拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

ホラーじゃないじゃん(シックスセンス)

2024-06-10 17:29:33 | 映画

私は、ホラー映画が苦手である。「怖い物見たさ」もない。とにかく、怖い物は見たくないのである。だから「ホラー」にジャンル分けされてる「シックスセンス」はスルーしてきた。だが、ネットの「○○映画ベスト10」とかでよくノミネートされる。おりしも、BSで放送していたので、意を決して見た。見たせいで寝付けなくなったらどうしよう?と心配しながら(以下、ネタバレあり)。

すると、やはりホラーだ、音楽がホラー特有の不協和音だ、でも、その不協和音の音楽が一番高まったときにお化けが出てくることが分かったから心の準備はしやすい、しかも、お化けのメイクが若干昭和だから(制作時期は平成だったけど)心臓が止まるほどには怖くない……とか思いながら見て行くと、あれ?なんだか心が熱くなってきた。

最初に熱くなったのは、少年が少女の幽霊の話を聞いてやって、幽霊が本懐を遂げたとき。

次に熱くなったのは、少年が母親に真実(幽霊が見えること)を打ち明け、そのおかげで母親とそのまた母親とのわだかまりが解けたとき。私は、これこそが噂のどんでん返しだと思って、なんだ、全然ホラーじゃないじゃん、胸熱ドラマじゃん、と思った。

ところが、その後、主人公のブルース・ウィリスが寝ている妻に語りかけたとき、なんだか怖い雰囲気になって、やっぱりホラーだったか、見なきゃよかったになるのか、と思ったら、それこそが真のどんでん返しで、最高に胸が熱くなった。やっぱりのやっぱりホラーじゃなかった、超感動ものであった(ここんとこのネタバレはやめておきましょ)。

監督は、インド出身の人だった。今朝、「あさイチ」でインドのことを特集していて、映画のことも紹介してて、紹介された「バーフバリ」をプライムで見た後に「はしご」で見たのが本作だったから、インドな一日だった。

タイトルの「シックスセンス」は、「第6感」のことだろうか?ホラー映画なら「第6感」は相応しいな。でも、「シックス」は「6」であって「第6」ではないな、おかしいな、と思ってたら、原題は「The sixth sense」で、ちゃんと「the」も「th」も付いていた。だから、正確に言うならば「ザ・シックスス・センス」である(「th」を「ザ」「ス」と表記せざるを得ないことの悩ましさはもちろんある)。

少年を演じたハーレイ・ジョエル・オスメントは、当時「天才子役」と言われてたそうで、「A.I.」にも出てた。現在は別人である。

ブルース・ウィリスが主演した「24」を私が知ったのは、深夜、うたた寝をしてる間につけっぱなしのテレビから流れていたときで、寝てる耳に入ってきた音声からレム睡眠時の脳は宇宙ものと誤解した。その誤解のおかげで見る気になり(SF好きなので)、見てみたらSFじゃなかったけど面白かった。

ブルース・ウィリスの前の奥さんのデム・ムーアを最初に見たのは、「ゴースト」でも「ア・フュー・グッドメン」でも「幸福の条件」でもなく、なんと「絶叫屋敷にいらっしゃい」である。超おバカな映画で好きである。


「シンデレラマン」「ミリオンダラーベイベー」「あしたのジョー」

2024-05-21 13:10:12 | 映画

共に、公開後20年くらい経つが、「シンデレラマン」と「ミリオンダラーベイベー」は見てこなかった。タイトルの一部の「シンデレラ」と「ベイビー」がなんだか子どもっぽく感じられたからかもしれない。このほど、動画配信が奨めてきたので見たら、あらま、どちらも大変な名作、感動作であった。以下、それぞれの主人公の似てるところと違うところをまとめてみた。ついでに「あしたのジョー」のことも書いてみた。

【似てるとこ】
・主人公がボクサーであること
・主人公がアイルランド系であること
・勝ち続けるまでは貧乏だったこと
・どんどん勝っていってクライマックスでタイトル戦に挑むこと
・タイトル戦の相手がとんでもないクズであったこと(なお、シンデレラマンの実際の対戦相手はいい人だったそうである。映画でクズに描かれてしまってご家族はお気の毒である)
・良いコーチ又はマネージャーに恵まれたこと

