「秋篠宮が天皇になる日」の衝撃

　文芸春秋２月号に特集「秋篠宮が天皇になる日」が掲載されている。皇太子妃雅子さんの皇室行事への不参加が取りざたされて以来、なにかと不協和音が目立っているこの時期にいよいよ皇太子に天皇即位についてバツの世論が出てきたのか、と思わせる特集で、表紙に赤字でタイトルが表示されており、一瞬見る人をドキっとさせる。文芸春秋はときに皇室関係の記事を掲載するが，筆者は硬派の保坂正康なのが余計に真実味を帯びてくる。
　昨年末の天皇誕生日前の恒例の天皇の記者会見が体調不良でとりやめとなり、宮内庁はストレス軽減のための緊急措置としていたが、天皇が体調を理由に誕生日会見を行わないのはかつてないことで話題となった。その前から体調不良を理由に公務をそれほど体調がよくないか、との観測を呼んだが、正月２日の皇居での一般参賀では天皇はじめ皇太子、秋篠宮両夫妻がそろってヒナ壇に登場し、マイクを通じて新年のお言葉が発せられたことからそれほどの重大事態ではないのだろう、との安心感も広がっていた。
　ところが、この文芸春秋の記事で、事態は一般の知らぬ間に密かに進んでいたことがうかがえた。同記事によると、皇太子は５年前の誕生日の記者会見で皇太子妃雅子さんの人格を否定するような動きがあったとの発言以来、皇室内部で信じられないような動静が伝わってきた。皇太子一家が天皇のもとへ１年に１回も訪れないとか、皇太子に代わって秋篠宮に対する評価が急上昇しているとかの動きである。
　そして、秋篠宮は感情を表に表さない皇太子より気配りもよく、いまや天皇家の中心的存在になりつつある、という。皇室の危機といわれるなかでコミュニケーション役を果たしているのは秋篠宮で、礼宮の結婚を取りまとめたのも秋篠宮だし、後継ぎ問題でも悠仁親王を生んで皇位継承問題にケリをつけたし、いまや皇室の結束的な立場に立っている、ともいう。生い立ちからさかのぼって秋篠宮が伸び伸びと育ってきて、公務の面でも皇太子を凌いで天皇をカバーするような活躍をみせていることを「御寺泉涌寺を護る会総裁」や国立総合研究大学院大学理学博士、東京農業大学客員教授などの例をもとに立証していく。
　同記事はうるさい筋の批判を配慮してか、結論としては「秋篠宮には天皇となる可能性があり、息子である悠仁親王を次代の天皇として育てなければならないという重大な役割を担っている」と慎重な表現にとどめているおり、タイトルほどのインパクトはないものの、印象としては秋篠宮が皇太子より次期天皇としてふさわしい、としているのは否定できない。
　筆者の保坂正康氏は「昭和史講座」で菊池寛賞を受賞しているノンフィクション作家であり、どちらかといえば硬派で、柔らかい皇室ものの作者としては意外な人選である。総力特集として保坂氏以外の編集陣が加わっているような感じを与えているが、保坂氏への風当たりを弱めるたものカモフラージュにすぎないだろう。田中角栄の失脚の引き金を作った文芸春秋だけにこの記事が秋篠宮天皇への導線となることも十分にありうる。
　ただ、以前からやんちゃな秋篠宮の話をいろいろ聞いてきた身としてはにわかにこの記事を読んでそういう気にはなれない。もし、この記事の通りとすれば、人間は２０歳を過ぎてから変わるものだ、ということと、皇太子に妃を選んだ際の見識がなかったことを思うしかない。