サムイズダート・ロシア

めざせロシア式菜園生活!ダーチャごっことロシア&北海道のお話あれこれ

『ロシアの大人の部屋』絶版に思う

2022-03-20 | ロシアコラム
3月末をもって『ロシアの大人の部屋』絶版決定、とのお知らせを
1週間ほど前に辰巳出版のご担当者からいただく。とても残念ですが、
別チームが制作した『パリの大人の部屋』も同様に絶版とのことなので
『ロシア…』だけがお役目終了というわけではないらしいのが救いです。



この本が発行されたのは、もう11年前、
東日本大震災の衝撃冷めやらぬ2011年3月25日のこと。
こんな時期に、外国のインテリアを紹介する趣味の本を出してる場合か⁉
いや、日本中がこんなに鬱々とした気分に覆われている時だからこそ、
ほっこり温かいロシアの家を見て心を和ませてもらえたら…
と葛藤しつつ、本を送り出したのを思い出します。

本書は、女子大生から90代のおばあちゃまのお宅まで、
モスクワのアパート24件のインテリアを紹介したもの。
その裏話の一部はカテゴリー「モスクワ取材2010」でお読みいただけます。

当時のロシアは、バブルは弾けたといえ、暮らしは豊かになり、
街もきれいになり、若い女の子たちはモデルばりのカッコよさ。
モスクワに同行したK君など、カッコいいお姉さんを見つけては
「きゃー、何あの人カッコいい~!女優さん!?」と狂喜してたっけ。

日本でも、ロシア雑貨やチェブラーシカやダーチャのおかげで
ロシアのイメージが少しずつ良くなってきた頃。
だからこそ、この企画も通ったわけで、
ソ連崩壊から20年たって、面倒だった旅行手続きも簡便になり、
ほぼ自由に旅程を組んで、自由に一般市民に取材できる
「普通の国」になりつつあったことに、当時は感無量でした。

なのにそのまた10年後に、ウクライナ侵攻という暴挙によって、
「怖い国」「危ない国」に逆戻りしてしまうとは。
今このタイミングで本書の絶版が決定したことは全くの偶然ですが、
本書に紹介したモスクワ市民の自由で温かな暮らしが、
二度と戻ってこないことを暗示するかのようで、暗澹たる思いです。


左から『ロシアの大人の部屋』中国版(2018年8月中信出版集団)、
台湾版(2012年1月悦知文化)、中国版(2011年12月中信出版社)

本書は、上記の中国版、台湾版が発行されたほか、
ロシアの出版社からロシア語版オファーも受けていたのですが、
誌面に登場する取材対象者の方々から許可を得られず、叶いませんでした。
遠く離れた海外での出版だから取材を受けたのであって、
国内でプライバシーを公開されるのは嫌、というのがその理由。
表向きは、開かれた国になったように見えていた当時も、
ソ連時代に培われた、人の目を本能的に警戒する習い性は、
消えていなかったのでしょう。
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3回目の麦踏み

2022-03-17 | 体験農園日記
先週末、ワークショップ「#私の麦畑」の一環として
朝一番で3回目の麦踏みをしてきました。


こちら麦踏み前。1家族1列なので楽勝かと思いきや…。


2回目の麦踏みの時にはまだ小さかった雑草が伸びまくってます。
しかも小麦にからまるようにして、根本にびっしり。
雑草とりを始めたはいいけれど、しぶとくて全然終わらない!


一番多い雑草がホトケノザ。春の七草なら食べられるのか!?
と思ったら、それとは別種で食べられないそう。


麦踏み完了。葉が倒れている中央列がわが家の分。
結局、雑草とりは途中で断念し、日を改めることにしました。

ただでさえ4月から小麦や小麦製品が値上がりするのに
ウクライナ危機の煽りでさらに上がりそうです。
小麦も自給できれば、それにこしたことはありませんが、
この共同麦畑で1家族がいただけるのは、小麦粉にして1㎏。
シンプルなピタパンが20枚焼けるくらいでしょうか。
となると、毎日パンを食べるには、相当広い畑が必要ですねぇ。
やはり今のうちに小麦粉を注文しておいたほうがよさそうです。
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ロシア国営テレビ生放送で反戦訴え

2022-03-15 | ロシアコラム
過日、国際ハッカー集団アノニマスがロシア国営メディアをハッキングし、世界で称賛の声が上がった、との報道がありましたが、愉快犯の自己満足のどこが称賛に価するのでしょう。かえって、「外国エージェント」の卑劣な行為としてロシア側のプロバガンダに利用されるだけのように思います。
それに比べて、内部で声を上げたこの女性は、本当に勇気があります。


女性は、ロシア国営放送局「ペルヴイ・カナル(第1チャンネル)」の従業員で、このあと警察当局によって身柄を拘束されたようです。プーチンの法改正によって、最長15年の実刑を受けるかもしれないというのに…。

追記:女性は、TV編集者マリーナ・オブシェニコワさん。
早くもウィキペディアにロシア語ほか数か国語で紹介されています。
●ロシア語ウィキペディアОвсянникова, Марина
●マリーナ・オブシェニコワ Facebook
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ウクライナ支援をかたる詐欺メール

2022-03-08 | ロシアコラム
少し前に「ウクライナ支援募金」をかたる英文メールが届きました。
ウクライナ支援のために、ビットコインなど暗号資産の寄付を呼びかけたもので、異なる発信元からの同じ文面のメールも出回っているようです。



迷惑メールに振り分けられていたので、すぐに詐欺とわかりましたが、
この非常時につけこんで、よくも悪知恵が働くものです。
同様の詐欺にご注意ください!

