほど早い。だから「E come vivo?Vivo!」の部分のオケの三拍子(写真参照)が際立つ。こういう風に全体を見渡して、大きなところでつかんでるんだねー。ところがその直後、ヴァイオリンでミラドと入るところ(写真の右端)で一転する。壊れそうな優しい音。で、「l'anima ho milionaria」(魂は億万長者)の所で前半のクライマックス。このときの東京文化会館のオケピットから五階の席まで垂直にわき上がってきた豊穣な音塊を忘れることはできない。あ、そうか!「億万長者」だから豊穣な音なんだ。もちろん、プッチーニがそういう風に書いてるんだけど、それをクライバーだからこそ再現できたんだ。やっぱりクライバーは魔法使いだ。

舞台が半分しか見えない

2016-01-30 10:32:24 | 音楽
クライバーの「ボエーム」だったら分かるけど、と言われそう。普通、「冷たい手」(プッチーニのオペラ「ボエーム」の中のアリア)には「パヴァロッティの」といった具合に男声歌手の名前が付く。たしかにパヴァロッティのロドルフォは最高だ。が、私はあえてクライバーの「冷たい手」と言いたい。生で聴いたのはスカラ座の来日公演。主役二人はフレーニ&ドヴォルスキー。場所は東京文化会館で、私の席は5階ライトの一列目。舞台は半分しか見えなかった。ヨーロッパの古いオペラハウスのボックス席のようだ。あちらはオペラより社交が大事だったから、向かいのボックス席の人と挨拶ができればよかったから舞台なんか見えなくてもよかったのだ。大昔、ウィーンの国立歌劇場(現地)に行った時、ボックス席の2列目でやはり半分しか舞台が見えなかった(が、レオノーレを歌ったギネス・ジョーンズの声はびんびん聞こえた)。3列目もあって、現地の人らしき年輩のご婦人が座ってた(舞台が見えないのでぶんむくれた)。カーテンコールになったら1列目の人たちが、前においで、と呼んでくれた。そういえば、最近、日本のどこかの新しいホールで舞台がよく見えない席ができちゃったとかで設計士が自腹で改修するというニュースがあったっけ。本題(クライバーの「冷たい手」)に行き着く前に字数がいっぱいになってしまった。クライバーの話は次回に続く。

早めの引導

2016-01-29 12:20:28 | 日記
「アサが来た」の大番頭さん、逃げた女房のところに行くとなると、ウメは諦めるしかない。同じく(?)、通販で紹介していた包丁(3本セット)、もう調理器具は買わない、でも包丁はなぁ~、いいのがあったら欲しいなぁ、とか思ってるところにそそる商品、どうしよう、そしたら価格が19800円。無理。即断念。ありがとう、これがもし9980円とかだったら一日悩むところだった。早めに引導を渡してくれた。

シェローのリング

2016-01-29 11:07:15 | 音楽
最近、ブーレーズも逝った。私にとってブーレーズといえば、1970年代後半のバイロイトのリング(ヴァーグナー)。演出はシェローで、指揮&演出がフランス人コンビだった。オケの面々は、初め、え~?フランス人が振るの~?という態度だったが、スコアが全部頭に入っていたブーレーズにびっくりぽんで以後尊敬したという。シェローの演出もダムが出てきたりして当初物議を醸したが、最後は「名作」ということで落ち着いた。歌手では、ブリュンヒルデを歌ったギネス・ジョーンズがビブラートをびんびん効かせて(うぁうぁうぁうぁあああ~)馬力勝ち。ジャニーヌ・アルトマイヤーも情熱的なジークリンデで(性欲が強そうとも言う)よかった。問題は男声陣だ。ジークフリートはマンフレート・ユング。ユングは80年代に入ってもこの役を歌い続けたが、ブーイングの格好の的だった。この人を生で聴いたときは(N響の大地の歌)、印象が薄かった。それから神々の長ヴォータンを歌ったのはドナルド・マッキンタイヤー。この人、人相が神様っぽくない。いや、いい歌を聴かせてくれるなら人相などどうでもいいのだが、その歌い方が気に入らない。ウィーンで生で聴いたときの印象が悪かった(フィデリオのドン・ピッツァロ)。なよー、なよーって感じで。私的にはドン・ピッツァロはもっと鋭角的に歌ってほしいのだ(テオ・アダムでずっと聴いてたせいもあるが)。カーテンコールでも両手を頭の高さに掲げて拍手に応える様が変だった。因みに、往年の大歌手、ハンス・ホッターは見るからに神様然としていて、しかも(ドイツ人らしい)真面目な性格で、一度、舞台の山からすべって転げ落ちて舞台から見えなくなったのだが、必死によじ登って戻ってきたそうだ(猫だったら毛繕いとかしてごまかすところ)。

