2018年3月25日(日)、ばんえいの最高峰レース「ばんえい記念」開催。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/e5/3063014eb6b8b864b41370db140d16cd.jpg)
晴天に恵まれ、多くの観客が詰めかけた帯広競馬場。
恒例の自衛隊による生ファンファーレが場内を盛り上げる。
体重1トン級の選ばれし名馬が、重量1トンをひく最高峰レース、
「ばんえい記念」を生で見るのは、たぶんこれが最後になると思うので
満を持して観戦にのぞんだのだけれど……。
レース中に出走馬の1頭が再起不能になるという
あまりにもやるせない結末を迎えることになってしまって
丸一日たった今も、胸がざわついている。
第一障害を越える8頭の精鋭たち。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/78/7cc5f439edc2075107fb76d96292cf90.jpg)
左から①トレジャーハンター、②サクラリュウ、③ソウクンボ―イ、
④フジダイビクトリー、⑤ホクショウユウキ、⑥オレノココロ、
⑦ニュータカラコマ、⑧コウシュハウンカイ
第二障害手前、進んでは止まる。駆け引きの時間。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/45/c873aad82ddb8e42ca0960aa9b24dd0f.jpg)
手前は7番ニュータカラコマ。この時はまだ平常。
にじり寄る第二障害。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/8d/0baf025d27656e1c568468b1bdfd3b3b.jpg)
最初に越えたのは、一番応援していたコウシュハウンカイ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/79/df68f639303cce6ce7aae8efd5296b63.jpg)
そのまま抜けたー!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/48/44c7bd5ef4d2d10503e9a84c30ddec2d.jpg)
昨年の覇者、一番人気のオレノココロが続かない。
どうしたんだ! このままコウシュハウンカイ逃げ切りか!
…と思いきや、遅れて障害を下りたオレノココロが
うんしょうんしょと力強い足どりで追い上げる。
前をゆくコウシュハウンカイが止まる。
ああーっ!とどよめく会場。
そのまにオレノココロが追い上げると
おおーっ!と歓声があがる。
ゴール目前、ほかの馬も追い上げて大接戦。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/39/144534a0a421badeb142999df9839d1a.jpg)
ばんえいのゴールは、馬の鼻先ではなく、そりの後端。
ギリギリまで勝負はわからない。
制したのは、下馬評どおりオレノココロ。強い!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/0b/a92e2526b58873c470f8bce1763af37b.jpg)
ゴール手前で競り合う好勝負に白熱したあとは、
残る馬たちがゴールするまで温かく見守るのが、
いつものばんえい記念なのだが、今年は違った。
ゴールまであと20mというところで、
ニュータカラコマが、右半身を下にしてばたりと倒れる。
じきに立ち上がってくれるものと誰もが願った。
遠目からも、最初はぴくぴくと動いているのが見えたが、
やがて動きが弱くなる。観客の視線が釘付けになる。
騎手がようやく馬からそりを外し、
担当と思われる厩務員が馬に近寄って頭をなでる。
誰が見ても異常事態なのに、誰も駆けつけないし、
実況アナウンスも不自然なほど倒れた馬に言及しない。
おそらくは、実況室にも情報が届いてこないのだろう。
スタンドに詰めているばんえい実行委員たちは
相当に動揺し、混乱していたに違いないのだが、
現場にはそれは伝わってこない。
すでに最後の馬もゴールし、次のレースの準備が
いつものようにゴール裏で着々と進められている。
ばんえいに限らず、競馬のレース手順は分刻みに決められているので、
コース上のスタッフは、分業で各自の役割を淡々とこなすのみ。
それがことさらに非情に見えてしまう。
動かなくなった1トンの巨体から、観客は目を離すことができず
その場を立ち去ることもできないまま、時間が流れる。
やがてトラクターがやってくる。
帯広市のばんえい振興室室長自らが、
馬を隠すようにしてブルーシートを掲げもつ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/ed/2510b9d3ce0320fe2904a5acae33660d.jpg)
次のレースの入場行進と入れ替わるようにして
ブルーシートに包まれたニュータカラコマが
重機で運び出されていくと、会場に静かな拍手がわいた。
レース結果を告げる電光掲示板。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/1c/02a9776c5625861db7a44cce17c06947.jpg)
1着オレノココロ、ばんえい記念連覇。
2着フジダイビクトリー、ばんえい記念2冠目。
3着コウシュハウンカイ、惜しい!
