鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

よくぞ無事に帰ってこれたものだ、と実感したピースボート世界一周クルーズ

2013-06-20 | Weblog
 19日は午後から東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。すると、626号法廷で、午前10時から、昨年乗船した世界一周クルーズの主催者であるジャパングレイス社を相手どって、2008年のクルーズ客が損害賠償請求している裁判が開かれていた。早速、法廷に飛び込むと、傍聴席はほぼいっぱいで、なんとか空いていた席に潜り込むことができた。2008年のクルーズは米マイアミ沖でエンジンが停止し、8日間航海日程がずれたほか、船室に水があふれるなど数々の不祥事が起き、損害を蒙ったとして、当時の乗船客数十人連名で、クルーズ主催者に損害賠償を求めている事件で、同じようなクルーズに乗船した者としてよそ事ではない気持ちで傍聴した。
 裁判は62回クルーズのクルーズ・ディレクターを務めたピースボートの担当者に対して尋問が行われていた。マイアミ沖での漂流以外にもトイレでの出火や、エレベーター内でのい閉じ込め事件、それに共同展望風呂とコインランドリーが出航の5月14日から利用できるはずだったのが2週間ばかり遅れたことなど船内生活での数々のトラブルがあったことが追及された。これらは出航直前に急遽、船が変更になったせいで、そのことを聞かれた証人は「用船契約のことはよく知らない」と証言した。
 続いて証言に立ったピースボートの共同代表の吉岡達也氏は用船契約の当事者であることを認め、直前に変更した理由を「以前に使用しようとしていた船は1956年製の蒸気船で、一酸化炭素排出量が多く環境上変更せざるを得なかった」と述べたが、水回りや設備など機能面のチェックと運航に関しては「船会社を信用していて、さほど関心を払わなかった」と語った。ただ、船の選定については業界の評判や会社の規模などを総合的に判断して決めた、と自らの責任を認めるような発言もした。
 しかし、運航の遅れや水漏れなど機能面の不備などについては「すべて船会社の責任で、損害賠償を請求するなら、直接船会社へしてもらうのがいい」と語り、「その旨を乗船客にもいい、なかには認めてくれた人もいた」とも語った。ところが、原告側の弁護士から「それなら、船会社に損害賠償の請求をしたのか」と聞かれると、「海事弁護士に相談して、総額8億円から10億円の損害賠償を請求するような話し合いはした」と答えたが、それはあくまでも口頭だけのもので、1年くらいで諦めた、とも語った。その理由を聞かれて、海事弁護士から海事裁判は立証に時間がかかり長引き費用もかかるし、航海関係での評判が悪くなる、と言われたからだ、とぬけぬけと答えた。
 海事の専門家であるジャパングレイス社が諦めるほどの裁判を素人である乗船客が船会社に対して訴訟を起こして、戦えるものなのか、だれが考えてもそんなことができるわけがない。そんな無理なことをぬけぬけと勧める吉岡代表のセンスがわからない。まさか裁判に勝つための方便でそう言ったわけではなく、本音で語ったのだろうと思うと、こんな言い分が世間に広まれば、ピースボートの評判は地に落ちることは間違いない。
 そのほかにも吉岡代表は用船契約の契約当事者であるにもかかわらず、原告側の弁護士から一般的な船の耐用年数を聞かれて「知らない」と答えたり、客船の安全チェックとして、船籍国、船主協会、それにポートステートコントロール(船内設備や乗組員の資格など安全に関する立ち入り検査)の3段階のチェックがある理由を聞かれても「知らない」と答えるなど、およそ専門家とはいえない面をさらけ出した。こんな曖昧な管理・運営のもとに過去30年、営々と世界一周クルーズをまさに敢行してきたことを考えると、昨年はそんなことも知らずに乗船し、よくも無事に帰国できたものだ、と思い知った。思い返せば、昨年5月8日に横浜を出港した第76回クルーズは裁判となった第62回クルーズと同様、直前に船が変更になり、航海中、水漏れやエンジン停止、エレベーターの落下事故、それに盗難事件など多発し、同じような状況に遭った。62回でなく76回も同じようなことになっていたかもしれなかった、と思うといまでもぞっとする。そして、2度とピースボートの船には乗りたくないものだ、と思った。
 とりあえずの傍聴を終えて、思わず見知らぬ隣の人に「こんなことでは確実にピースボートのお客は減りますね」と話しかけたが、こんなお粗末な運営ぶりではジャパングレースの企業そのものはもちろん、ピースボート事業も確実に消滅するだろう、と思った
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2 コメント

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クルーズ船 (iina)
2013-10-20 12:22:28
ピースボートのクルーズ船を見学して、随分とゴージャスな雰囲気でした。
でも、裁判沙汰にもなっていたのでしたか。

オブリビオン 、アウトロー 、007スカイフォールと映画ばかりをTBさせていただいた (もののはじめblog) のiinaでした。


Unknown (鈴木三郎)
2014-08-12 06:35:58
そして、裁判の結果はどうなりましたか?

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