バルトロのフルート

2016-01-28 14:57:51 | グルメ

サンマは毎度塩焼きでは芸がないのでぶつ切りにしてトマト煮。圧力鍋で30分煮たら骨まで食べられた。これはいい。カルシウムをばっちり摂れる(が、内臓はとった。焼くときは内臓も食べる。これがおいしい)。イカスミのスパゲティーは、タマネギとニンニクとトマトを炒めたものにレトルトパックのイカスミを和えてソースを作った。昨夜はスペインワインということで、なんとなく併せたのが以上の料理。このワイン、「La Flauta de Bartolo」(バルトロのフルート)という名でラベルの絵はまさにバルトロ(らしき人)が笛を吹いている様子。バルトロと言えばフィガロの結婚とセヴィリャの理髪師しか思いつかない。そこでのバルトロは若い女性を妻にしようと画策するひひおやじ。だが、ラベルのフルーティストは格好いい。裏ラベルには「rock star」と書いてある。スペインにはバルトロというロック・スターがいるのだろうか(いても不思議はないが)。

ベックメッサーのような審査員

2016-01-28 10:34:39 | 音楽
(承前)そういうわけで、「久保陽子」という名が子供だった私の脳裏に深くインプットされ、その名演奏の思い出は決して忘れたことはないのだが、その後演奏を聴く機会はなく、経歴も全く存じ上げないまま今日まできた。今回、自分のブログに触発され(世話ない)Wiki情報を読む。びっくりぽん。奄美大島のご出身で、貧しかったのでお父上の手作りのヴァイオリンを弾いていたら嵐で偶然島に立ち寄ったヴァイオリニストに見出され「東京に来い」。だが当時沖縄はアメリカ領だったので自由に出国できない。そこでご両親が離婚し、母親の故郷である鹿児島に帰る、という形で出国したんだと。へーえ。五嶋ミドリさんとは逆ルートですね。その後、チャイコフスキー国際コンクールで第3位に入賞、パガニーニ国際コンクールで第2位に入賞等々の輝かしいご経歴。ところで、パガニーニ国際コンクールの際はこんなエピソードがあったそうだ(ただし、Wikiで「検証不足」という注釈が付いてる)。審査員の中に一人日本人がいた。コンクールに挑む人は審査員に教えを請うのが普通なのに久保さんはあえてそれをしなかった。その審査員は怒って辛口の批評をし続けた……まるでベックメッサー(ヴァーグナーのオペラの登場人物)だ。はたまたベックメッサーに擬されて怒ったハンスリック(ヴァーグナーの悪口を書き続けた「高名な」批評家)ってところか……が、外国人の審査員の高評価によって結果的に第2位に入賞されたという。

県立音楽堂の無料音楽会(大昔)

2016-01-27 12:02:55 | 音楽
(承前)考えてみれば、そのマズア&ゲヴァントハウス管のチケット代、そこそこの値段がしたはずで、私の小遣いで買えるはずはないのだが、どうやってゲットしたのだろう?誰かにもらったのだろうか?(大学生のとき聴きに行ったオーマンディ&フィラデルフィア管は、一緒に行った神戸の髭さんがタダ券を下さったことをはっきり覚えている。感謝)。そんな私にとってとてもありがたかったのは、県立音楽堂が月に一度開いていた無料の音楽会。毎回休憩中に事務所に行くと次回のただ券をくれた。私が中学生のときだった。演奏家は国内のそうそうたるメンバーだった。まず、安川加壽子ピアノ・リサイタル。これは私が最初に行ったリサイタルだったと思う(曲目は忘れた)。それから霧生トシ子ピアノ・リサイタル。本編の曲目は忘れたが、はっきり覚えてるのはアンコール。霧生さんがとってもよく通る声で「英雄ポロネーズを弾きます」とおっしゃった。それから久保陽子ヴァイオリン・リサイタル。これは曲目もはっきり覚えてる。シューベルトのソナチネ、ベートーヴェンのクロイツェル、そしてフランクのソナタ。素晴らしかった。ところで、県立音楽堂の最寄り駅は桜木町駅。横浜市チベット区に住んでいた私にとっては電車旅でたどりつく「都会」だった。で、あるとき、学校で、体育の先生に「お前、夜遊んでるな。なにしてたんだ?」と言われた。どうやら、「都会」を歩いているのを見られたらしい。でも、先生は音楽会に行ったのではないようだ。私は「ファッションショーを見に行った」と答えた。その先生に見られたらしい日は、複数の声楽家が原色のドレスを着て入れ替わり立ち替わり舞台に現れたので、思わず「ファッションショー」と答えたのだ。先生こそ、何してたんだろ?

