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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

骨髄移植について(2/5)

2006-08-01 23:06:55 | 骨髄移植について

 全5回にわたる骨髄移植のお話の②です。
 もし読者の皆さんの中で私の経験の時期、場所などをご存じの方がおられても、それらを明らかにする書き込みはどうぞご遠慮ください。


【一通の手紙から】
 突然来る手紙には「あなたと適合する患者さんが見つかりました」と書かれていました。

 この段階でまずドナー登録者は一つの判断を要求されます。次の段階に進むのか、それとも今回は自分に提供する意志がないので止めるのか、という選択です。辞退することが恥ずかしいという事は一切ありません。あくまでも自分自身の都合や事情は最優先されます。

 しかし自分の経験ではこの手紙が来たときが一番迷いが出る瞬間でした。

 骨髄提供をしたいという思いでドナー登録をしていたはず。しかし実際に提供するのかと思うと医療には必ずリスクもあるだろうし、やはり一抹の不安はつきまといます。(最悪死んじゃったらどうしよう)とさえ思う、心の葛藤が生まれるのです。
 そして辞退する事は決して恥ずかしい事ではないのです。

 それに家族の同意も必要です。独身ならば親、結婚していれば配偶者や子供などの理解が必要です。どんな理由で止めてしまっても構わないのですが、進む事に迷う自分と崇高な使命を果たしたいという思いが一番ぶつかる瞬間です。

 実際骨髄提供をしようとすると、通常で三泊四日の入院が必要で、休業補償はありませんし当然報酬もありません。しかし一定規模の大企業や官庁などであれば特別休暇制度がありますから、有給休暇で休む必要はないのがせめてもの救いです。

 私の場合は、過去に一度提供しようという思いから、候補の一人としてこの先に進んだことがありました。このときには最終的にはなんらかの理由で最終候補者にはならなかったのですが、この経験があったので、今回もこの先へ進んでみようと決心ができました。


【コーディネーターとの出会い】
 骨髄移植推進財団からの手紙が来て数日のうちに、財団のコーディネーターの方から電話が来ます。ここから先は手続きから疑問・質問、様々な相談事などは全てコーディネーターを通じて調整が図られます。私の場合はAさんという女性がついてくださりました。

 私が提供の意志を示した事で、まずは近くで指定の医療機関で採血して、登録された情報よりもさらに詳しく遺伝子レベルまでの検査が行われます。そしてその際に調整してくれる医師の立ち会いの下で、コーディネーターから今後のことについての医学的な説明が行われます。

 説明はマニュアルに沿って行われ、医学上の質問や疑問は医師が答えてくれるという形になります。

 コーディネーターは説明に漏れがないか、ドナー候補者は本当に内容を理解しているかを入念に確認します。説明責任を厳格に果たさなければ後々医療トラブルになりかねないので真剣です。

 しかしコーディネーターも医師も、決して「提供してくれるとありがたい」などというような勧誘の言葉は一言も発しません。あくまでも事実を淡々と述べるにとどめ、背中を押すようなことは決してしない、それがルールです。

 ドナーからの骨髄採取は骨盤の後ろ側から行われるという事も教えられます。
 一般に一番多い誤解は、骨髄と脊髄を混同しているものです。このことから骨髄採取の針は背骨に刺すと思いこみ、そこから神経を損傷する事があって危ないと考えがちですが、これは全くの誤解なのです。

 骨髄液は骨盤の腸骨と呼ばれる大きな骨から取ります。

 採取の位置は、背骨を中心にして左右に10センチくらいの間隔で、ベルトの位置からは5センチほどの下の位置が一番骨が皮膚に近いことや骨が大きい事からそこから採取するのです。

 採取のための針はボールペンの先くらいといいますから、それなりの太さがあります。
 骨髄移植では一番欲しい骨髄幹細胞が含まれる骨髄液は、針を刺して吸引しても一カ所からは数mlしかとれないのだそうです。そのため実際の採取は、皮膚と骨にあけた同じ穴から角度と方向を変えて骨のなかをぐさぐさと刺しながら採取するそうです。

 骨髄液の必要量は約800~1000mlだそうで、患者さんの体重1kgあたり15mlという基準で採取量が決まるのだそうです。相手が体格の良いプロレスラーだったりすると、相当量の骨髄液が必要になります。

 調整医師は訊ねないのに、死亡のリスクも教えてくれます。これまで世界では骨髄移植の手術に起因して4人の死亡例があるとのことです。そう説明をする医師はあくまでも淡々としています。

 危ないとも危なくない、とも言いません。最後の決断はあくまでもドナー候補者本人の意志でなくてはならないのです。

 術後のしびれや痛みが続くといった後遺症例も報告されているそうで、そうした事故への備えとしてドナーには骨髄バンク団体傷害保険がかけられます。手術による事故や後遺症などへの補償はもちろん、骨髄移植に関係して通院をする途中での事故も補償の対象となります。こうした制度も何年もかけて少しずつ充実してきたのです。

 こうして最初の血液検査時の説明が終わります。そうして1~2ヶ月が過ぎた頃にドナー選定の結果がやはり黄色い封筒で通知されてきました。

 選定されない場合はお知らせが来ません。届いた手紙は「先日の検査の結果、最終的なドナー候補者に選ばれました」という内容です。

 私には先へ進んだ段階から「今回こそは当たるのではないか」という予感めいたものがありましたので、至極当然のように受け止める事が出来ました。

 コーディネーターからは再び意思確認の連絡があります。
「先に進まれるかどうかは、ご家族とも相談してご判断してください」という電話が来ます。

 だんだん事が進んでくると、最後には家族の同意が必要なので、ある程度の段階でしっかりとお互いの意思の確認をとっておかなくてはなりません。

 しかしこのこともこの先へ進むのには難関なのです。 (3/5に続く

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