北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

目が回る

2024-02-13 22:26:40 | 健康

 

 昨日、朱鞠内湖から帰ってくる日ですが、早朝からホテルで強いめまいに襲われました。

 以前にも強いめまいと吐き気で苦しんで耳鼻科へ駆け込んだことがありましたが、ほぼ同じ症状。

 目がぐるぐる回って気持ちが悪くなり動けません。

 ホテルでチェックアウトギリギリまで休ませてもらって、運転は妻に頼んでなんとか札幌まで帰ってきました。

 
 一日経った今日も、一度は出社したもののめまいが残っていて、昼からかかりつけの耳鼻科へ行って受診と薬をもらってきました。

 ドクターは目の前に人差し指を立てて、「はい、これをじっと見てください」と言うのですが、目が自然に左側に流れるのが分かります。

「目がビュンビュン左に流れているのがわかるので、まだ突発性のめまいの急性期だと思います。まずは薬を出しますが、落ち着くまでは転倒とかに気をつけてください」という診断。

 まあ年齢とともにさまざまな身体的不具合が出るのは仕方のないところです。

 出された薬を飲んで安静にして治るのを待つことにします。

 自分の体の弱点を知りつつ、労わりながら過ごしましょう。

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北海道の秘境、朱鞠内湖で孫と娘とワカサギ釣り

2024-02-11 20:54:46 | 釣りのはなし

 

 もうすぐ札幌を離れる娘と孫と、思い出を作ろうとこの三連休は北海道の秘境朱鞠内湖にやってきました。

 定宿のレークハウス朱鞠内がなんとか取れて、二泊三日の朱鞠旅、昨日は到着するだけにして今日の日曜日にワカサギ釣りに出ました。

 宿から眺める早朝の日の出も美しいのですが、今日ばかりはガツガツせずにゆっくりと朝食を取ってから湖に出てゆきます。

 朝8時前とのもなると駐車場はほぼ満車状態で、湖面にはたくさんのテントが並んでいて、(こんなに朱鞠内湖のワカサギ釣りは人気なんだ)と改めて驚きます。

 トイレの関係もあるので、あまり遠くの釣り場には向かわずに前浜の適当なところに穴を開けようと思ったら、漁組の方がいて「ここがいいよ、機能も学生さんたちが来て釣れてたからね」という穴のポイントを教えてくれて、あまり苦労をせずにテントの場所が決まりました。

 水深は3mほどですが、魚探には魚影も濃く出ていて釣果が期待できそうです。

 とはいえ今回は、とにかく娘と孫に釣らせるのが目的。

 私自身は釣らずに餌替えや魚外しなど、妻と娘と孫のサポートに回りました。

 2歳半の孫がぐずったりいやがったりせずに釣りに参加してくれるかどうかが一番のポイントだったのですが、始めこそグダグダだったのが大人が釣りをする動作を観ていたのか、後半はそこそこやる気になってくれて賑やかな釣りになりました。

 大人なら電動リールでバンバン釣るところですが、娘と孫なのでプラスチック製の手巻きのリールに、一番安いワカサギ竿をつけて格好だけ"ワカサギ釣りらしい"格好で釣りをします。

 とはいえ、「まだ動かさないで待って」と言っても竿を振り回すし、「まだ巻かないで」と言ってもどんどんリールを巻くわで、はちゃめちゃなのですが、それでもまぐれでもなんでもワカサギをヒットさせて一人でワカサギを釣り上げました。

 孫の人生のプロフィールに、「2歳で朱鞠内のワカサギを釣る」と書くことができる一生の称号を手に入れたというわけで、今回はるばる朱鞠内湖へ来たかいがあったというものです。

 ホテルのスタッフの皆さんにも良くして頂いて、こういう秘境に馴染みの定宿があるという豊かさを大いに感じました。

 娘と孫との良い思い出ができました。


     ◆


 夜にロビーでくつろいでいると、漁組の組合長にしてNPO理事長の中野さんがやってきて、よもやま話になりました。

 昨年、釣り人が一人で釣りをしているときにクマに襲われて無くなるという大変な悲劇に見舞われた朱鞠内湖ですが、こんな大自然の土地にあっては熊との付き合い方、共存と言うのは大きなテーマです。

 中野さんは今、ハンターになるための狩猟免許を取得している真っ最中なのだそう。

「昨年の熊騒動もあって、熊や鹿といった動物を撃つことができるというスキルが大事なんだと思いました」と言いつつ、「ぜひとも小松さんも狩猟免許を取ってくださいよ」とひとしきり口説かれました。