【違うとこ】
・一方は実話で他方はフィクションであること
・一方は男性ボクサーで他方は女性ボクサーであること
・一方はタイトルを獲得し他方は獲得しなかったこと
・一方は家族愛に恵まれ他方は恵まれなかったこと
・一方は充実した後半生を過ごし他方は安楽死を迎えること
・一方はアカデミー賞を獲らなかったが他方は獲ったこと

【あしたのジョーとの比較】
これら二作同様、「あしたのジョー」もボクシングを通じてどん底からはい上がる話である。丹下段平というコーチに出会ったことも、クライマックスで強敵とのタイトルマッチを迎える点も同じである。その試合の相手(ホセ・メンドーサ)が紳士である点はどちらとも異なる。タイトルを取り損なう点は「シンデレラ」とは異なり「ベイビー」と同じ。問題はその後である。矢吹ジョーがメンドーサとの試合直後に死んだかどうかについては説が分かれる。死んだんなら「ベイビー」同様悲劇の結末であるが、死ななかったのであれば、パンチドランカーの症状が現れていたから生活に支障が生じたとしても白木葉子がサポートしただろうからまあまあ胸をなで下ろせる結末である。事実、原作の梶原一騎が作画のちばてつやに伝えたラストシーンは「白木邸で静かに余生を送るジョーと、それを見守る葉子の姿」だったそうだ(ウィキペディア)。それを、ちばてつやが「まっしろに燃え尽きた矢吹ジョーの姿」に変えたそうだ。もし、原作者の原案通りに世に出てたら梶原一騎原作としては異例である。梶原作品の終わり方はたいがい身も蓋もないものだから。

【おまけ】
・体を張ったヒロインがアカデミー賞の主演女優賞をとった点は「哀れなるものたち」と同じ(ただし、体の張り方が違うが)。
・シンデレラマン一家の生活困窮ぶりを見てしまったら、もう「私は貧乏」などと言えない。
・「シンデレラ」の正しい発音は「シンダーエラ」である。そういう名称の女性アイドルグループがあるそうである(今、確認のためにググったら出てきた)。
・同様の映画に「ロッキー」があって、こっちは公開時に見た。と言っても、タイトル戦が終わって、勝って「エイドリアン」と叫んだのか負けて叫んだのかは覚えてない。よく覚えてるのは、牛肉を保存する冷凍庫の中でトレーニングしていて、その冷凍庫の所有者である友達がその場で牛肉を分厚くカットして「喰え」と言ったこと。ああ、私も、牛肉切取放題の環境で赤ワインを飲みたい、と強く願ったものである。
・「比較」と言えば、葉っぱや花による似た植物の比較(ネットでググると出てくる)は大変役に立つ。他方、当ブログの今回の比較は(いつもと同様)なんの役にも立たないことはよく承知している。世間様に対して大変お気の毒である。


ダッシュするゴジラ~外国人レスラーたち

2024-04-27 07:08:39 | 映画

ゴジラのどこが好きかと聞かれたら、威厳のあるところと答えている。その威厳は、直立二足歩行で、かつ、伊福部昭の重厚な音楽に乗ってゆっくり進むところにある、と思っている。それは、ジャイアント馬場にも通じる。晩年のジャイアント馬場は、そのスローモーな動きがファンを魅了したものである。ところが、ハリウッド製ゴジラの新作「ゴジラ×コング 新たなる帝国」 の予告篇に気になるシーンがある。ゴジラがコングと並んで陸上選手よろしくダッシュしてるのだ。まさにこのポスターの絵である。

これはもしかすると、見てがっかりするパターンかもしれない。「ゴジラ-1.0」の山崎監督が、今作の感想を聞かれて「モスラが素晴らしかった」と言いながら肝心のゴジラについて触れなかったところも気になる。だが、私は、ゴジラとスターウォーズの新作は映画館で見る、と誓った身(誰に誓ったのか?と言えばそれはお天道様である)。見に行ってきた(以下、粗筋は言わないけれど、ディーテイルのネタバレはあり)。たしかにゴジラはコングと一緒に走っていた。腕をふっていたかどうかは定かでないが、ふっていたと思わせるような陸上短距離選手の走りであった(ポスターではふってるっぽい)。ハリウッド製のゴジラはこれだから困る、そこへいくと国産のゴジラは……などと言ってはいけない。東宝作の昭和のゴジラだって、飛び上がってシェーをしたこともある。逆に、ハリウッド製だって前々作の「キング・オブ・モンスターズ」のゴジラは威厳の塊であった。まあ、今作のゴジラは荘厳なゴジラではなかったが、迫力のある映像で、2時間余りを退屈することなく過ごしたのだから行って損はなかったのはたしかである。

