prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「青春の蹉跌」

2020年04月08日 | 映画
「映画監督 神代辰巳」を読んだ後だったので、神代の文体、特に音の使い方(ゴダールの影響ではないかというのはかなりありそう)、不定形な手持ち多用のカメラなどの文体を改めて確認する。

ショーケンの主人公はブント(Bund der Kommunisten=Bund=共産主義者同盟)の書記長だったんだぞと森本レオのセリフあり。
ヘルメットにゲバ棒という古式豊かな格好の学生運動家に襲われる場面もある。
脚本の長谷川和彦は「連合赤軍」の映画化を望んで果たさないでいるが、主人公がアメフトの選手という設定を含めてかなり内容に関わっていると思える。

森本レオの学生運動仲間がこういて市民的な生活を送っていても階級闘争を続けているんだぞなんて言う。学生運動やっていた人間がちゃっかり転身して大企業に就職したなんて話いくらもあるが、そういう偽善と屈折が背景としてある。
元はシオドア・ドライサーの「アメリカの悲劇」、及びその映画化の「陽のあたる場所」なのだが、かなりうまく日本の支配階級と革命勢力(というのかね)の関係にアレンジされている。

しかし表現とすると、なんだかやる気があるんだかないんだかというだらだらした空気の中で桃井かおりの愛人の妊娠というのっぴきならない事態でいきなり危機を迎える。
肉体的な実感の方が先行するのは神代の体質でもあるだろうし、映画の体質にも合っている。

雪の斜面を滑り落ちながらの妊娠した愛人殺しの場面は、今見ると冷や冷やするくらい危険。ショーケンもかおりもよくやったと思う。

柵を一本づつ触りながら歩いて、一本触り忘れて通り過ぎてしまい、改めて戻って触る、という有名な演技は脚本にはないショーケンの即興ではあるけれど、実は元ネタがあって倉本聰が白井佳夫と相談してとにかくシナリオを作って協力して作る人は手を挙げてという試みをした「純」というオリジナルシナリオの一節にある。
(のちに横山博人監督で映画化されたが、大幅に書き直されたので倉本聰の名前は出ていない)

田中内閣打倒の垂れ幕を背後に掲げる労働運動大会の実写が入る。
デモの人数が多い。
銀座の歩行者天国の人も多い。

ひょっこり赤ちゃんの大写しを使ったゼロックスのCM、あれ本物か。
市民生活に埋没している学生運動仲間の赤ちゃんの泣き声が先行したつながるつなぎといい、潜在的に赤ん坊ができる恐怖が埋め込まれている。

たしか中学生の時ギンレイホールで見て以来、何十年ぶりかの再見。
その時は正直、ひどく退屈だった。
今見直すとかなりわからなかったことはわかるようになったが、では面白いかというと、神代作品とするとロマンポルノほどには面白くないというのが本当のところ。




「アースクエイクバード」

2020年04月07日 | 映画
製作がリドリー・スコット。「ブラックレイン」が作中で映るところがあるが、日本を舞台にした外国人が主人公の作品という点では一緒。

種田陽平(「キル・ビル」「不夜城」「スワロウテイル」)の美術があえてエキゾチックな日本を演出している割に、「ブラックレイン」ほど日本の"エキゾチック"な風景を生かして撮っていない。撮影は「お嬢さん」「IT」など韓国出身でアメリカでも仕事しているチョン・ジョンフン。
まあ、基本的には監督の美意識がそれほど徹底されていないということ。

アリシア・ヴィキャンデルは身長公称168cm、髪の毛を黒っぽくしているせいもあって日本人の中に混ざってもそれほど目立たない。おでこが目立つ人だけれど今回は前髪を伸ばしていて、顔に痣がある設定もあって、ほぼスッピンみたいであえて綺麗に撮るのを避けている感もある。ファンとするとちと不満。日本語のセリフはかなり聞き取りにくい。