 今中野さんは、「やはり地元にハンターがいなくてはだめだと思って、息子と娘にも免許を取らせていて、僕自身も免許取得中です。小松さんもぜひ」と言います。

「僕などはもういい歳ですから無理ですよ」
「いえいえ、全然!50代の僕が、免許の講習の部屋では若い順に下から二番目ですよ。あとは70代、80代の人だっているくらいですから、まだまだ60代なんて若い部類ですよ!」

 中野さんは、「やはりもっと道民全体に、熊とどう付き合うのか、という議論が欠けているように思います。話は両極端で、危ないから殺せ、と言う人がいれば、可哀想だから殺すな、と言う人もいる。そのどちらも熊と人間の距離感を保ちながら共生するという視点が欠けているように思いますね」と、熊と人との共生を図るような価値観が育つことを期待しているようです。

 さすがに私もハンターの免許まではもう無理だろうと思いますが、もっと若い人たちに、実は趣味としても奥深い"狩猟"ということに関心を持ってもらっても良さそうに思います。

 
 自然に近いという事は、都会と違ってそれだけ自然との付き合い方がより濃密で繊細な関係性を求められるという事なのでしょうね。

 朱鞠内湖は北海道の中でも秘境の中の秘境です。
 

 

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頼りになるお店 ~ これならファンになる

2024-02-09 22:30:24 | Weblog

 

 かねてより修理に出していたワカサギ釣り用の電動リールが修理を終えて戻ってきました。

 電池はあるのにスイッチを入れてもモーターが回らなくなる症状で、モーターの故障が疑われました。

 そもそも、このリールは釣りをしていて一度釣り穴に落としたことがあったもの。

 半べそをかきながら別の釣竿で湖底をさらったところ奇跡的に釣り針に引っかかって回収ができたのでした。

 液晶パネルへの浸水なども疑われたものの一度は復活していたのですが、シーズンをまたいだところでモーターが故障してしまったようです。

 ショップで修理をお願いしたところ、「これは一世代古いタイプなので、部品があるかどうか。まずはメーカーに依頼してみます」とのことで、ダメもとでお願いしてあったのでした。

「修理が終わりました」という連絡を受けて釣り具ショップに受け取りに行き、その場でスイッチを入れるとちゃんとラインの巻取りができることを確認して受け取りました。

 家に帰ってから改めて修理の明細を見てみると、モーターの交換だけでなく、ラインを巻き取るスプールのシートが傷んでいたのを交換し、さらにモーターからスプールに力を伝えるところのチューブも劣化していたので交換した、とありました。

 もちろんそれらもお値段には含まれているのですが、電動リールがちゃんと性能を発揮するためにはスプールとチューブにも必要な処置をするというサービス精神が嬉しかったです。

 それもメーカーとしては当然のことなのかもしれませんが、やはりユーザーの信頼に応えようとする気遣いは嬉しいものです。

 これからもDAIWAのCrystiaシリーズを使おうと思います。 


      ◆


 同じような話で、ワカサギテントの張り綱やテントを湖面の氷や雪に固定する巨大な木ネジのようなコーチスクリューという部品を買い求めようと思って、市内のホームセンターを走り回ったことがあります。

 長さが30センチのものが欲しくて探し回ったのですが、どこのお店に行っても「ああ、うちにはここにあるだけですね」と言われ、「取り寄せられますか?」と訊いても、なんだかはぐらかされるばかりでした。

 それが一軒だけ、「取り寄せが効くかどうか問屋に聞いてみましょう」と言ってくれて、後から「取り寄せられるようです、何本必要ですか」と連絡がありました。

 必要な本数を伝えて一週間後に届いたと連絡があり、リーズナブルな価格で提供してもらうことができました。

 こういう形で数あるお店の中からいざというときに頼りになるお店が選ばれていくのでしょうね。

 屯田のジョイフルエーケーさん、ありがとうございました。

  

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「気の力」が分かりますか

2024-02-08 22:48:31 | Weblog

 

 先日仕事上の付き合いのある中国出身の方を交えた飲み会がありました。

 彼は日本在住歴も長くてもちろん日本語もペラペラ。

 乾杯で飲み会が始まって、一人が「チンタオビールも美味しいですよね」と言うと、「えー、本当ですか?あれ、薄いじゃないですか」と自国のビールにネガティブな評価を与えます。

