阿寒湖畔での二日目。
昨夜は湖畔のT旅館に宿泊したが、当日の宿泊者が奇しくも晩御飯で一緒になり、釣談義に花が咲いた。
魚の生態の話、道具の話、フライの作り方、
宿泊者の内訳は、札幌方面から3人、埼玉県から1人、横浜方面から1人、それに私の計6人。
誰もが阿寒湖でのニジマス、アメマスの釣りが楽しみで仕方がないのだが、全員なかなか釣れないと苦笑い。
今年は例年と様子が違うという点では意見が一致した。
館主で師匠のMさんも、「さっき見た通り、撒き餌をすればやってくるのはアメマスの群れ。例年はこんなに遅い時期にアメマスがいるわけがないんだけど、まだ産卵のために川に上がりきっていないんだなあ。ニジ(マス)とアメ(マス)の関係って不思議なんだけど、アメの群れがいる限りはニジが出てこないんだよ。何を遠慮しているのかと思うんだけどね(笑)」と首をひねる。
明日こそ頑張りましょう
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朝は5時半に宿を出発。昨日と違って雄阿寒岳の頂上付近は雲がかかっている。
昨日と同じく阿寒湖の大島へ渡船で渡してもらってニジマスを狙ったのだが、今日は昨日よりも風が出て魚たちは全く反応がない。
仕方なく10時ころに船を呼び寄せて宿へ退散。やっぱりまだ季節が悪いのかなあ、と皆すっかりあきらめ顔だ。
札幌組はもう帰り支度を初めてここでお別れ。遠くからくる人たちがこちらで使える時間には限りがある。
「釧路にいるっていいですねえ、本当にうらやましいです」
夫婦連れはまた来月来る予約を入れて帰っていった。来月こそ本当にニジマスの季節が来ることを祈りたい。
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残った私は師匠に連れられて、午後の時間を使って最後のあがきでひょうたん沼へ向かった。
もう暗くなろうかというころにやっと25センチのアメマス二匹が釣れた。
それが今回の釣果の全てだったが、全くのボウズよりはマシだろう。
それに釣果を求めるのも良いが、それよりも師匠と時間を過ごす中で目の前で起こっていることを説明してくれる言葉の全てや、釣りの合間の様々な会話にこそ何よりの価値があると思える。
ニジマスの大群にはまだ会えないが、きっと機が熟していないだけだ。
風景、釣り人とのつながり、阿寒湖の見方、故郷の全て…
きっと知らないことを一つずつなくしてゆくのが人生で、それでいて実は、新しいことを一つ知れば知らないことが二つ増えるのも人生なのに違いない。
そしてわが故郷の話題とネタをひとつずつ増やしながら生きるのが良いと思うよ。
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ちなみに、東京出張で風邪を拾ったらしく、阿寒湖畔へ来てからも背筋に悪寒が走っていた。
それが二日間の釣りで風邪が一気に吹っ飛んでしまった。
釣りをしている最中はずっと闘争本能が全開で、体中にアドレナリンが出まくっているのが良く分かる。
なにしろ、釣りをしていると空腹を忘れ、寒いのも忘れ、尿意も吹き飛んでいるなど、およそ体に不都合なことを感じなくなるのだ。
風邪が吹っ飛んだのもアドレナリンのおかげだと勝手に信じているが、誰か医学的な根拠を知っている方がいたら教えて頂きたい。
「風邪を引いたら釣りへ行こう」って、いいキャッチコピーだ思いませんか?