鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

永年の商慣習がもたらした事件ともいえなくもない真如苑の記念品全品回収事件

2023-01-26 | Weblog

 25日は東京・霞が関の東京地裁へ行き、午後1時半から721号法廷で凸版印刷が大丸松坂屋百貨店に対して損害賠償請求している民事裁判を傍聴すべくその30分前に法廷に行くと、すでに結構な人が 詰めかけていた。1時前には法廷が開かれ、そのまま入廷して傍聴席に座っていると、午後1時から書記官が開廷の声を上げ、訴訟番号を告げたが、1つ前の裁判の判決で、終わると書記官に促され該当裁判の関係者が原告、被告席に座った。このまま30分待つのかな、と思っていたら、なんと開始予定の10分も前に開廷が告げられ、裁判が始まってしまった。日頃、時間については厳格な裁判所としては初めて目にする光景でもあった。

 まず、原告の凸版印刷の担当部長らしき人が証言席に座り、弁護人に質問に答える形で事件の概要を話し始めた。それによると、宗教法人の真如苑が5年前の平成30年10月に創立80周年を記念して、信者30万人にお供えにもなる記念品としてフィナンシェとレモンケーキのセットを配ろうと企画して、被告の大丸松坂屋百貨店に製造を発注した。総額1億6500万円にものぼる多額な取引のうえ、真如苑は凸版印刷にとっては35年来の付き合いのある取引先であり、慎重に事業を進めていた。最初の打ち合わせから1年半以上にわたり、お菓子については14案、記念カードについては20案を提案するなど真如苑側と打ち合わせを重ねてきた。

 ところが、納入した後になって、お菓子のレモンケーキの一部にカビが発生する事態が発生し、社内で協議した結果、レモンケーキだけを回収するのではなく、急遽全品を回収することを決定した。その費用については被告にも負担してもらうことを決め、メールで連絡したが、それについては被告からは「了解した」との返信はなく、無視されたようだった。「あとで、被告側からは一切返信しないことを決めた、と知った」とも語った。

 続いて被告側の証人尋問が始まったが、証言席に就いたのはいわゆる外商にあたる東京外販事業部第5課の若い課員のようで、傍聴席にはその上司らしい人物が座って、見守っていた。被告側の弁護士の質問に答える形で、「全品回収については同意していなかった」と答え、今回の事件の責任者であろう本部長の名前を持ち出し、「中村本部長は『金のことではもめたくない』といっていた」と証言した。そして、「原告側から回収に同意を求められたことはない]とも語り、あまつさえ、「全品を回収する必要はなかった、と思う」とも語った。これだけのことをはっきり語るにはそれなりの肩書きのある人物を出すべきだ、と思われた。

 原告の凸版印刷が被告にどれだけの損害賠償額を請求しているのか、明らかにされなかったが、恐らく数千万円にのぼる金額であろうと思われ、判決はその10~20%程度の賠償額で収まるものと思われる。原告側が真如苑に対して感じているような恐れ多い取引であることを被告側が全く意識していなかったことから、この取引にかける熱意に相当な差があったのは事実で、被告側は他の取引となんら変わりがないと意識していたことがどのくらい判決に影響するのか、注目されるところである。

 あと、永年の付き合いとはいえ、真如苑がなぜ凸版印刷にこうした発注を続けてきたのか、単に信者にいいものを届けたいのなら、直接この手の取引に通じている大丸松坂屋百貨店に発注した方がコストもかからないのに、とも思われた。日本の商取引の永年の慣行といえばそれまでだが、他人には理解できない世界といえるのかもしれない。今回の全品回収事件の裏にはこうした日本的慣行といったものがひとつの原因と言えるのかもしれない。

 

 

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