北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

ほんの少し前の数字が物語ること

2017-10-06 23:55:55 | Weblog

 ほんの少し前に起こった事実を少し振り返ってみたいと思います。

 長かった自民党政権が倒れて民主党が政権を奪取し、3年後に再び自民党が巻き返して自公連立で政権を取り戻すという政治劇があったのはほんの数年前の出来事です。

 当時の民主党が政権を取った時には事業仕分けなどテレビ映えするドラマチックな政治ショーもありましたが、それ以外にも実に多くの変化がありました。

 世の中の多くの人たちは表面的な政治劇を楽しんだかもしれませんが、その時に何が起きたのかは数字が如実に物語ります。

 私が勤務する(一社)北海道舗装事業協会では、道内の道路の舗装工事の状況を調べていますが、政権交代時には大きな変化がありました。

 その代表例が、国道の補修・修繕工事の推移です。

 ちなみに、「道路補修」とは、穴が空いたりひび割れたりした部分だけをつぎはぎに直す工事のこと。ちょっとガタガタしますが、ひび割れなどそれ以上の劣化を防ぎます。

 また「道路修繕」とは、何百メートルかにわたって傷んだ表面を薄く削り取って新しいアスファルトを敷いて締め固めるもの。一見すると新しくなって、走っていて気持ちの良いものです。

 下のグラフは、(一社)舗装事業協会調べですが、北海道開発局が国道を維持管理するために発注した、道路補修・修繕工事の金額をグラフにしたものです。


                            【(一社)北海道舗装事業協会調べ】

 

 民主党政権が誕生したのは、平成21年9月に鳩山由紀夫内閣が誕生して、本格的に民主党による政権運営が始まりました。

 その中では翌年の平成22年の予算配分についても数多くの政治的判断が下されましたが、その代表的なキーワードは「コンクリートから人へ」であり、その結果がまさにこのグラフです。

 平成21年までは道内の国道を補修・修繕するのには約70億円ほどの予算が年間で使われていましたが、政権交代が行われた翌年の平成22年からはこれが激減。補修と修繕を合わせても13億円と5分の1以下に削減されました。

 民主党政権は、特に公共事業がお気に召さず、なかでも持てる資産の維持管理には特に冷たかった印象があります。(個人の感想で、その度合いには個人差があります)

 印象に個人差はあっても、道路の維持管理にはお金をかけなくても良い、という判断があったのでしょう。結果はこの通り。

 政権を維持していた3年間というもの、道路の維持管理はひたすら我慢でした。

 申し上げたいことは、「このことが舗装業界にとって痛手だった」という業界の我田引水的な擁護論ではなくて、その結果は道路の傷みと言う姿になってはっきりと住民生活や道路利用者の不便と言う形で表れてきているという事です。

 自民党に政権が戻ったときに、「さすがにこれじゃいかん」ということで、補正予算がついて瞬間風速的に事業量が伸びましたが、3年間もこの予算枠で運用されたら、そこでの浮いた予算は別なところに配分されているわけで、おいそれと元へは戻せないのが国の予算の悲しいところ。

 その後はじり貧が続いているのが現状で、一気に元の予算水準にはとても戻せません。

 ここ最近、皆さんのお住まい周辺の国道の走行環境はいかがですか?良くなったと感じていますか?次第に悪化していると感じませんか?


          ◆ 


 これだけ道路の補修にお金をかけないでいる時期が続いているという事は、道路が直されないままに劣化し、それが全体として静かに進行し、社会の質が低下しているということにほかならないのだと思います。

 こういうことを身近なところで感じているので、私たちは「公共事業を削減してその費用で他の政策を行う」ということを堂々と言う政治家は、本当に地方の現実を知らないか、あるいはもう十分に出来上がってしまって維持管理費も潤沢にねん出できる"大都会"しか見ていないのではないか、と疑いたくなってしまいます。

 社会インフラの多くが先人たちの苦労で出来上がってきて、それらは将来にわたって維持されるのも公共事業の枠のなかの仕事です。

 社会が全体として機能するという事の、その現実を広い視野で見てほしい。全てはやがて自分の身に降りかかるのですから。

 一部に「道路の予算をいくばくかJRに回せば鉄道網は維持できるのではないか」という意見もあるようですが、我々からしたら、そんなことをすれば鉄路も道路も成り立たない"共倒れ"になる危機感を感じます。

 我々が「道路を良くしたい」と言うのは、社会に対する責任感があるからです。

 

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