駒子の備忘録

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宝塚歌劇月組『幽霊刑事』

2021年03月20日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 宝塚バウホール、2021年3月18日11時半。

 巴東署の刑事・神崎達也(珠城りょう)は、上司の経堂芳郎(光月るう)に突然射殺された。結婚を間近に控え、殺された理由に心当たりがない神崎は、成仏できず幽霊となった。しかし母親(京三紗)も、フィアンセの森須磨子(天紫珠李)すら神崎の存在に気づかない。だが警察学校の同期で霊媒体質の早川篤(鳳月杏)だけは、神崎の姿を見ること、声を聞くことができた。神崎は経堂を逮捕してくれと訴えるが…
 原作/有栖川有栖、脚本・演出/石田昌也、作曲・編曲/手島恭子。月組トップスター・珠城りょうのプレ・サヨナラ公演。全2幕。

 初日が緊急事態宣言下でバウホールなのに客席半分で、さすがにお取り次ぎがお断りになり、一度だけの観劇となってしまいまししたが、ま、それでよかったかな…というのが感想です。
 原作小説も読みましたが、ミステリーとしてもドラマとしてもものすごくおもしろいと思ったとか萌えたとか感動した、とかは特になかったんですよね。で、それが舞台になってものすごく改善されているかというと、残念ながらやはりそんなことはなく、しかも舞台作品としても暗転が多く細切れでパタパタした印象で、全体にあまりいい出来ではなかったように感じられました。いつものダーイシ節を被弾覚悟で行ったのですが、『カンパニー』のときのように青筋立てたくなるようなことはなかったのでそこはよかったのですが、全体にパワーダウンしているというか作品のクオリティが落ちている気がしたので、そちらの方が気になりました。単に時間があまりなくて手をかけられなかっただけ、とかならいいんだけれど、加齢による衰えなのかしらん、と心配で…とにかくなんかすごく凡庸な舞台で、ぶっちゃけ私は退屈してしまったのでした。
 もしかしたら私のごく個人的な意見かもしれませんが、でも、いくらミステリーでも、犯人が誰か、ということに読者や観客の関心はあまりないのではないでしょうか。主人公が被害者、という設定なら、普通の物語なら誰であれ犯人が逮捕されて事件が解決されてハッピーエンドで終わる、ということはごく安易に想像がつきます。だからそこではドキドキしない。それよりも、そうした事件なり捜査の展開なりに絡めて、主人公の心がどう動くか、周りの人物との間にどんなドラマが紡がれるか、に関心が集まるものではないでしょうか。
 だからもっと、達也の須磨子への愛情とか、須磨子に絡む佐山(英かおと)への嫉妬とか、母親や妹(結愛かれん)への情愛とか、刑事としての情熱や誇りや正義感や後悔、心残りみたいなものを、もっと深く描いてほしかったです。みんな、そこを観たいんじゃないのかなあ。
 でもなんか、そういうパートはほとんどありませんでしたよね。神崎さんはわりとあっさりこの状況や自分の死を受け入れているように見えました。だからなんか、観ていてこちらの心も動きませんでした。早川だけが見える!となってわあわあやりとりするくだりはユーモラスで楽しかったけれど、それだけだったかなぁ…まあ、私がじゅりちゃんをあまり買っていなくて、ヒロインとして認めがたいと思っているせいもあったかもしれませんが…なんかあんまり、せつなくなったり、かわいそうになったりしませんでした。せっかくプレ・サヨナラにかぶせてあれこれ良さげな歌を歌わせたりしているんですけれど、なんか響かなかったんだよなあ…萌え萌えで涙、涙だった方、こんな感想ですみません。
 しかし結愛かれんは上手いし可愛いよ、婦警はバイトの彼女が一番可愛いってどーしちゃったんだ月娘…ホント可愛子ちゃんがいないよね…白河りりも可愛いけど、子役じゃもったいないよ…
 あと、ゆりちゃんがいい仕事をしているなと思いました。これまたもったいない使い方ではあるとは思いましたけれどね。まゆぽんはさすが上手い。
 バウでプレ・サヨナラでたまちなバディものを…という企画意図だったんだろうけど、そしてそれはとても大正解だったと思うんですけれど、でもちなっちゃんならもうちょっとキャラを掘り下げてくるかな?と期待していたのですが、意外にバタバタした芝居だからやる隙がない感じだったかな? なんかもっと、おとぼけなり気弱でへっぽこなり実はクールで切れるメガネくんなり、キャラとしての色をつけてくるかと思ったんですけれどねえ…わりとフツーで、もの足りなかったです。
 それでいえば珠城さんも、いつものフツーの珠城さんで、熱血にもお調子者にもものすごい好青年にもちょっと振りきっていない感じで、やはりもの足りなかったです。脚が長くてカッコいい、のは堪能しましたが…ううーむ。
 フィナーレは短かったけれど、振りがお洒落で素敵でした。ただマスタード色といえば聞こえはいいけれど、黄土色みたいなあのお衣装の色はいかがなものか…もっといい黄色が他にあるだろうに、これまたちょっと残念だったのでした。

 そんなところに、卒業公演のポスターが発表されましたね。ショーのロゴはお洒落さのかけらもなくて残念ですが、ポスター図案はとても素敵。れいこちゃんは仇役ではなく弟役で、そちらも楽しみです。題材的にも、くーみんにしてはベタベタなサヨナラ悲恋悲劇ロマンスになるんじゃないかなという予感ですが、さて、どうなることやら。期待しています!





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