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モスクワ五輪映画で思う東京2020

2021-07-17 | ロシア系イベント
先週末はロシア文化フェスティバルの「ロシア・スポーツ映画祭2021」へ。
昨年も同じ内容のプログラムが本邦初上映として開催されたのだが、
コロナ初年で電車に乗るのがためらわれて断念。
去年も今年も感染状況はたいして変わっていないが、
ワクチンも打ったことだし、ラッシュの時間帯を避ければいいか、と
再上映された3本のうち2本を見る。



1本目は、1970年制作の『スポーツ、スポーツ、スポーツ』。
これはごっつう拾い物! スポーツ発展の歴史を紐解くかと思いきや、
ハズし技の数々に苦笑をそそられるラビリンスな一作。
監督は、ナチスドイツのソ連侵略を、少年の目を通して描いた衝撃作
「炎628」(1985年)で知られるエレム・クリモフ。
音楽はシュニトケ。役者時代のニキータ・ミハルコフも出演。

2本目は、前から見たかった1980年モスクワ五輪のドキュメンタリー、
「おおスポーツよ、君は平和だ」(О, спорт! Ты-мир!)
なんだこりゃなタイトルだが、ソ連映画には直訳が似合うのである。

モスクワ五輪といえば、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して
「多くの西側諸国がボイコットした」ことで知られる。
なので、きっとソ連選手大活躍を謳ったプロパガンダ映画であろう
と予想しつつ見てみれば、真逆であった。

本作でボイコット国として紹介されるのは米国、日本、西独くらいのもの。
実は、イギリス、フランス、イタリアなど西側主要国の多くは、
完全不参加ではなく、個人参加として選手を送り出していたのである。
本作は、それらの国々の有力選手の試合ぶりを偏りなくとりあげる。
モスクワにやってきた各国の観光客にも満遍なくマイクを向ける。

即ち、こんなにいろんな国の選手が参加して、いい試合しましたよー、
ボイコット国からもこんなに観光客が来てモスクワを楽しみましたよー、
というオリンピック大成功を謳った、一種のプロパガンダではあるものの、
それを超えたオリンピック賛歌に仕上がっているのである。

そしてもうひとつ。モスクワ五輪の4年後に開かれたロス五輪から
開会式や閉会式はショーと化し、スポンサードな商業五輪に変貌する。
共産圏お得意のマスゲーム、子供たちやミーシャの素朴なパフォーマンス、
マンパワー炸裂の古き良き時代のアナログ演出は、
モスクワ五輪が最後だったのだ。


●1980年モスクワオリンピック閉会式で涙するミーシャ
(客席にいる人々が色のついた紙をもって、涙が流れ落ちるさまを人力で表現するという懐かしのアナログ演出)

今のような東京五輪無観客が決定したタイミングで見ると、
ここに描かれるのは、皮肉にも理想的なオリンピックの姿である。
スタジアムを埋め尽くす観客が、各国の選手の健闘を称え、
モスクワの街には観光客が溢れ返り、彼の地の食や文化を堪能する。
そして迎えた閉会式、子熊のミーシャが風船と共に大空に消えゆく姿を
観客は万感の思いで見つめ、祭の終わりの寂しさを共有する。

このすべてが「ない」状態で開催される東京五輪2020を
私たちはどのような思いで迎えたらよいのだろう。
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