「へえ、ちょっと濃くないと言うよりもすっきりしたビールかな、と思ったんですけど」
「チンタオビールって、もともとドイツの租借地だった時代にドイツが始めたビール事業だったんですが、その後日本が経営に参加したんです。でも私は日本のビールの方が味が濃くて美味しいと思います。チンタオビールは薄くてダメですよ(笑)」

 私などは訪中の際に飲んだチンタオビールが爽やかな感じがしましたが、地元民はそうでもないんですね。

 まあどこか、地元のモノを過小評価する傾向ってありますしね。

 やっぱり日本のビールは美味しいようですよ。


     ◆


 さて、その中国の方を交えて話が弾んだところでひょんなことから「気」の話になりました。

 その中国の方に言わせると、「中国人は"気"のことが分かる人が多いんです」とのこと。

 彼は、丁度一緒に飲んでいた同僚が新年早々具合が悪かったときに会合で会って握手をしたのだそう。 
 
「あのときには気を腕から吸われるのが分かりました」と言います。

「そんなことわかるの?」と言うと、「わかります。親からも、ネガティブな言葉を発したりして自分の気を乱したり吸い取ったりするような友達とは距離を置くように、と言われました」と真面目な顔で言います。

「彼と握手したときに"気を吸われた"と言うのは、彼は距離を置くべき人だ、という事?」と訊くと「いえいえ、きっと何か体調が悪かったんだと思います。基本的には気が充実している方なのですが、その時は手から気を吸われる感じが強くしたので、とても驚いたんです」とのこと。

 彼によると、人間には気が充実している人と、気を乱す人がいるのだそうで、気を乱す人とは付き合わない方が良い、という親からの教えだったのだそう。

 「気」そのもののあるなしは、日本人の私にはよくわかりませんが、中国ではそういう教えが当たり前なのですね。

 それにしても握手をするだけで気の流れが分かるというのも独特な感覚です。

 せいぜい自分自身の気力が満ちるように心がけてみようと思います。

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家族で楽しむアフター雪まつり

2024-02-07 22:36:34 | Weblog

 

 家族で雪まつりの雪像を観てきました。

 思ったほど寒くはなく、また人出もそれほどでは無いように見受けましたが、洋の東西を問わず外国人が多いのには改めて驚きました。
 
 HTB広場の札幌駅逓舎とプロジェクションマッピングを楽しんで、それからゴールデンカムイの主人公の大雪像を観ましたが、なかなかに迫力があって見ごたえがありました。

 2歳の孫も結構頑張って歩きましたが、最後は疲れて母親に抱っこをせがむ始末。

 雪像見物もそこそこに、まちなかの居酒屋に飛び込んで美味しい料理とお酒を楽しみました。

 入った居酒屋では「銘柄酒三種飲み比べ」というメニューがあって、「楯の川」「豊盃」「田酒」という組み合わせが格安で提供されているのを注文。

 美味しいお酒の組み合わせと、居酒屋料理に舌鼓を打ちました。

 札幌市民の雪まつりの楽しみ方はこれでいいのだと思います。

 

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さっぽろ雪まつりは市民のものか

2024-02-06 23:27:14 | Weblog

 

 札幌雪まつりが始まりました。

 つどーむ会場やすすきの会場など、フルの体制で開催されるのは4年ぶりとのことですが、たくさんの人に来てもらいたいものです。

 私の職場は大通公園に面しているので、5階のオフィスの窓からは10丁目広場の様子が手に取るように見えます。

 日曜日から始まったイベントは三日目ですが、日中の様子を見る限り大混雑と言うほどでもなく、ぞろぞろと人が歩いている感じ。

 日中よりもライトアップやプロジェクションマッピングが見られる夜の方が華やかで写真映えもすることでしょう。

 札幌市民であれば、どちらかというと学校や仕事の終わった夕方から夜の方に出歩く方が多いかもしれません。

 私たち家族は「明日(水曜日)の夜に見に行こう」ということにしてあって、夜にまちなかで食事をする予定。

 もうすぐ札幌を離れる娘と孫は、今回のあとはなかなか見られないイベントになりそうですしね。

 札幌市民でも「雪まつり?混んでるし行きませんよ」と言う人が結構多いのですが、私は残念に思います。

 今日タクシーに乗ったときに運転手さんに「お客さんは出ていますか?(内心、さぞ多いことでしょうね)」と訊いてみたところ、「あ、ダメですね、全然出ていません」とのこと。

