駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『あなたの目』

2020年09月24日 | 観劇記/タイトルあ行
 新国立劇場、2020年9月23日19時。

 作/ピーター・シェーファー、演出・上演台本/寺十吾。60年代のロンドンを舞台にした80分全1幕の3人芝居。

 『わたしの耳』と対になる作品で、原題は「The Public Eye」。つまりパブリック・アイならぬプライベート・アイ、私立探偵のジュリアン(八嶋智人)がチャールズ(野間口徹)とベリンダ(小林聡美)の倦怠期の夫婦に「ステキな距離感を提案する」物語です。
 『わたしの耳』より断然おもしろく、よく笑いましたし、ハッピーエンドなので楽しく観終えました。『わたしの~』は、人は人の話を自分の聞きたいように聞く、というような話で、だから人はすれ違い別れていく…というような、シニカルで悲しいお話の印象がありましたが、「第三者の目」「自我を忘れ神のように『ただ見はるかすこと』の出来る探偵」が夫婦を掻き回しやがて再度結びつける今回のお話は、広い視野を持つこと、相手の気持ちになって考えてみることを提案しているようで、それで結局上手くいくお話なので幸せで、楽しく思えたのでしょう。
 私は冒頭は、ジュリアンの傍若無人さや失礼さ、話の通らなさや進まなさに、そう演出されているのだとわかりつつもイライラしました。さっさと安易に笑う客席にもイライラしました。まだ何もわからないのに、八嶋智人がやってるってだけで笑う気満々な感じなのがイヤなんですよね。チャールズの野間口さんは、私は舞台では初めて観たと思いますが、イメージどおり。しかし何より小林聡美がよかった! そこから俄然おもしろくなりました。出てくる前は20も若い妻の役?とか思っちゃったんだけど、外見とかそういうことではなくて、声と物言いがちゃんと若くてキュートでラブリーで、何よりちゃんとベリンダでした。若い、幼い、素直で明るくて何も知らなかった妻…というのは実はチャールズが持つイメージでしかなくて、本当の彼女は成長し変化していてもっと聡明です。そしてちゃんとチャールズを愛している。だからこそよりきちんと向かい合って愛し合いたいと思っているのに、チャールズが応じきれていないだけなのです。そういう状況が、ちゃんと3人の、そしてふたりずつの会話で浮かび上がってくる。戯曲の醍醐味を感じました。ちょっとあざといくらいの照明(北澤真)もよかった。でもやっぱり、ジュリアンにオルフェウスとエウリュディケの例えを出されて「ソレ誰?」とか言っちゃうベリンダが、本当によかったです。

 プロ風俗は容認、というのは昔の話で昔の作品だから、ということで容認しましょう。作者の代表作『エクウス』『アマデウス』『ピサロ』なんかも機会があれば観てみたいです。

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