鈍想愚感

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国際的な化け物である金融資本の跋扈を防ぐために金融取引税は有効な手段である、と思った

2013-06-21 | Weblog
 消費税論議が再び起きてきたせいか、新潮新書の「私たちはなぜ税金を納めるのか」(諸富徹著)を購入して、読んでみたら、後半の「近未来の税制」の下りで、「トービン税」なるものが紹介されていて、興味を引いた。ジェームス・トービン教授が1972年に提唱したいわゆるトービン税は「ある通過と他国通貨との現物交換のすべてに、たとえば1%といった国際的に合意された一様な税を課す」というもので、いわば金融取引税のことである。過大で化け物的規模となって、世界経済をわが物顔で闊歩する金融取引をグローバルで把握し、コントロールするのは格好のアイデアである、と思い知らされた。
 「私たちはなぜ税金を納めるか」によれば、トービン教授が国際通貨取引税の構想を本格的に展開したのは1978年の「国際通貨改革への提案」と題された論文においてである。そこで、トービン教授は問題は「変動相場制か固定相場制か」ではなく、国境を超える民間金融資本の過剰な運動そのものにある、と指摘し、もはや一国の金融・財政政策だけではグローバル化してダイナミックに動く金融資本をコントロールすることは不可能になる、という。
 その解決策として、トービン教授は国際的な共通通貨を創出することと、もうひとつの策として「あまりにも効率的な国際金融市場の車輪にいくらかの砂(つまり税)を撒くことをあげている。国際通貨のすべての直物取引に対して一律で課税するもので、特徴は短期取引に対して重い負担を課すことにある。取引による利益の有無にかかわらず、1回ごとの取引に課税する仕組みで、たとえば国際通貨取引税が取引1回あたり0.2%の税率で導入されたとすると、週5日の毎営業日に1回の取引を定額で行うと年率では48%になるが、週1回なら年率10%、月1回なら2.4%の負担となる。トービン教授の国際通貨取引税構想のねらいは投機の抑制にある、というわけだ。
 折りしも、EU「欧州共同体)は2014年からこのトービン税を体現した「金融取引税」を導入することにしている。その理由として、リーマン・ショック以降の金融危機への対処費用のうち、その公平な割合を金融機関に負担させ、他の経済セクターとの課税の公平性を回復することと、金融市場の効率性を阻害する投機的取引を抑制するための適切な政策手段を創出することにある、としている。
 EUだけの金融取引税の導入が他の地域へどのような影響を及ぼすのか、また世界の1地域だけの金融取引税の導入がグローバルに効果をもたらすものなのか、壮大な実験であり、日本はじめ各国がどのように反応していくのか興味は尽きない。国際金融市場における金融資本の跋扈ぶりは目に余るものがあり、金融取引税の導入はその投機的な動きを抑制するのに効果的なものといえ、日本もいずれ導入せざるを得ないことだろう。
 EUはすでにトービン教授が提唱したもうひとつの解決策の共同通貨もユーロ貨を導入しており、その先進的な試みについては高く評価できる。
 金融取引税以外のグローバルなものとしては温室効果ガス抑制のために提唱されている環境税があるが、今後グローバルなものが増えてきているので、こうした動向に対応したグローバル・タックスが増えてくることだろう。
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