公務員の定数削減の動きが続く昨今、少数の仲間を精鋭として活躍できるように人材を育成するというのはとても重要な課題です。
今日は職場の管理職研修で「人材育成を促すマネジメント」という講義を受け、人材育成能力を高めるための研鑽を深めました。
講師は北大経済学研究科の松島睦教授。小樽商大をご卒業後に薬剤会社へ勤められたのですが、そこで薬を売るのに一向に売れなかったという経験をお持ちです。
そこで「売れる営業マンは何が違うのかなあ」ということを研究の材料として、結果、今日人材育成についていくつも著書を出されるなどされており、今般講師をお願いした次第。
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松尾先生はドラッカーの「他人の育成を手掛けない限り、自分の能力を向上させることはできない」という言葉を引いて、人材育成をすることが自分の能力向上にもつながると言います。
我々も仕事を経験するうちに何人もの上司や何人もの部下と付き合いますが、本当に自分を育てれくれた上司の顔が浮かぶでしょうか。また自分が育てた(つもり?)の部下の顔は浮かびますか。
実際には人を育てるということは実に難しいものです。今日の松尾先生の講義のタイトルも、「人材育成を【促す】マネジメント」となっていて、「人材育成のマネジメント」ではないところに注意が必要。
やっぱり育つのは自分自身の問題で、たとえ上司といえどもそれを促すような導きくらいまでしかできないということなのかな、と思います。
さて、松尾先生のキーワードは「経験学習」というもの。
先生は「70:20:10」という比率を示して、「これは人が何から学ぶかという比率なのですが、70は自分の経験、20は他社からの薫陶、10は読書や文献ということです」と言います。つまり多くの人はほとんどを自分の経験から学ぶのだと。
ではどんな経験が自分を成長させるかというと、ある調査の結果それは、
①部門を越えた連携の経験
②変革に参加した経験
③部下を育成した経験 の三つだったそう。
毎日ルーチンワークをうすぼんやりとこなしているだけではやはりだめで、自らを鼓舞して新しいチャレンジをしていかないと人は伸びません。
そして経験学習のモデル図として下記の図を示されました。
この図では具体的経験をしたら、一度それを振り返って、言語化し持論としてまとめる。そしてそれを新しい状況など次に生かすということを繰り返すことで、経験が自分の本当に身になって行くのだと言います。
図に三角形が示されているのは、多くの人は経験をしっぱなしで内省し持論化するということをやらない、ここに断絶があるということの意味。
実はこのあたりは私自身、ストンと腹落ちするところで、私が日々ブログを書いているのも今日一日の中の前向きなネタを振り返って記録しておくことで見に着いたり、後々検索することもでき、さらにはこのネタで他の人と語り合うこともできるから。
今日一日を言語化しておくということは大切なんだな、と思います。
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さて、経験から学ぶ力のモデルとして松尾先生は今度はこんな図を見せてくれました。
この図で"ストレッチ"というのは背伸びをするというような意味で、少し高いところに挑戦する精神のこと。
そして"リフレクション"というのは振り返ってみる(内省)ということで、最後の"エンジョイメント"というのは楽しもう、ということ。
つまり、ちょっと高い目標にチャレンジしてできてもできなくてもなぜかを振り返って、それを楽しみながらやりましょう、ということが経験から学ぶときのポイントなのです。
そして図の真ん中に「思い&つながり」というのがあるのは、何かをしようという意思とそれを支える繋がりがこれらのそもそものエンジンになるという説明でした。
目標を持つということや振り返るということは良く言われますが、こうして一つの形で示されると分かりやすいですね。
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さて目標を与えて部下を育成すると一言で言いますが、実は我々の組織は目標を自分で作成して達成するというシーンが案外少ない職場です。
仕事はどんどん外から降ってきてそれをとにかくこなすことが中心になってしまいがち。先生の言うような変革のタネを周りにまき散らすというのはしばしば嫌われたりもします。
しかし経験を中心にして周りの成長を促して自分も成長するというのは自分に期待されている役割でもあるので、これからは目標設定をもう少し意識してみようと思います。
講義は進め方も上手で楽しく受講できました。良いやり方は大いに見習いたいと思います。
松尾先生、ありがとうございました。
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