駒子の備忘録

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秀良子『宇田川町で待っててよ。』(祥伝社onBLUEコミックス)

2012年12月23日 | 乱読記/書名あ行
 渋谷区宇田川町、人通りの多い街中で同級生・八代の女装姿を目撃してしまった百瀬は、その日から毎日「あのこ」のことを考えてしまう…臆病な女装男子と一途すぎる男子高校生との不器用で青いラブストーリー。

 
 このレーベルにはセンシティブでエッジの立った秀作BLが多く、これもおもしろく読みました。絵はゴツくて好みじゃないんだけれど、ヘンに整いすぎて綺麗すぎないところも、いい感じのリアルさを出しているなと思いました。
 八代は「クラスでいちばん派手なグループにいて」、どちらかと言うと影が薄く鬱屈した百瀬とは全然つきあいがなかったし、百瀬から見たらなんの屈託もなく生きているように見えていたクラスメイトです。
 そんな男子が何故女装するのか、そこにヘンに心理学的に解説じみたことを持ち込まないところがまたよかったと思います。なんの問題も内容でも、それこそが問題だということもあるわけだし、理由がわかったからって何かが解明されるわけではない。そんなことよりその先の方が大事で、百瀬は女装姿の八代に恋してしまったのだし、八代はそんな自分を見つめてくれた百瀬に応えたのです。
 これが同性愛なのかとか異性装なのかとかトランスジェンダーなのかとかそういうことはどうでもよくて、ただ惹かれ合った者同士が、心でも体でも魂でもつながった、というだけのことなんですよね。
 それを描いた佳作だと思いました。

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