駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇月組『ダル・レークの恋』

2021年03月21日 | 観劇記/タイトルた行
 TBS赤坂ACTシアター、2021年2月19日13時。
 シアター・ドラマシティ、3月18日16時。

 インド最北部、インダス河の流れるカシミール。毎年夏になると、世界各国の大使・公使や富豪たち、それにインド諸州の王族たちが避暑にカシミール・ホテルまでやってくる。今宵は今夏最後の舞踏会。ベナレスの領主チャンドラ・クマール(千海華蘭)の孫娘で、やがてデリー大公ゴヤール王家の女官長になる身の上のカマラ(海乃美月)も、祖母インディラ(梨花ますみ)、従兄弟クリスナ(風間柚乃と夢奈瑠音の役替わり)とその妻アルマ(夏月都)らとともにこの地で一夏を過ごしていたが、明日にはクリスナの城があるハイダラバードへ発つことになっていた。カマラはこの夏、騎兵大尉ラッチマン(月城かなと)と恋に落ち、ふたりの仲は舞踏会で公然のものとなった。ふたりの噂が夫チャンドラやゴヤール王家にまで聞こえ、カマラと家の名誉が失われることを恐れたインディラは、カマラにラッチマンと別れることを命じるが…
 作/菊田一夫、監修/酒井澄夫、潤色・演出/谷貴矢。1959年初演、1997年に1本立てにリメイク、2007年にも上演された不朽の名作。全2幕。

 マイ初日雑感、というかまさかの月城日記はこちら

 はー、あと100万回観たいです。
 ドラマシティは、2階席もないし客席としては赤坂ACTより小さいかと思うのですが、舞台のサイズは気持ち大きかったりしますかね? そんなこともないかな? なんとなくややスッキリして見えて、好感を持ちました。そしてそんな空間でよりしっとり、より練り上げられ、より濃密に展開されるお芝居よ…はー、堪能しました。「ル・サンク」ってトップ主演公演しか出ないんでしたっけ? もっと舞台写真が欲しい、そして脚本が読みたい…浸りたい…はー……
 役替わりについては、星組大劇場公演『ロミジュリ』でもティボルトも死も愛ちゃんで観たい!となったりしたのですが、今回もペペルもクリスナもおだちんで観たい!となりました。
 いや、るねっこのクリスナも優しそうで鷹揚そうででも実は全然相手とか民草のこととか考えてなさそうな薄ら寒いお貴族さまっぷりを漂わせていて、とてもよかったです。あとバリバリ踊るれんこんもよかった。
 でもありペペルが私にはややもの足りなく思えたので、そこがさすがおださんさすが研30で(笑)、バリッと濃く強い色悪をやってくれたー!とワクワクできたのですよ。プロローグやフィナーレのダンスはもちろんありちゃんの方が断然上手いし、真珠場面の歌もおださんは低い音がまだ出きっていませんでした。そういう技術的な研鑽はまだまだ必要なんだと思うんだけれど、でも芝居はとにかくよかったよなんといってもガラに合っていましたよ! なのでそろそろ白い二枚目とかもちゃんとやらせないと変な色ついちゃいそうだよね、とまで心配しちゃうようなスターさんっぷりでした。よかった!
 おはねちゃんリタに声かけられて、一拍おいて「彼氏」の顔作ってから振り向く詐欺師っぷりとか、たまりませんでした。あと、ありちゃんペペルよりしつこそうで、れいこラッチマンへの恨みつらみをことあるごとに思い出しては悔しがり復讐の炎を燃やしてそうなところとか。そしてラストの「逃げやしねえよ」の大物っぷりね! 口でこう嘯いてカッコつけつつ、やっぱりするっと逃げ出して、またしょーもない悪事をし出しそうなふてぶてしさがすごーくよかったです。そしてそれでも、あるいはそれだけに、ちゃんとラッチマンが格上に見えて、この件に関しては正義の味方に見えて、物語としても締まったと思います。無頼漢を気取っていても、どこの馬の骨ともしれぬ百姓の小倅に身をやつしてはいても、真実とか仁義、正義のためには立ち上がってくれちゃう凜々しさ、清々しさ、優しさや強さがラッチマンから立ち上がる…そりゃみんな惚れるよね、カマラだって本当はそこに惚れたんだよね。ただ家族や体面を捨てきれなかっただけで、それはカマラの弱さだけのせいとも言いきれない。けれどやはり今さら謝ってやっぱり愛していますと言ったって、それはラッチマンの方でも、そもそも自分がハナから身分を偽ったりしなければ…という自責や自嘲の念もあるだけに、やはり受け入れがたかったのでしょうよ…と、結末の納得度も上がる。1幕の展開といい、2幕の種明かしと決着の展開といい、改めて素晴らしい構成ですよねこの戯曲…!
 座付き作家のオリジナルの1幕ものでないことが残念なくらいに(私はこの枠での最高傑作を常に求めているので)、素晴らしい、愛すべき作品にまたひとつ出会えて、幸せでした。

 ミトさんは素晴らしく、なっちゃんの塩梅も絶品で、からんちゃんはもちろん上手く、れんこんも達者で素晴らしいんだけどもっと若手スターな役をやらせてくれてもいいのよ?と思ったり…たんちゃんがさすがでヤスが本当にいつでもどこでも頼れて、蘭くんももうこういうポジションはお手のもので、そしてぱるのジャスビルがちゃんとした笑いを取れるようになっていて安心しました! 赤坂ではまだお芝居感がなかった気がしたので…DCではちゃんと役のマヌケさで笑われていたかと思います。あとプロローグとかホント目立つ! 好き。そしてペルシャの美しさは武器。おはねちゃんはホント声がいいよね、顔が面長なのは気になるんだけれど(月娘に丸顔の可愛子ちゃんを可及的速やかに投入してほしいよ…)。詩ちづるはもっともっと可愛くなれるぞー、期待してるぞー!
 うみちゃんのヒロインはたくさんたくさん観てきたけれど、今回がベスト・アクトだったかもしれません。カマラにとても良くニンが合っていたと思いますし、これをもっとヨロメロやられていたらそもそも作品が成立していなかったと思うので。
 そしてれいこ様(あっ)、カテコのご挨拶も毎度おもろいことになっていますが、トップになっても別箱ではずっとコレを続けていってね…(笑)てかお披露目初日行くからね、もう今から楽しみです。なんでまだ発表ないの?(澄んだ目)
 組替えも、休演も、いろいろ大変だったことではありましょう。でも一皮も二皮も剥けて、まさに機は熟した!というところかと思います。そして次は2番手となるありちゃんが一皮剥ける時期が来るわけですよ…! 今、各組いろいろアレなので、最下級生2番手スターになっちゃうけれど、もともとありちゃんは抜擢続きだったんだしそれはもう仕方のない運命なので、切り開いていってもらうしかありません。きっと、絶対、大丈夫。
 『桜嵐記』は、主人公の跡を継ぐ弟がれいこだというから、一緒に自決する弟がありちゃん? 仇役はちなつ? それじゃベタすぎ? でも、楽しみに待ちたいと思います。目玉が涙で溶ける覚悟をしておきたいと思います。月組に、幸あれ!





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