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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

スコットランドの住宅事情

2010-01-15 23:44:55 | Weblog
 先日、「スコットランドの高齢者住宅」に関する勉強に出席しました。

 スコットランドはイギリス本当の北部にあって、面積が78,772平方キロメートル、人口は512万人と北海道とほとんど同じような行政規模の地域です。ここでは1998年に権限委譲と分権議会の設置を定めたスコットランド法が成立し、1999年にスコットランド議会が設置されました。

 スコットランド議会は一定範囲で所得税率を変更することができる他、スコットランド法でウェストミンスター議会留保事項と規定されている事柄以外について、独自の法令を成立させることができ、これまでに、福祉政策や狐狩り規制、公共施設内での禁煙などに関して、スコットランド独自の法令が施行されているのだそうです。

 スコットランドとイングランドを取り巻く歴史的環境は違いますが、道州制を進める北海道も大いに参考になる話です。

 さて、そんなスコットランドですが、昨年日本からの視察団が訪れました。そしてその際に現地で通訳を引き受けてくれた現地在住歴10年の日本人建築家がこの年末年始に帰国している間の日程をお願いしての報告会を開催したというわけです。

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 スコットランドの65歳以上高齢化率は2006年の数字で21%というもので、2005年国勢調査の結果では北海道は21.4%ですからこちらも似たようなものです。しかしスコットランドでは日本よりもずっと手厚い高齢者のための住宅政策が採られています。

 スコットランドでの高齢者医療、介護の定義は「高齢者がコミュニティ内で独立して活動的に生活を送るため」と定義されていて、自立度をあげること、自立度を下げさせないということを非常に大切にしています。

 スコットランドでの高齢者向け住宅としては、以下の4種類があるそう。

①ナーシング・ホーム(看護つき高齢者住宅)
 24時間の医療設備、医療スタッフを備えた高齢者向け住宅。認知賞、がん等介護目的が住宅と語に違い、それらの医療目的に合う設備、スタッフを備えています。

②エクストラ・ケア(ベリーシェルタード)・ホーム(要介護つき高齢者住宅)
 自立した日常生活を送るために、より高いレベルの補助(着替えやベッドからの寝起き等)を必要とする入居者のためのサービスが提供されるもので、通常、24時間、スタッフが常駐し入居者のケアに当たる。

③ケア・ホーム(介護つき高齢者住宅)
 24時間の介護は備えていないが、ごく簡単な医療サービスや、入居者が自立した生活を送るための日常生活の補助(食事、入浴、洗濯)が提供される。

④シェルタード(リタイアメント)・ホーム(健常者向け高齢者住宅)
 介護を必要としない健常者に向けた高齢者住宅で、24時間の管理者をおき、緊急のアラームシステムや食事、洗濯等のサービスを備えている。

 
 これらのうち民間が参入しているのは④だけで、①から③は公共が提供する施設だそう。①は完全に医療施設ですが、行政府が今力を入れて増やそうとしているのは②のタイプで、まずは自立して住みながらオプションのケアを増やしてゆくという方法を取っています。

 イギリスでは住宅も生活最低保障の対象で、家を失った人が行政に申請を行うと地方自治体ではその人に住宅を提供する義務を負い必ず住宅が提供されるのだとか。

 日本では医療や義務教育というサービスが実に安く受けられ、お金持ちだから受けられて貧乏人は受けられないという市場に委ねるのではなく公共がそれを負っています。

 これは「それが大事だ」という社会の価値観がそこにあるからに外なりません。ところが家を提供するということに関しては日本はその多くを市場に委ねてしまっています。つまりお金持ちは良い家に住めるけれど、貧乏がきわまると家に住むことが出来なくなってしまいホームレスにならざるを得ないというわけです。

 そうしたホームレスに対して、「努力が足りない」とか「運が悪かった」、「もっとがんばらなくてはだめだ」という評価をすることも可能ですが、逆に「最低限の家くらいは与えるべきだ」という価値観念があったってよいのです。

 住居提供だけではありませんが、そうした充実した社会福祉を実践するイギリスの消費税は17.5%です。イギリスの人たちはこれを当然の負担と見て納得しているようです。

 低福祉低負担の社会に住む日本人はこのことをどう考えるのでしょうか。

 社会保障を充実させるためには応分の負担をする覚悟はあるでしょうか?政府は増税路線に舵を切るでしょうか?
 
 社会保障の分野は生涯学習してみる価値のあるテーマです。 

  
コメント
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