西洋人から見た東洋人の不気味さを生かすのかというと腰が引けている感じで、スリラーとしてもずいぶんタルい。

タイトルにもなっている地震がリアルな地震でもないし、「ストーカー」における何かの予感として機能しているわけでもない。




4月6日のつぶやき

2020年04月07日 | Weblog
若い頃のタルコフスキーは結構な遊び人だったらしい。ロシア語でいうスチュイーダ(英語のスタイルと同系統の語で、お洒落というかええかっこしいというか、そういう意味)の若者の一人。悪い仲間と付き合っているのを、母親がシベリア探検隊に押し込んで手を切らせたとか。


「マリッジ・ストーリー」

2020年04月06日 | 映画
すでに語りつくされている感はあるが、アダム・ドライヴァーとスカーレット・ヨハンソンの会話の密度とリアクションは息もつかせない。

冒頭の互いの好きなところを列挙するところから、必ずしも憎みあいオンリーで別れるわけではなく、互いに傷つけ合わないようにして、丸く収まりそうなのを焚きつけて争いに持ち込み仕事に仕立てるアメリカの弁護士あるいは法的システムのえげつなさに辟易する。
アラン・アルダがつまらないジョークを長々としゃべる間の時間も弁護士料をとるのかと夫が怒る。文字通りタイム・イズ・マネーだというのに。

夫婦の言い争いが頂点に達して荒れた夫が壁を殴って穴を開けてしまう表現が見事で、リアルな金銭面の描写が続いていたので、修理代いくらかかるだろうと考えてしまう。

キリスト教文化圏での完璧な母親は聖母マリアだというローラ・ダーンの弁護士のセリフが印象的。
処女で子供を産むという奇妙な話も、夫が妻に求める母性(他の男はいて欲しくない)の表象ということになるのか。

夫のもとにいたまだ小さい息子が母親を見るとぱーっと走り寄るアクションに「クレイマー クレイマー」が匂う。

演出家と女優という組み合わせで、しかし一方的に指示する、されるという関係ではないのが映画自体の監督と俳優のあり方になっている印象。




「全裸監督」

2020年04月05日 | 国内ドラマ
偶然なのだが、原作の本橋 信宏によるルポルタージュは出版されてから間もなく読んでいて、特に村西という男の破天荒なキャラクターが面白いけれど、ドラマか映画になるとは思っていなかった。

内容が膨大なのと初期AV業界の裏側を描くのだから際どい描写も当然出てくるわけで、映画にもテレビドラマにもはまらない、それをNetfixの配信ドラマという形で共にクリアしたのはこちらの固定観念を快く覆された。

堂々とピエール瀧がかなり大きな役で長いこと出ているのが爽快。シーズン2にも出るらしい。
リリー・フランキーの刑事(!実にいかがわしい)とツーショットという「凶悪」コンビの再現シーンもあり。

「ナイスですね」をはじめ、変な英語混じりの喋りはトニー谷(おそ松くんのイヤミのモデル)みたいでもあり、日本人のアメリカコンプレックスを巧まずして出した。ちょっと羽振りが良くなるとハワイでAVを撮るという発想ともつながってくるのだろう。
ハワイで撮ったAVに出演した外人女優にあなたの撮っているのはあなたのマスターベーションだと批判する視点が入る。

出演にあたって女優の合意を得ているのかどうかという問題がちょっとだが入っている。このあたりはAV業界で最近問題化したのを取り入れたのだろう。黒木香が親に逆らって自分の意志で業界に入ってくるのがひとつの芯になる。

ビデ倫を老舗のビニ本兼AVのメーカー社長(石橋凌)が発足させるあたり、映倫のトップをピンク映画出身の爺さまが占めていたりする皮肉と通じる。

よく考えてみると、実際に村西のAV見ているわけではないし、バブルの熱狂というのを実感したことなどないのだが、奇妙な既視感がある。というか、イメージとしてのバブルを再現したわけで、電話ボックスにびつしり貼られたピンクチラシなど、いかにもあの時代の感じを出している。

古い映画人が俺たちは映画を撮ってるんだと変な上から目線でクソ威張るのを追い出すあたりは爽快。映画出身の作り手たちとすると自戒のつもりもあるか。

村西と女性を含むスタッフたちが中華テーブルを囲んでいるのが円卓みたいな感じでみんな平等というニュアンスを出した。

村西の本拠地になるガレージみたいな場所、良く見ると上に行き交う人々の足が見えたりする。パラサイトに先んじて半地下なのね。

シーズン1は上昇のドラマだから割とカタルシスに結びつけやすかったと思うが、シーズン2は当然調子に乗りすぎてべらぼうな借金を背負う話になる。どう処理するか、見もの。