「ええ?そうなんですか? 雪まつり中でしょ?」

 すると運転手さんは「雪まつりの直前はバンバン出ましたが、雪まつりの期間に入ると地元市民の動きはパタッと止まるんです。市民は雪まつりとよさこいソーランの期間中は外に出るのがイヤみたいですね。これね、毎年そうなんですよ」と言います。

 せっかく世界からわざわざ来てくれるようなイベントなので、私たちも参加して楽しんで同じ時間を共有する思い出を作る方が良いと思うのですが、慣れない喧騒には辟易する人も多いようで。

 
      ◆


 さて、この期間中大通公園では交通規制が行われます。

 歩行者優先のために、普段は何気なく大通公園を自動車で横断できる道路が何本も通行止めになります。

 昨日もちょっと営業周りに出かけて、夕方に会社に戻る際にいつもの気持ちで大通公園を横切ろうとすると「おっと、通行止めか」。

 そこで200mほど東側の道路へ向かうと、なんとこちらも通行止め。

 仕方なく絶対に通行止めにはならない国道を経由して遠回りで会社に戻りましたが、この期間の国道は交通量が多いうえに、道路端に寄せられた大量の雪で車線も狭まりもあってまあ大混雑。

 普段は5分くらいで着くところが30分近くも時間がかかりました。

 今度から走るルートは事前にしっかり選ぶことにします。

 今週は全般的に天気は荒れない予報なので、絶好の行楽日和が続きそう。

 すすきの会場の氷の像は寒さが功を奏して美しい姿を見せてくれていました。

 細い大鎌なんてすごい造作ですよ。

 冬の寒さを大いに楽しみましょう。

 

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たかがワカサギ釣りも追求すると奥が深い

2024-02-04 22:00:51 | 釣りのはなし

 

 氷上ワカサギ釣りのシーズン真っ盛りです。

 全道の有名な釣りポイントでは多くのワカサギ釣りファンがテントを張って風から身を守りながらの釣りを楽しんでいることでしょう。

 私も先日、妻と友人らと早朝からワカサギ釣りを楽しんできたのですが、テントを張るのに随分と手間取りました。

 行ったのはいつものホームグラウンドの湖なのですが、湖面上に雪が全くなくて、降った雪も解けて凍って、全編氷の上という感じ。

 普段はコーチスクリューという長さ20センチくらいの木ねじのお化けを湖面にドリルでねじ込んでテントを固定させるのですが、そのネジが回せど回せど一向に入りません。

 先が甘くなっていたのかもしれませんが、同行の友からも「何やってるの?」とあきれて笑われる始末。

 こういうちょっとした道具にも慣れたベテランはこだわりの一品があるわけで、「コーチスクリューも長さ30センチのものじゃなきゃダメだよ。中途半端なものを使うからだめなんだよ」と指摘されてしまいました。

 まあとんでもないスタートでしたが、魚探の反応は上々で、穴に仕掛けを落とせばすぐにワカサギがかかるという感じが続きます。

 さらには、一匹を釣ったところで少しだけ電動リールを巻きあげて少し間を取ると、さらに二匹目、三匹目がかかる多点掛けも連続してありました。

 こうなると穴が一つでも調子よく連れて、200匹オーバーという良い釣りになりました。

 もっとも一緒に行った友人たちは、一人で左右に二つ穴を開けて、電動ロールも二本使い。

 これで右で釣れてそれをあげているうちに左がかかり、右の魚を外して沈めたところで今度は左のリールを巻きあげる…という釣りで、一人で500匹以上、ときには1,000匹を釣り上げるというのですから、まあとてもついて行けるものではありません。

「何匹釣れた?こっちは200だけど」
「ひえー、早いな、こちらはようやく80匹くらいだよ」

 私の場合、大抵友人の半分以下~4割ほど、というのが釣れる数の相場なのです。

 釣れる友人にそのコツを聞くと、錘の重さ、釣竿のメーカーと度の穂先を買うか、リールの先の穂先の角度、釣れたときの竿のあげ方など、全てにわたって旨い人なりの経験の数がありました。

 上手な人の真似をして自分のレベルを上げたいものですが、その友人の口癖は「釣りは道具だよ、道具! 本当に良いものを買わないとダメ!」です。

 安物でごまかすという考え方では上手にはなれないようですね。 

 

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若者が都会に出るのは稼げないから ~ 専門業が成り立ちにくい地方の暮らし

2024-02-01 21:10:51 | Weblog

 

 ネット記事サイトPresident Onlineにコラムニスト荒川和久さんの「地元の仕事では『年収300万円の壁』を超えられない…結婚できない若者を生み出す『36道県』の残酷な現実」という論考を読みました。 https://president.jp/articles/-/66797

