北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

もう、メモしなくちゃだめなんだよ

2024-04-27 23:23:42 | 介護の世界

 

 先日買い物サポートで実家へ行った時のこと。

 母がため息をつきながら、「いやいや、爺ちゃんにひどい目に会ったよ」と嘆いています。

「どうした、どうした?」

 母と父は週に一度、地区の会館で開催される麻雀の集いに参加しています。

 ところがその日はちょうど父が月に一度病院に行く日だったので、母は一人でマージャン会場に向かい、父には「病院から帰ってきたら、薬を置いてすぐにこっちの会場に来てよ。お昼の食事は用意してあるんだからね」と何度も念を押して伝えたとのこと。

 そうして当日は一人でマージャンを楽しんでいた母ですが、普段なら父は病院から11時には家に帰ってくるはずで、遅くても12時までには会館に来るだろうと思っていたのに、「それが、1時になっても1時半になっても全然来ないの。どうしたかな、と思ってマージャンを中断して家に帰ってみたら、素知らぬ顔でパンを食べているんだよ」

「あれだけ『ちゃんと来るんだよ!』と念を押したはずなのに、もう忘れちゃうんだからね、は~」

 私の方もぎゃくに呆れてしまって、「婆ちゃん、それが認知症ってことなんだよ。だから『ちゃんと伝えたんだから覚えているはず』という思いを捨てなくちゃダメじゃん。これからはやってほしいこと、伝えたいことを紙のメモにして絶対わかるところに貼っておくとか、マジック黒板を買ってきて書いておくとか、とにかく伝言を文字にしておくようにしようよ」

 それを聞いて母も、「そうだねえ、もうそうしなくちゃダメか」と少しは納得した様子でした。

 しかしそもそももうここ2年程前から、父の認知症が進み始めていることに気が付いている母のはずですが、それでもどこかにまだ「正常であってほしい」という期待と願望が消えないのでしょうか。

 
 買い物を終えてから実家に上がり、新聞を読んでいた父に、「なに、マージャン会場に行くのを忘れちゃったんだって?」と話しかけてみると、「ああ、そうなんだ、全然忘れちゃって腹が減ったからパンを食べていたら怒られてさ(笑)」とばつが悪そうながらも笑う父。

(あれ、それで怒られたことは覚えているんだな)と思いましたが、記憶も健忘もまだらに表れてくるのが初期の認知症ということです。 

 父は最近また真夜中に起きてしまうようになったとのことですが、それでもそこから外に出て徘徊をしたりするわけではないし、食事も風呂もトイレも全く問題なくできているのが最大の幸運です。

 認知症もどのような症状として現れるのかは自分の思い通りになどいかないわけですから、大いに助けられています。


       ◆

 
 母は、「爺ちゃんはいつも『俺はいつまで生きるのかなあ』と言うようになったんだよ」と言います。

 それを聞いた父は「だって、体のどこも悪くないんだぞ」と。

 返す刀で母は「だから、頭が悪くなっているんだって(笑)」と言い、父も「そこだな、問題は」「わかってるんだ」で3人して爆笑。

 こういう会話がいつまで続けられるのか。

 暖かくなった春の一コマです。  

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