北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

認知症のための住宅 in スコットランド

2010-01-16 23:17:44 | Weblog
 前回のスコットランドの住宅政策に関する話題でもうひとつ。

 スコットランドのスターリングというところにあるのが国立のスターリング大学。ここのキャッチコピーは「世界で最も美しいキャンパス」なのだそうで、アースレー湖に囲まれてアースレー城を有するなど実に美しいのだそうです。

 日本からの視察団はこの大学の認知症サービス開発センターでもヒアリングを行いました。こちらでは認知症の方に対するさまざまなサービスの研究が進められています。

 認知症の人でも一人で自立した生活が出来るようにするという基本的な哲学を実現するための研究です。認知症になっても自立した生活を勧めるというのはイギリスらしいというべきでしょうか。日本だったら危ないのですぐに施設に入れる方を選択しそうです。

 具体的な研究活動は、認知症に対する介護、住環境など認知症に関するさまざまなサービスの研究で、福祉士や看護士への認知症患者に対する介護方法のトレーニング、住宅デザインに関するアドバイスなどを行っています。

 面白かったのは、認知症の人が暮らす住宅のデザインです。認知症の人はトイレがどこかもわからなくなってしまうので、トイレのサインの中に人のマークだけではなく文字、トイレそのものの絵などを描きこむことでトイレであることをわかりやすくしています。




 また浴槽では鏡が取り外せるようになっているそうで、これは鏡に映った姿が自分であることに気づかずに驚いて転んだりするからだそうです。

 冷蔵庫や収納部分では中に何が入っているかわからなくなるために、扉を透明にして中身が見えるようにするデザインを薦めています。

*中身の見える冷蔵庫*


*中身の見える収納*




 さらに、日曜大工のお店に行くとドアのさまざまなデザインの壁紙が売っているのだそうで、これを買って個性的なドアにすることで自分の家を間違えなくなるという工夫もあるのだとか。

*実はシールの個性的なドア*




 ここまでしてでも自立した生活を送ってもらおうという姿勢がすごいですね。イギリスでは高齢者の居場所として支える場所はコミュニティだと考えているよう。日本では圧倒的に家庭なのですが、このあたりがお国柄の違いでもありましょうか。

 社会的弱者の担い手としてまだまだ家庭に期待する部分が多い日本と、もう社会問題だとしてコミュニティや行政に委ねるほうが良いという選択をしている欧米諸国。

 家庭の力が衰えつつある日本が、家庭の力を強化する方向に向かおうとするのか、それとも負担増を受け入れて社会化するほうが良いのか、まじめに議論をしたいところです。
コメント
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