鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

あの岩波書店が「今年から図書総目録を作らなくなった」と聞いて愕然とした

2017-06-08 | Weblog
 7日に所用でお茶の水へ行った帰りに岩波書店が神保町にあるのを思い出し、かねて手元にあったらいいと思っていた岩波書店の図書総目録をもらいに行くことにした。ところが、神保町交差点近くにあり、よく利用していた岩波ブックセンターは昨年末に経営不振からか閉鎖となっていたので、向かいの岩波ホールのあるビルへ行って受付で聞いたところ、「10階の岩波ホールにある」とのことだった。上がってみると、手渡されたのは岩波書店の月刊図書で、図書総目録と言ったのが通じなかったようだった。

 そこで、このあたりに岩波書店の本社があるはずと周辺を歩いてみると、集英社の斜め向かいに岩波ビルがり、中へ入ると、地下1階、2階が岩波書店となっていたので、エレベーターで降りようとしたら、地下には行かない。仕方なくビルを出てぐるりと回ってみると、階段を下りたところにそれらしきオフィスがあった。受付で「図書総目録はありますか」と聞くと、ロビーの方を指さし、「そちらにあります」というので、探してみると、岩波文庫の図書総目録はあるが、単行本や全集も含めた全体の図書目録はなかった。

 困っていると、受付の女性がやってきて、「実は今年から図書総目録は作らなくなったのです」と申し訳なさそうに説明してくれた。で、「ネットで見られますか」と聞くと、それも「ない」という。それ以上はきくわけにはいかないので、お礼を言ってあとにしたが、あの岩波書店が図書総目録を作らないなどとはいままで考えられないことだった。

 これまでは岩波ブックセンターへ行けば岩波書店の刊行している単行本や全集、雑誌などはそろっていたので、便利だったが、それがなくなってしまったうえ、図書総目録もない、となるとこれから岩波書店の本などの発行状況を知るにはどうしたらいいのか、と途方にくれる。岩波書店はいまでもそうだと思うが、数ある出版社のなかで唯一書店に対して買い取り制で本を販売している。つまり、書店としては売れるという自信がない限り、岩波書店の本は発注しないのだ。だから街の本屋さんに岩波書店の本を置いているところは極めて少ない。岩波書店が自ら出版する本に誇りを持っているからできることで、岩波文化とも称されてきた。

 その岩波書店が図書総目録を作らないなんて、自殺行為んいも等しいことである。それだけ経営が厳しいということなのかもしれないが、出版社がそこまできた、ということを物語ってはいまいか。岩波文化が廃れるということは日本の文化の荒廃にもつながりかねない由々しきことでもある。この日訪れた岩波ビルは地上1階より上は貸しビルのようで、岩波書店の所有するビルであれば相当な家賃収入が入ってくるとも考えられ、出版以外の副業で経営はなんとか維持できるのかもしれないが、肝心の本業である出版は傾いているのかもしれない、とも思った。
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