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ロシアの検閲とイソップの言葉

2022-03-06 | ロシアコラム
ロシアの独立系メディアが次々と活動停止に追い込まれているなか、
2021年ノーベル平和賞を受賞したムラトフ氏が編集長を務める
「ノーヴァヤ・ガゼータ」も、ウクライナ侵攻に批判的な記事を削除し、
一時的にニュース報道を断念する、と3月4日に発表しました。

「国防省のプレスリリースと一致しないものは、フェイクとみなされ、
最高15年の懲役刑を科せられる可能性がある」というのがその理由です。



 いい知らせがあるとしたら
「平和」という言葉がまだ禁止されていないこと

(「ノーヴァヤ・ガゼータ」3月2日(水)22号より)

確かに、ウェブ版の「ノーヴァヤ・ガゼータ」には、
昨日(日本時間)まであったウクライナ関連の記事がありません。

この決定を下すにあたり、同紙は協賛者6427人に二択のアンケートを実施。
3月3日朝までの集計結果は以下のとおりです。

●戦時検閲の体制下で、当局の要求に従いつつ活動を続ける  93・9%
●特別軍事作戦が終了するまで編集活動を停止する 6・1%

これだけ見ると、当局に屈することをよしとしているかに思えますが、
これには続きがあります。削除されるのは時間の問題かもしれませんが、
同紙サイトには、協賛者(読者)の声が多数掲載されています。
その多くは「何があっても続けてほしい」「真実を知りたい」というもの。
なかでも目を引くのは、以下のようなコメントです。

「私たちにはイソップの言葉があります」
イソップの言葉で書き続けてください」
イソップの言葉ならみんなわかります」

これはほんの一部で、同じようなコメントが、実に多く見られます。

イソップの言葉(Эзопов язык)」とは、手元の辞書でひくと
「比喩や寓意の多い表現」とあります。

ロシア版ウィキペディアによれば、奴隷だったイソップが、動物になぞらえて領主を批判したイソップ寓話にちなみ、真実を巧みに隠した表現をイソップの言葉と呼ぶようになり、ロシア文学においては、帝政時代の18世紀末頃から、検閲を免れるためにイソップの言葉を使う伝統が育まれたとのこと。

先に挙げた「いい知らせがあるとしたら、平和という言葉がまだ禁止されていないこと」というコピーにも、暗に「戦争」「侵攻」など、事実を伝える言葉は禁止され、事態は悪くなるばかりだとの警告が読み取れます。とはいえ、スレスレの表現ですね。まだ削除されていませんが、イラストの下には、言葉を選んで即時停戦を呼びかけるメッセージも添えられています。

もともと文学的素養のあるロシア人は、帝政時代も革命期もソ連時代も、検疫下の出版物の行間を読むことで、真実を見極めてきたのでしょう。21世紀になってまで、イソップの言葉を使わなければならないのは不幸なことですが、もっと不幸なのは、イソップの言葉を使った報道さえメディアが自粛せざるを得ない状況に追いこまれているということです。
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「偽情報」取締法によりロシア反戦活動に影

2022-03-05 | ロシアコラム
3月4日、プーチン大統領は軍に対する「偽情報」を取り締まる法案に署名。
罰則として数十万ルーブルの罰金や最長15年の懲役という厳しい内容に、
英BBSや米CNNは、ロシアでの報道活動を一時停止していますが、
この法律に最も打撃を受けるのは、ロシア国内での反戦運動でしょう。



先日お伝えしたロシアでの反戦署名キャンペーンは、
現在118万人の賛同を集めていますが、残念ながら
ロシア大統領宛てに署名リストを送ることを断念したもようです。

今回の法律が、どのように適用され、どのような言動が対象となるかは
まったく読めない状況であり、勇気をもって署名した人々に
危害が及ぶことを懸念しての決断でしょう。
実のところ、私もそれを心配していました。
日本で署名活動というと、わりと気軽に個人情報を書いてしまいますが、
ロシア大統領府に提出されるものとなると、署名した人、イコール
要注意人物として目をつけられかねませんから。

そのかわり、このキャンペーンをコミュニケーションツールとし、
反戦賛同者と今後もコンタクトをとり合っていくそうです。

3月6日には全ロシアで反戦抗議が行われるという情報もあるとのこと。
逮捕者が続出しないことを祈るばかりです。
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ウクライナ反戦署名108万人突破

2022-03-01 | ロシアコラム
新聞などでも報道されていますが、ロシアのウクライナ侵攻に対し、
ロシア人が始めたインターネット上の反戦署名が100万人を超えました。



先日このブログで紹介した時は、まだ50万人に達していなかったのですが、
3日経った3月1日午後6時30分現在、賛同者は108万6000人以上。

主催者のレフ・パノマレフ氏は、100万人突破を受けて
「これはさらに大きな反戦キャンペーンの始まりにすぎません」
とより多くの賛同を自国民に呼びかけています。

続報はこちら!
「偽情報」取締法によりロシア反戦活動に影

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ウクライナ侵攻に反対する署名キャンペーン
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