サムイズダート・ロシア

めざせロシア式菜園生活!ダーチャごっことロシア&北海道のお話あれこれ

ドニョヴヌィ・ダゾル

2008-03-04 | 映画
少し前にロシア映画『ナイト・ウォッチ』の続編、
『デイ・ウォッチ(ドニョヴヌィ・ダゾル)』を見た。
これを語るのはちょっと、いや、かなり難しい。
そもそも日本人にどこまで理解されるんだろう?
夜を見張る光の勢力(ナイト・ウォッチ)と
昼を見張る闇の勢力(デイ・ウォッチ)の幾世紀にもわたる闘いの歴史。
光=善、闇=悪と当たり前のようにとらえるハリウッド的世界観を
引きずってると、この物語の本質は見えてこないだろう。
完全な善も完全な悪もなく、あるのはただ正義の対立だからこそ、
この世から争いが絶えることなどないのだ。

たかが個人のしでかしたことが、千年の休戦状態を覆すような
大ゴトになる展開に、正直「なんで?」と思えなくもないけれど、
個人と宇宙はつながっているし、異界はすぐそこにある
というような感覚が、ロシア・スラブ世界には確かにある。
そして異人たちがうごめくのは、ほかならぬモスクワ。
このモスクワの光景の切り取り方に今回も見惚れました。

なんといってもコスモス・ホテル!
ソ連時代、モスクワで初めて泊まったのがこのホテル。
排他的な西側的外観と得もいわれぬ胡散臭さがじんじんと思い出され、
このホテルを舞台に選んだ意味がすとんと腑に落ちた。
そしてプロダクション・ノートのなかでベクマンベトフ監督が
「学生時代から駅名に邪悪なものを感じていた」といっているのは
VDNH(ヴェーデンハー)こと「国民経済博覧会場」駅のことだろう。
「邪悪」……。なるほど、そう感じるんだ。
コスモスの向かいに広がる常設万博のごとき大博覧会場。
モスフィルムの冒頭にも出てくる、男女像が槌と鎌を掲げもつ
アホらしいほど巨大な「労働者と農民」のモニュメント。
そしてそびえたつオスタンキノのテレビ塔やオベリスク。
この界わいには確かに過剰なものがそろってる。
うっひゃーカッコい~い!けどバカっぽ~い!と歓喜しながら
部外者である観光客は写真を撮りまくるわけだけど、
当事者にはスターリン的、全体主義的なるものの象徴なんだ。
モスクワの異界の入口は、ソ連的磁場の強い場所にあったのか。
Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『紫外線の勝手』 | TOP | 自動翻訳ソフト »
最新の画像もっと見る

post a comment

Recent Entries | 映画