4月4日のつぶやき

2020年04月05日 | Weblog


「竜馬を斬った男」

2020年04月04日 | 映画
VHSしかソフトが出ていないので、萩原健一の一周忌のWOWOW放映はありがたかった。

旧大映のスタッフが倒産後の受け皿として集結した映像京都作品で、美術(にして社長)の西岡善信、撮影の森田富士郎、照明の中岡源権といった一流スタッフによる画面作りが素晴らしく、今ではこういう陰影豊かな時代劇はなかなかできないと思わせる。

ただ音楽が新しがりすぎて、「必殺!」シリーズならいざしらず、本格的な構えの時代劇だとかなり違和感がある。

ショーケンは竜馬ばかりか清河八郎も殺った暗殺者、佐々木只三郎を企画にも噛んで熱演しているけれど、元の役の書き込みが弱いせいかファナティックなのが日本の俳優の熱演のタイプにはまって見えてしまい、持ち味の柔軟さが減殺された印象なのは残念。

藤谷美和子や島田陽子といった失礼ながら今何をやっているのかといった女優さんたちが綺麗に撮れている分、複雑な気分になる。
竜馬役の根津甚八のように早世した人も。



「娘は戦場で生まれた」

2020年04月03日 | 映画
良くも悪くも「上手に」できている。
アサド政権とロシア軍による爆撃下のシリアに暮らす医師の夫と娘を映像ジャーナリストである妻が記録した映像を主にまとめているのだが、随所にドローンを使った爆撃で荒廃した街の全景の空撮が入ったり(これは別撮りっぽい)、全体をカウントダウン式のまとまりのいい構成にしたりして、見やすくわかりやすい。
その分、先進国メディアに調子を合わせたような印象もある。

とはいえ、帝王切開で胎内から取り出されるが息をしていない赤ちゃんが泣き声をあげる場面には息がつまる。こんなひどい状況でも新しい命が生まれる素晴らしさと、改めて状況のひどさに思いを致すのと両方。




「サーホー」

2020年04月02日 | 映画
「バーフバリ」のブラバース主演。現代アクションとあってまるで違う話かと思うと、最後でつながるものがあるのがわかってくる。

どういう設定、というか、どういう話なのかわかる(そして「サーホー」というタイトルが出る)までに短い映画一本分くらいかかる、ずいぶん破格の構成。

特に前半、一見すると意味があまりはっきりしない場面がかなりあって、有無を言わさないアクションシーンとシャッフル風の編集で勢いに呑まれて見てしまうけれど、なかなか話がつながらないで何度か当惑しかけるが、ずっと後になっと意味がつながってくる、相当に凝った構成。
正直、凝りすぎではないかと思うところもある。





2020年3月に読んだ本

2020年04月01日 | 
読んだ本の数:21
読んだページ数:5467
ナイス数:0

読了日:03月01日 著者:マルコムX




読了日:03月02日 著者:マルコムX




読了日:03月03日 著者:秋月 りす




読了日:03月07日 著者:山岸 凉子




読了日:03月07日 著者:山岸 凉子




読了日:03月07日 著者:愛甲 修子




読了日:03月08日 著者:吾妻 ひでお




読了日:03月18日 著者:中川 右介




読了日:03月18日 著者:山田 宏一




読了日:03月18日 著者:ジャック ロンドン




読了日:03月18日 著者:池田 理代子




読了日:03月20日 著者:岩明均




読了日:03月20日 著者:岩明均




読了日:03月21日 著者:押切 蓮介




読了日:03月21日 著者:押切 蓮介




読了日:03月23日 著者:ナサニエル ウエスト




読了日:03月26日 著者:川内 イオ




読了日:03月28日 著者:鈴木 敏夫




読了日:03月30日 著者:幸村誠




読了日:03月30日 著者:幸村誠




読了日:03月30日 著者:幸村誠






3月31日のつぶやき

2020年04月01日 | Weblog