4着サクラリュウ
5着ソウクンボーイ
その日のばんえい十勝公式サイトの発表には、単にこうある。
ばんえい十勝で、ニュータカラコマ号(牡・10歳)が、2018年3月25日(日)にレース中の事故により死亡しました。
少々違和感のある表現。何かの物理的な事故が死因のような書き方だが、スポニチの報道では「心不全の疑い。獣医師が駆けつけた時はすでに予後不良だった」とある。競馬における「予後不良」とは、すでに打つ手がなく、安楽死処置がとられる状態のことだそう。ならば運び出されたときには、まだ息があったということなのだろうか。公式発表なら、もう少し詳しい説明がほしかった。
ばんえいのレース中の死亡事故は、平地競馬に比べると少ないとはいえ、過去にも何度かあったそう。「みんな泣きながらコースから運び出した」と当時の振興室長は語っている。ましてや今回は「ばんえい記念」という最高レースにおける事故。ばんえい=残酷、虐待というイメージを増幅させかねないだけに、関係者の心中はいかばかりのものか。
今年度、ばんえい競馬そのものは、帯広市単独開催が始まって以来、最高の販売額を記録し、200億円の大台を達成したとのこと。けれども順調に見えても、決して手放しでは喜べない状況であることを、複数の関係者の方々から直にお聞きした。馬主も馬の生産者も高齢化し、騎手や調教師を目指す人も極めて少ない。馬も人も減っているのに、レースの数は変わらない。販売額が伸びているといっても、ネット販売が8割近くを占め、ネット業者の手数料がかかる。賞金額は平地競馬とは比べものにならないほど低い。馬が主役なのに、競馬の収益が馬に還元されない、と憤る声も聞いた。馬たちのためにも、ばんえいには続いてほしい。でも、そのために何ができるのか…。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/9a/cce5ff29c03e565dde81eca772f6f59c.jpg)
ニュータカラコマ、最後のパドックでの雄姿。
おつかれさま。安らかに……。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/e5/3063014eb6b8b864b41370db140d16cd.jpg)
晴天に恵まれ、多くの観客が詰めかけた帯広競馬場。
恒例の自衛隊による生ファンファーレが場内を盛り上げる。
体重1トン級の選ばれし名馬が、重量1トンをひく最高峰レース、
「ばんえい記念」を生で見るのは、たぶんこれが最後になると思うので
満を持して観戦にのぞんだのだけれど……。
レース中に出走馬の1頭が再起不能になるという
あまりにもやるせない結末を迎えることになってしまって
丸一日たった今も、胸がざわついている。
第一障害を越える8頭の精鋭たち。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/78/7cc5f439edc2075107fb76d96292cf90.jpg)
左から①トレジャーハンター、②サクラリュウ、③ソウクンボ―イ、
④フジダイビクトリー、⑤ホクショウユウキ、⑥オレノココロ、
⑦ニュータカラコマ、⑧コウシュハウンカイ
第二障害手前、進んでは止まる。駆け引きの時間。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/45/c873aad82ddb8e42ca0960aa9b24dd0f.jpg)
手前は7番ニュータカラコマ。この時はまだ平常。
にじり寄る第二障害。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/8d/0baf025d27656e1c568468b1bdfd3b3b.jpg)
最初に越えたのは、一番応援していたコウシュハウンカイ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/79/df68f639303cce6ce7aae8efd5296b63.jpg)
そのまま抜けたー!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/48/44c7bd5ef4d2d10503e9a84c30ddec2d.jpg)
昨年の覇者、一番人気のオレノココロが続かない。
どうしたんだ! このままコウシュハウンカイ逃げ切りか!