クルト・マズア

2016-01-26 11:04:15 | 音楽
少し前、指揮者のクルト・マズアが亡くなった。マズアと言えば、「ベルリンの壁崩壊」直前にライプチヒで民衆側に立って「戦車の前に立ちふさがった」等の英雄伝が語られる。が、私としては、「ドイツではこの行動が『日和見』と見られ非難されている」との音楽雑誌の記事を読んでいたので、複雑な気持ちだった。それまで東ドイツ当局に優遇されていたわけだし。しかし、マズア側に立てば、それまでの「高い地位」を活かして当局にはたらきかけたからこそ民衆への弾圧を防ぐことができた、と言えるかも知れない。私が初めて生で聴いた外来オケは、10代のときのマズア指揮のゲヴァントハウス管弦楽団だった。神奈川県立音楽堂のステージに所狭しと大男たちがあふれていた。ベートーヴェンの第4交響曲の演奏中、私の前の席のどっかのおやじがつれの女性に「ここが展開部」等々と講釈を垂れているのがじゃまだった。当時、県民ホールはもうできてたかなー?県立音楽堂は音響が良くて有名だった。ここに比べれば東京文化会館は……と言われていたが、NHKホールができた後は、東京文化会館は一転音響のいいホール、ということになった。その県立音楽堂で、私は吹奏楽の「運命」の指揮をしたことがある。これは履歴書に書ける事実だ(履歴書には出来がどうだったかなんて書かなくていいし)。ちなみに、バスの岡村喬生氏は、「デル・モナコと共演」と言ってイタリア留学を勝ち取ったそうだ。岡村氏が歌ったのはモンターノという脇役だが「共演」したことには間違いない(と、ご本人が書かれている。映像も見ることができる)。

ぜーぜー(5声の真ん中)

2016-01-25 15:56:27 | 音楽
ファルセットの低い音を鍛える、と決心……したつもりだったが……某合唱団(ルネサンスのアカペラの曲中心)の5声の真ん中のパートを担当しているのだが、曲によってはこの真ん中の声部の音域が(アルトにしては)滅法低い。ト音記号で下線を三つ引いたあたりのミだとかファだとかが出てくる。それでも「ファルセット」でがんばると決心したもんだから、ぜーぜー言いながらがんばっていたのだが、あっという間に白旗(大戦で最後まで抵抗して被害を拡大した日独と違い早々に白旗を揚げたイタリアのよう)。指揮者に「下の方、男の声でいいですか」「どうぞ」。回りの方々も口々に「それがいい」。ぜーぜーを見るに見かねていたようだ。古楽の5声の真ん中は、現代の声域にてらすと、テナーにしては高すぎ、アルトにしては低すぎることが多い。某重唱団(私はアルトが欠席したときだけ臨時に参加する)でもこのパートは嫌がられ、みんながおしつけあうそうだ。

採点はお静かに(マイスタージンガー)

2016-01-24 12:52:14 | 音楽
某合唱団の練習の帰り、団員で音大の先生をやられている方とお話をする。今、学内の実技試験(ピアノ)でお忙しいとのこと。長時間聴いていなければならないので大変だそうだ。聴きながらメモをとるのだが、それも静かにやらなければいけない……そうか、それが当たり前なのだ。すると、歌の試験官を務めたベックメッサー(ヴァーグナーのマイスタージンガーに出てくる市役所の書記)は、自分が試験官として落第だ。この人、試験に挑むヴァルターの歌の最中、間違いがあるたんびに黒板に書き込んでいく。その際、「かしー」と大きな音を立てる。めげずに歌うヴァルター、落第だと騒ぐマイスターたち、回りで楽しげに歌う徒弟たち。これらがからみあい、大盛り上がりで第1幕が終わる。ミュンヘン・オペラの公演をNHKホールの最上階で聴いたとき、第1幕が終わってあまりの感動で見知らぬ者(といっても安いチケットを買うため並んでるとき見かけた顔ばかり)同士で顔を見合わせたものだ。因みにここまで1時間半(短いオペラならこれで終わり)。この後、第2幕(1時間)、第3幕(2時間)が続く。音大の先生との会話からこんな話になり、練習中、スェーリングで楽しんだはずが、帰宅時、頭の中はヴァーグナーでいっぱいになってた。

よっ

2016-01-24 12:48:17 | 
わが家では猫に対する「ごはんだよ」は「よしっぽぽ」。ちょっと試し。この語句をどこまで発音すれば反応するか?まず「よっ」(「嫁にこないか?」ではない(朝ドラの亀助ではない))「……」。「よしっ」「……」。「よしっぽぽ」「にゃ~」。頭いい!ちゃんと言葉を認識している♥

やらせ反応

2016-01-23 14:38:26 | 日記
国会中継で、どっかの議員が質問に立ち「これこれこーなんです」「え~~~?」「さらにこうなんです」「え~~~?」。「え~~~?」はお仲間と見受けられる。やたらに声が揃っている。同様の風景を思い出した。テレビのヴァラエティ番組で、タレントがなんか言うたびに「がはは」の大笑い。画面に映っていないスタッフの仲間受け。いい感じはしない。特に土曜日の競馬中継がひどい(この番組自体は結構好きなのだが)。この「がはは」、とうとうNHKでもやるようになった。