ゴジラは走るだけではない。ジャンプする。ジャンプで意表をつかれたのは「スターウォーズ・エピソード2」のヨーダ以来である。あそこでのヨーダは、ドゥークー伯爵とライトセイバーで切り結ぶ際、身長差をカバーするためしきりにジャンプしていた。

他にスターウォーズとかぶるのは、損傷したコングの右腕に補助器具が取り付けられたところ。ルークスカイウォーカーも、そしてその父アナキン・スカイウォーカー(後のダースベイダー)も、損傷した右手は義手である。

戦い終えたゴジラはローマの円形コロシウムで寝込んでしまうが、あんなところで寝られてはローマ市民には相当な迷惑だろう。いつ起きて暴れ出すかもしれないのだから観光客が来るはずはない……それとも怖い物見たさで来るのだろうか。因みに、「シン・ゴジラ」ではゴジラは都心で寝込んでしまったが、あっちは体内が凍ってしまってるからいくぶんは安心である。その後、どうなるんだろう?と思ったが、東宝がその後作った「ゴジラ-1.0」は設定が異なるから、都心で凍ったゴジラの行く末は不明なままである。

怪獣が二頭ずつ二組に分かれて戦うところは、まるでプロレスのタッグマッチである。ゴジラはジャイアント馬場だから、そうするとゴジラとタッグを組むコングは機敏に動き回るところがアントニオ猪木である。対する悪役二体は誰と誰にしようか。記憶に残っている悪役レスラーの筆頭はアブドーラ・ザ・ブッチャー。それと誰かもう一人。因みに、現役時代のブッチャーは相当な巨体だった。曙のように巨体の主は体を壊すことが多いがブッチャーはが83歳でご健在だそうでなによりである。

悪役レスラーでは、「鉄の爪」のフリッツ・フォン・エリックも記憶にある。今、「フリッツ・フォン・エリック」の名前を見て思うのは、ドイツ系であるということと、「フォン」が付いてるから元は貴族の家系である、ということである……と思ったら、この名前はギミックだそうである(ギミック=設定された履歴や出身)。つまり「元貴族」という設定であり、デーモン小暮閣下が悪魔だったり、山田ルイ53世がルイ王朝の末裔であるのと等しい。本名に「フォン」は付いてなかった。たしかなことは、この人のご子息がいずれもプロレスラーになったのだが不幸な人生を送ったこと。「呪われた一族」と言われた時期もあったそうだ(ウィキペディアより)。今、そのことを題材にした映画が上演されているそうで、あさイチの映画紹介コーナーで紹介されていた。因みに、「E.H.エリック」は日本の俳優で、岡田眞澄のお兄さんである。岡田眞澄は、私にとっては「マグマ大使」を呼ぶ笛を吹くマモル少年の父親を演じた人である。

外国人レスラーの話をするんだったらザ・デストロイヤーは欠かせない。この人は、和田アキ子さんの番組に出てたりしてすっかりお茶の間の人気者になってたから、もはやヒール(悪役)のイメージはない。この方は残念ながら5年前に88歳で他界されている。へー、この方、日本国から勲章をもらってるんだ!力道山の時代からずっと日本に来てたくらい日本との関係が長かったからね。日米親善に尽くした功績は多大だったのでしょう。

ベビーフェイスとヒールの区別で言うと、ゴジラは地球を悪い怪獣から守るために戦っているからベビーフェスである。が、その戦闘の際、多くの建物を破壊する。今作では、エジプトのピラミッドが被害を受けた。構成要件的には建造物損壊罪に該当する。この場合、ゴジラに侵害行為をしたのは他の怪獣であってピラミッドではなく、ピラミッドはとばっちりを受けたのであるから正当防衛は成立しないが、緊急避難にあたるからゴジラが建造物損壊罪に問われることはない(そもそも、ゴジラは人ではないから、犯罪主体にはならない)。


