prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「全裸監督」

2020年04月05日 | 国内ドラマ
偶然なのだが、原作の本橋 信宏によるルポルタージュは出版されてから間もなく読んでいて、特に村西という男の破天荒なキャラクターが面白いけれど、ドラマか映画になるとは思っていなかった。

内容が膨大なのと初期AV業界の裏側を描くのだから際どい描写も当然出てくるわけで、映画にもテレビドラマにもはまらない、それをNetfixの配信ドラマという形で共にクリアしたのはこちらの固定観念を快く覆された。

堂々とピエール瀧がかなり大きな役で長いこと出ているのが爽快。シーズン2にも出るらしい。
リリー・フランキーの刑事(!実にいかがわしい)とツーショットという「凶悪」コンビの再現シーンもあり。

「ナイスですね」をはじめ、変な英語混じりの喋りはトニー谷(おそ松くんのイヤミのモデル)みたいでもあり、日本人のアメリカコンプレックスを巧まずして出した。ちょっと羽振りが良くなるとハワイでAVを撮るという発想ともつながってくるのだろう。
ハワイで撮ったAVに出演した外人女優にあなたの撮っているのはあなたのマスターベーションだと批判する視点が入る。

出演にあたって女優の合意を得ているのかどうかという問題がちょっとだが入っている。このあたりはAV業界で最近問題化したのを取り入れたのだろう。黒木香が親に逆らって自分の意志で業界に入ってくるのがひとつの芯になる。

ビデ倫を老舗のビニ本兼AVのメーカー社長(石橋凌)が発足させるあたり、映倫のトップをピンク映画出身の爺さまが占めていたりする皮肉と通じる。

よく考えてみると、実際に村西のAV見ているわけではないし、バブルの熱狂というのを実感したことなどないのだが、奇妙な既視感がある。というか、イメージとしてのバブルを再現したわけで、電話ボックスにびつしり貼られたピンクチラシなど、いかにもあの時代の感じを出している。

古い映画人が俺たちは映画を撮ってるんだと変な上から目線でクソ威張るのを追い出すあたりは爽快。映画出身の作り手たちとすると自戒のつもりもあるか。

村西と女性を含むスタッフたちが中華テーブルを囲んでいるのが円卓みたいな感じでみんな平等というニュアンスを出した。

村西の本拠地になるガレージみたいな場所、良く見ると上に行き交う人々の足が見えたりする。パラサイトに先んじて半地下なのね。

シーズン1は上昇のドラマだから割とカタルシスに結びつけやすかったと思うが、シーズン2は当然調子に乗りすぎてべらぼうな借金を背負う話になる。どう処理するか、見もの。




4月4日のつぶやき

2020年04月05日 | Weblog