prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「赤と白」

2011年06月16日 | 映画
ハンガリーの巨匠、ヤンチョー・ミクローシュ(ハンガリー人は日本同様、姓が前、名が後に来る)による1968年作。日本未公開。アメリカ版 second run社 英語字幕DVDによる。
原題 Csillagosak,Katonak

ヤンチョー作品は「密告の砦」('65)「ハンガリアン狂詩曲」('79)が劇場公開されていて、幸い両方ともスクリーンで見ている。
遠景で捉えられた草原や川のほとりを、多くは隊列を組んだ人間たちが長まわしの撮影の中、複雑なタブローを作りあるいはページェントあるいは自然をバックにしたオペラのように構成される独自のスタイルは、これを含めて一貫している。

何しろロングに引いた画面が続くのでテレビで見るのは辛く、歴史的背景を含めてどういう人間関係でどういう風にストーリーが展開しているのか、というのははっきりいってまったくといっていいくらい、わからない。
それでいて、不思議と退屈しない。というか、退屈しないから安いとはいえ輸入版を買って見たりもしているわけで。

ただし、もともとわからないと言えば、個々のキャラクターより集団と化した人間たちの関係の力学によって動いているといった印象。
それぞれの個人がどこの集団なのかしばしば問いただし歌を歌わせたりするが、本当にそうなのかどうか曖昧で、それがはっきりしたところで全体の動きそのものは魚の群れがどれかの個体が指揮したわけではないのに全体として統一のとれた動きをとるように動く。

誰も全体像をわからないままそれぞれ個々の力関係で離合集散をしているうちに、全体としてはたいていカタストロフに向かっていく政治の力学の絵画化といっていいだろう。
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