「オッペンハイマー」を見たけど「オッペンハイマー」は買えなかった件

2024-04-02 20:22:43 | 映画

アカデミー賞をたくさん獲った「オッペンハイマー」を見に行ってきた。予め、登場人物が多くて一回見ただけじゃよく分からないと聞いていて、ありゃ、それじゃ私には難しい、なにしろ私は顔認証能力がとことん低いから、と二の足を踏んでたんだけど、ここは一発「勇気」を出して行ってきました。噂は本当。最後まで名前と顔・性格・役回りが一致しない人が大半。同時並行的にいくつかの取調べシーンが進行するんだけど、それが何を審議してるかもほぼ分からずじまい。なのに、どんどんはまっていって、尺の長さはまったく気にならず、とーーーっても面白かった、でも全然分からなかったから勉強してまた来よう!二度目のゴジラよりも先に、こちらの二度目を先に行こう……これが感想。以下、なるべくネタバレにならないような、私らしい本線からそれた感想をいくつか。

断捨離に励んでる今、買わないと決めたパンフレットだったけど、とにかく分からないことだらけだから買わないワケにはいかない。だから、買いました。私みたいな人が多かったようで、パンフレットの売れ行きは(1200円もするわりには)好調のようでした。あと、先週見に行った「砂の惑星PartⅡ」もパンフレットを買ったんだけど、あっちは原作の改変の理由が知りたかったから。あっちもワケが分からないと言ってる人が多いみたいだけど私はよく分かった。原作を随分読んだからね。

こんな社会派のテーマの映画で、R15って、やっぱりそういうシーンがあるってこと?あるってことでした。

劇中に、ある女性の登場人物を「プリマドナー」と形容するシーンがあった。「プリマドンナ」みたい、ってことなのでしょう。「高慢」「偉そう」「上から目線」「漱石の小説に出てきそうな女」って訳がぴったりの方でした。

私がどんなに顔認証能力がないかっていうとね、この映画に「アイアンマン」(を演じた俳優さん)が出てるんだけど、私、最後まで別の人をアイアンマンだと思ってた。パンフレットを見て初めて勘違いに気づいたのでした。で、そのアイアンマンの俳優さんの役名が「ストローズ」。へー、ドイツ語名の「Strauss」(シュトラウス)は、アメリカ南部の発音だと「ストローズ」になるんだ!

細部がからきし分からなくても原爆を作ったアメリカの科学者っていう基本線は知ってたから、「脱落」しないで済んだのだろう。広島・長崎に投下するシーンはないとは予め聞いていたけど、そのシーンがなくても、作り手の罪悪感はよく伝わってきました。一つ、高校時代のことを思い出した。英語の時間に先生がアメリカからの留学生を教室に連れてきて、いろいろお話をしたなかで、その留学生が「アメリカが日本に原爆を落としたことについて、日本人がアメリカ人のことを恨んでないか心配してる」と言うのを聞いて、へー、公の場では、アメリカ人は、原爆投下は戦争終結のために必要だったんだと言ってるけど市民レベルではこんな風に思ってる人もいるのか、と思った。逆に、アメリカ人って、ああ見えて実は弱い人が多くて(だから、よく泣きよく慰めてる)、自分に言い訳をしなければ受け止められないのかな、とも思った。それにしても、腹立たしいのはあそこまで戦争を長引かせたこと。半年前にやめてれば原爆投下も沖縄戦もなかった。

オッペンハイマーを見たから、ドイツのライン地方のワインの「オッパンハイマー・クレーテンブルンネン」を買おうと思ったんだけど、映画館が入ってるショッピングモールにはなかった。代わりにフランケン地方のワインを買いました。

フランケン地方のワインは、瓶のこの形が特徴的。

追記。映画の音楽はほとんどが弦楽合奏。面白かったのは、オッペンハイマーの講義が最初受講生一人で始まったときのBGMはヴァイオリンのソロ、だんだん受講生が増えるごとにソロがソリになり、合奏になっていったことでした。