 副題は「だから若者は都会に出て行ってしまう」とあります。

 論考の主題は、若者が地方からいなくなる問題です。

 かつてコロナ禍が日本中を襲ったときに、リモートワークが流行し人と接する機会の多い東京から人口が流出したという報道がありました。

 しかしそれは実は事の一面で、東京から人口は流出してはいませんでした。

 相変わらず東京への一極集中は変わっておらず、一方で地方は一向に創生されてはいないのです。

 ではどんな人たちが人口の移動に関わっているのか。

 18歳で進学する大学を選別するとき、そして大学卒業の22歳時に就職先を目指して都会へ移動をするということが統計では示されています。

 生まれ故郷の出生数と25歳時点居住地の増減率を著者の荒川さんが調べてみると、出生人口が生まれた時よりも増えているのは東京、東京圏の埼玉、千葉、神奈川、そして近畿圏、愛知、宮城、福岡、岡山の11都府県のみだったそうです。

 つまり多くの若者が25歳段階で生まれ故郷を後にして都会を目指して移動しているという実態です。

 
 著者の荒川さんはその理由として「若者は仕事のある都会へ移動する」と言います。

 逆に言えば見放される地方は「仕事がなく稼げないところ」なのだと。

 論考は、その結果としての「稼げない」ということは婚姻数の減少にも影響しています。

 稼げる仕事を目指して都会へ出る若者は結婚もできますが、稼げない地方で暮らす者は結婚ができないという傾向がはっきりと見て取れます。

 男性の結婚には「年収300万円の壁」があると言われていて、これを超えるか超えないかで既婚率が大きく変わることも指摘されています。
 
 
       ◆


 著者は、国も自治体も手を打っていないわけではないが、地方に仕事を作り稼げるのは実際は難しく、さらには稼ぎ以上に若者を都会に誘う要素があるといいます。

 それは「交流」ということで、人と出会うことで人は成長し、出会いを通じてその先に恋愛や結婚というステージにたどりつくのだと。

 人が集まる場所だからこそ交流が可能になり、人がいないところには交流は生まれず、地方にはそこが圧倒的に不利に働くのだと。

 著者の結論は、「未来を作るのは若者であり、若者が自分の可能性を確かめるために出ていくことを(止めるのではなく)むしろ応援してあげるべき」ではないか、地方創生の名の下に、若者に我慢や犠牲を強いることがあってはならないのではないか、というものです。


       ◆


 非常に当を得た論考だとおもいます。

 実は稼げる仕事と言う視点でも、地方に根差している仕事とは農林水産業という一次産業、建設業などの二次産業が中心ですが、都会では圧倒的にサービス産業としての三次産業が割合を高めています。

 しかしこのようなサービス産業が成り立つのは都会という人(=需要家)がたくさんいるところだからです。

 若者が人それぞれに興味を持つようなニッチな産業は人が多いからこそ成立します。

 ネイルサービス、ペットのトリマー、エスニック料理専門店、不動産業などちょっと考えても、これらが人口と需要が不足する地方では成立しないことが想像できます。

 地方が苦しいのは、これらの特殊な能力を身に着けてもそれだけで収入を得て暮らしてゆけるだけの需要が少なく食べていけないこと、もちろん機会が少ないことでより高度な技術を身に着けることができない、ということもあると思います。

 地方では専門業が業としてなりたつだけの需要がなくなってくるということが問題です。

 さて、そこでそれを支える発想の転換がなにかというお話です。

 私はここで、「地方における多能工」と「分業型社会から参加型労働社会への転換」への可能性を論じたいと思います。

 地方では専業が成り立ちにくい中で、一人ひとりが「それもできるけどこれもあれもできる」という多能工化することで、専業+軽サービス+軽労働の組み合わせで収入を得るという考え方です。

 分業型社会は専業者によって経済活動を効率化しようという適応ですが、地方ではそれが成り立たないとすれば、専業を持ちつつ、地域の求めに応じた仕事/務めを果たし、それで収入を補えないか、と言う考えです。

 腕は磨けないかもしれませんが、地域の少ないニーズに応えながら地域で重宝されながら暮らしてゆく。

 そのためには、住民も公務員も皆が副業を認めるような機運も必要になるかもしれません。

 公務員ですら地方では有用な地域の務めの担い手として、多能工で副業も可能にするような社会にならないものでしょうかねえ。

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