prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「マリッジ・ストーリー」

2020年04月06日 | 映画
すでに語りつくされている感はあるが、アダム・ドライヴァーとスカーレット・ヨハンソンの会話の密度とリアクションは息もつかせない。

冒頭の互いの好きなところを列挙するところから、必ずしも憎みあいオンリーで別れるわけではなく、互いに傷つけ合わないようにして、丸く収まりそうなのを焚きつけて争いに持ち込み仕事に仕立てるアメリカの弁護士あるいは法的システムのえげつなさに辟易する。
アラン・アルダがつまらないジョークを長々としゃべる間の時間も弁護士料をとるのかと夫が怒る。文字通りタイム・イズ・マネーだというのに。

夫婦の言い争いが頂点に達して荒れた夫が壁を殴って穴を開けてしまう表現が見事で、リアルな金銭面の描写が続いていたので、修理代いくらかかるだろうと考えてしまう。

キリスト教文化圏での完璧な母親は聖母マリアだというローラ・ダーンの弁護士のセリフが印象的。
処女で子供を産むという奇妙な話も、夫が妻に求める母性(他の男はいて欲しくない)の表象ということになるのか。

夫のもとにいたまだ小さい息子が母親を見るとぱーっと走り寄るアクションに「クレイマー クレイマー」が匂う。

演出家と女優という組み合わせで、しかし一方的に指示する、されるという関係ではないのが映画自体の監督と俳優のあり方になっている印象。