…と思いきや、遅れて障害を下りたオレノココロが
うんしょうんしょと力強い足どりで追い上げる。
前をゆくコウシュハウンカイが止まる。
ああーっ!とどよめく会場。
そのまにオレノココロが追い上げると
おおーっ!と歓声があがる。
ゴール目前、ほかの馬も追い上げて大接戦。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/39/144534a0a421badeb142999df9839d1a.jpg)
ばんえいのゴールは、馬の鼻先ではなく、そりの後端。
ギリギリまで勝負はわからない。
制したのは、下馬評どおりオレノココロ。強い!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/0b/a92e2526b58873c470f8bce1763af37b.jpg)
ゴール手前で競り合う好勝負に白熱したあとは、
残る馬たちがゴールするまで温かく見守るのが、
いつものばんえい記念なのだが、今年は違った。
ゴールまであと20mというところで、
ニュータカラコマが、右半身を下にしてばたりと倒れる。
じきに立ち上がってくれるものと誰もが願った。
遠目からも、最初はぴくぴくと動いているのが見えたが、
やがて動きが弱くなる。観客の視線が釘付けになる。
騎手がようやく馬からそりを外し、
担当と思われる厩務員が馬に近寄って頭をなでる。
誰が見ても異常事態なのに、誰も駆けつけないし、
実況アナウンスも不自然なほど倒れた馬に言及しない。
おそらくは、実況室にも情報が届いてこないのだろう。
スタンドに詰めているばんえい実行委員たちは
相当に動揺し、混乱していたに違いないのだが、
現場にはそれは伝わってこない。
すでに最後の馬もゴールし、次のレースの準備が
いつものようにゴール裏で着々と進められている。
ばんえいに限らず、競馬のレース手順は分刻みに決められているので、
コース上のスタッフは、分業で各自の役割を淡々とこなすのみ。
それがことさらに非情に見えてしまう。
動かなくなった1トンの巨体から、観客は目を離すことができず
その場を立ち去ることもできないまま、時間が流れる。
やがてトラクターがやってくる。
帯広市のばんえい振興室室長自らが、
馬を隠すようにしてブルーシートを掲げもつ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/ed/2510b9d3ce0320fe2904a5acae33660d.jpg)
次のレースの入場行進と入れ替わるようにして
ブルーシートに包まれたニュータカラコマが
重機で運び出されていくと、会場に静かな拍手がわいた。
レース結果を告げる電光掲示板。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/1c/02a9776c5625861db7a44cce17c06947.jpg)
1着オレノココロ、ばんえい記念連覇。
2着フジダイビクトリー、ばんえい記念2冠目。
3着コウシュハウンカイ、惜しい!
4着サクラリュウ
5着ソウクンボーイ
その日のばんえい十勝公式サイトの発表には、単にこうある。
ばんえい十勝で、ニュータカラコマ号(牡・10歳)が、2018年3月25日(日)にレース中の事故により死亡しました。
少々違和感のある表現。何かの物理的な事故が死因のような書き方だが、スポニチの報道では「心不全の疑い。獣医師が駆けつけた時はすでに予後不良だった」とある。競馬における「予後不良」とは、すでに打つ手がなく、安楽死処置がとられる状態のことだそう。ならば運び出されたときには、まだ息があったということなのだろうか。公式発表なら、もう少し詳しい説明がほしかった。
ばんえいのレース中の死亡事故は、平地競馬に比べると少ないとはいえ、過去にも何度かあったそう。「みんな泣きながらコースから運び出した」と当時の振興室長は語っている。ましてや今回は「ばんえい記念」という最高レースにおける事故。ばんえい=残酷、虐待というイメージを増幅させかねないだけに、関係者の心中はいかばかりのものか。
今年度、ばんえい競馬そのものは、帯広市単独開催が始まって以来、最高の販売額を記録し、200億円の大台を達成したとのこと。けれども順調に見えても、決して手放しでは喜べない状況であることを、複数の関係者の方々から直にお聞きした。馬主も馬の生産者も高齢化し、騎手や調教師を目指す人も極めて少ない。馬も人も減っているのに、レースの数は変わらない。販売額が伸びているといっても、ネット販売が8割近くを占め、ネット業者の手数料がかかる。賞金額は平地競馬とは比べものにならないほど低い。馬が主役なのに、競馬の収益が馬に還元されない、と憤る声も聞いた。馬たちのためにも、ばんえいには続いてほしい。でも、そのために何ができるのか…。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/9a/cce5ff29c03e565dde81eca772f6f59c.jpg)
ニュータカラコマ、最後のパドックでの雄姿。
おつかれさま。安らかに……。