とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

人魚の眠る家/東野圭吾著

2016-03-04 21:09:14 | 読書
人魚の眠る家
クリエーター情報なし
幻冬舎


内容(「BOOK」データベースより)
娘の小学校受験が終わったら離婚する。そう約束した仮面夫婦の二人。彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前だった。娘がプールで溺れた―。病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。過酷な運命に苦悩する母親。その愛と狂気は成就するのか―。

久しぶりに東野圭吾作品を読む機会が巡ってきた。新作の「人魚の眠る家」だ。この作品は、今までの東野作品とは、一味違う内容だった。当初は、脳の代わりに電気的刺激を与えることで筋肉を動かす技術(コンピュータプログラムとハードウェア機器)やAI横隔膜ペースメーカーに依る人口呼吸といった最新医療技術が物語に導入され、やはり東野圭吾らしい医療サスペンス物なのかというイメージであった。しかし、読み進めるにしたがって、それは単なる導入の一部で、作者の訴えたい本筋の添え物であるに過ぎなかった。

この作品のテーマは、子供の臓器移植をどう考えたらいいのかを問いかける内容である。“脳死”や“臓器移植”に関する日本の現状や海外との違いも明らかとなり、いろいろな問題がある事を思い知らされる。募金をして大金を集め、海外にわたって子供の臓器移植を行おうとする親の話も盛り込まれているが、果たしてそれが美談だけで済ませられるかということも考えさせられる。大金があれば、その子供は助かるが、臓器移植を待っているその国の子供たちの臓器を奪っていることにもなりかねないのだ。物事には、一方からではなく、別の面から見ると全く違う捉え方をされてしまうという事を思い知らされる。

そして、幼い子供が脳死とされる状態になった場合、親は本人に代わって臓器を提供するかどうかを決めねばならない。子供の死をただ待つのか、移植を承諾して臓器だけでも生かしてあげるのか、誰しもが当事者になったら深く苦悩するに違いないテーマだ。この作品では、脳死に近い状態になった子供を最新の医療技術で、まるで生きているかのように育てることが果たしていいのかどうかを問いかける内容でもある。

ワクワクドキドキするような内容とは言い難く、終始重いテーマにこの物語は、どう終わるのだろうかという不安のまま読み進んだ。「人の死」というものを決めるのは法律的には医者となっているが、それを受け入れる家族は理屈で分かっていても、感情的には簡単に受け入れることはできない。そんな、母や家族の葛藤を押しつけがましでもなく、理屈がましでもなく、うまくまとめ上げている点は、さすが東野圭吾である。「脳死」「母の愛情」「臓器移植」等簡単に判断できない重い問題について、じっくり考えさせられた作品だった。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
人魚 (小松)
2016-03-05 21:00:50
私も図書館に予約してゐて、あと半月で順番が回って来る予定です。楽しみです。
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小松さんへ (とっちー)
2016-03-05 21:31:01
東野作品は、人気がありすぎて、なかなか順番が回ってきませんが、図書館の購入冊数も多いので、それなりに回転もはやいです。
あと半月なら、もうすぐですね。
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