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第50回ばんえい記念

2018-03-26 | 勝手にばん馬メモ
2018年3月25日(日)、ばんえいの最高峰レース「ばんえい記念」開催。


晴天に恵まれ、多くの観客が詰めかけた帯広競馬場。
恒例の自衛隊による生ファンファーレが場内を盛り上げる。

体重1トン級の選ばれし名馬が、重量1トンをひく最高峰レース、
「ばんえい記念」を生で見るのは、たぶんこれが最後になると思うので
満を持して観戦にのぞんだのだけれど……。
レース中に出走馬の1頭が再起不能になるという
あまりにもやるせない結末を迎えることになってしまって
丸一日たった今も、胸がざわついている。

第一障害を越える8頭の精鋭たち。

左から①トレジャーハンター、②サクラリュウ、③ソウクンボ―イ、
④フジダイビクトリー、⑤ホクショウユウキ、⑥オレノココロ、
⑦ニュータカラコマ、⑧コウシュハウンカイ

第二障害手前、進んでは止まる。駆け引きの時間。

手前は7番ニュータカラコマ。この時はまだ平常。

にじり寄る第二障害。


最初に越えたのは、一番応援していたコウシュハウンカイ。


そのまま抜けたー!


昨年の覇者、一番人気のオレノココロが続かない。
どうしたんだ! このままコウシュハウンカイ逃げ切りか!
…と思いきや、遅れて障害を下りたオレノココロが
うんしょうんしょと力強い足どりで追い上げる。

前をゆくコウシュハウンカイが止まる。
ああーっ!とどよめく会場。
そのまにオレノココロが追い上げると
おおーっ!と歓声があがる。

ゴール目前、ほかの馬も追い上げて大接戦。


ばんえいのゴールは、馬の鼻先ではなく、そりの後端。
ギリギリまで勝負はわからない。

制したのは、下馬評どおりオレノココロ。強い!


ゴール手前で競り合う好勝負に白熱したあとは、
残る馬たちがゴールするまで温かく見守るのが、
いつものばんえい記念なのだが、今年は違った。
ゴールまであと20mというところで、
ニュータカラコマが、右半身を下にしてばたりと倒れる。
じきに立ち上がってくれるものと誰もが願った。
遠目からも、最初はぴくぴくと動いているのが見えたが、
やがて動きが弱くなる。観客の視線が釘付けになる。

騎手がようやく馬からそりを外し、
担当と思われる厩務員が馬に近寄って頭をなでる。
誰が見ても異常事態なのに、誰も駆けつけないし、
実況アナウンスも不自然なほど倒れた馬に言及しない。
おそらくは、実況室にも情報が届いてこないのだろう。
スタンドに詰めているばんえい実行委員たちは
相当に動揺し、混乱していたに違いないのだが、
現場にはそれは伝わってこない。

すでに最後の馬もゴールし、次のレースの準備が
いつものようにゴール裏で着々と進められている。
ばんえいに限らず、競馬のレース手順は分刻みに決められているので、
コース上のスタッフは、分業で各自の役割を淡々とこなすのみ。
それがことさらに非情に見えてしまう。
動かなくなった1トンの巨体から、観客は目を離すことができず
その場を立ち去ることもできないまま、時間が流れる。
やがてトラクターがやってくる。
帯広市のばんえい振興室室長自らが、
馬を隠すようにしてブルーシートを掲げもつ。



次のレースの入場行進と入れ替わるようにして
ブルーシートに包まれたニュータカラコマが
重機で運び出されていくと、会場に静かな拍手がわいた。

レース結果を告げる電光掲示板。


1着オレノココロ、ばんえい記念連覇。
2着フジダイビクトリー、ばんえい記念2冠目。
3着コウシュハウンカイ、惜しい!
4着サクラリュウ
5着ソウクンボーイ

その日のばんえい十勝公式サイトの発表には、単にこうある。

ばんえい十勝で、ニュータカラコマ号(牡・10歳)が、2018年3月25日(日)にレース中の事故により死亡しました。

少々違和感のある表現。何かの物理的な事故が死因のような書き方だが、スポニチの報道では「心不全の疑い。獣医師が駆けつけた時はすでに予後不良だった」とある。競馬における「予後不良」とは、すでに打つ手がなく、安楽死処置がとられる状態のことだそう。ならば運び出されたときには、まだ息があったということなのだろうか。公式発表なら、もう少し詳しい説明がほしかった。

ばんえいのレース中の死亡事故は、平地競馬に比べると少ないとはいえ、過去にも何度かあったそう。「みんな泣きながらコースから運び出した」と当時の振興室長は語っている。ましてや今回は「ばんえい記念」という最高レースにおける事故。ばんえい=残酷、虐待というイメージを増幅させかねないだけに、関係者の心中はいかばかりのものか。

今年度、ばんえい競馬そのものは、帯広市単独開催が始まって以来、最高の販売額を記録し、200億円の大台を達成したとのこと。けれども順調に見えても、決して手放しでは喜べない状況であることを、複数の関係者の方々から直にお聞きした。馬主も馬の生産者も高齢化し、騎手や調教師を目指す人も極めて少ない。馬も人も減っているのに、レースの数は変わらない。販売額が伸びているといっても、ネット販売が8割近くを占め、ネット業者の手数料がかかる。賞金額は平地競馬とは比べものにならないほど低い。馬が主役なのに、競馬の収益が馬に還元されない、と憤る声も聞いた。馬たちのためにも、ばんえいには続いてほしい。でも、そのために何ができるのか…。



ニュータカラコマ、最後のパドックでの雄姿。
おつかれさま。安らかに……。

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