駒子の備忘録

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『パリの恋人』~韓流侃々諤々リターンズ19

2020年09月23日 | 日記
 2004年SBS、全20話。

 パク・シニャン演じるハン・ギジュは財閥会長の息子で大手自動車メーカー社長、バツイチ、パリ駐在中、33歳。。ちょっと神経質な仕事の虫で、家政婦の首をしょっちゅうすげ替えています。
 その家政婦のバイトに飛びつくのが、キム・ジョンウン演じるヒロインのカン・テヨン。映画好きでパリに留学していますが、いつもお金に困っています。
 そしてイ・ドンゴン演じるユン・スヒョクはギジュの歳の離れた姉ギヘの息子、つまり甥っ子、26歳。アメリカで車のデザインを勉強したりもしていたけれど、今はやめてしまってパリで自分探し中、といったところです。
 ギジュの前妻スンギョンとか、再婚のお見合い相手ユナとかは出てきますが、韓ドラあるあるのがっつり四角関係というよりは、あくまでメイン3人の三角関係のお話です。というか、日本版DVDではテヨンとスヒョクの出会いの場面がカットされていて、あとから回想みたいな形で追加されるので後出し感が強く、スヒョクの負け戦感の強さがハナからハンパないです。実際、三角関係というにはテヨンは全然揺れないので、ギジュとテヨンが上手くいくかどうかがメインのラブストーリー、という感じかな。テヨンにきちんと告白するのはスヒョクが先なんだけれど、テヨンはただとまどうばかりで、最初からずっといい友達としてしか思っていないんですよね。スヒョクも分が悪いことはわかっていながらも、叔父のことも大好きなので、奪ってやる!みたいになかなかなれない。そういう意味ではせつないキャラで、話を盛り上げてはいます。
 後半はギジュの出生の秘密にまつわるストーリーになっていて、スヒョクも闇落ちするんだけれど、ややストーリーのためのご都合主義展開に見えました。特に銀行融資とか新社デザイン流出とかのエピソードがベタというかザルで、ビジネスってホントはこんなんじゃない、ってのが素人にもわかっちゃうので、ホントご都合主義すぎて興醒めするんですよね。チェ理事の扱いもひどいものでした。
 結局のところギジュはギヘの弟ではなく、彼女が17歳のときに産んだ息子で、若すぎたし釣り合わない相手だったし会長には跡継ぎがいなかったしで会長の息子ということにされたのだ…というのが事の真相で、ギジュとスヒョクは叔父と甥ではなく兄弟だった、というのがポイントの話です。確かにギジュが会長の息子ではなく外孫でしかなかったこと、かつ婚外子だったことは発覚すればスキャンダルとなったことでしょう。でもそこまで大きな問題か?とも思います。会長には他に息子がいないのだから跡継ぎは孫がなるしかないし、年長なのはギジュです。そして彼は親の七光りで入社したのかもしれないけれど、実際に豪腕を振るってよく働き、社を盛り立て、きちんと社長を務めてきた実績があるのです。いっとき騒がれてもやがて理解を得られるのでは? 政略結婚を強要されるほどの弱みか? と、どうしても思ってしまいます。しかもみんなギジュのために秘密にしようとするのがまたおこがましい。そりゃギジュは知ったらショックでしょう、アイデンティティの根幹が揺らぐ気もすることでしょう。でもしょせん彼自身にはどうしようもないことで、母親代わりに自分を育ててくれた姉に改めて産んでくれた母として感謝を捧げるだけで、あとは何も変わらず、今までどおり普通に仕事に励んでいくだけのような気がしちゃうんですよね。ギジュはそこまで弱くない。つまりこれはそこまで大事な秘密じゃない気がどうしてもしてしまうのです。もちろん韓国社会的にはまたちょっと違うのかもしれませんけれどね。
 後半の秘密を巡るドタバタと、出ました定番のヒロインの嘘の愛想尽かし…みたいなのが、ホントご都合主義展開、いかにもラストのハッピーエンドのために作為的に作られた山にしか思えなくて、見ていてちょっとダレちゃったし盛り上がらなかったかな…というのは、ありました。
 大ラスの、スヒョクの交通事故と記憶喪失は完全に蛇足です。ただ、さらに大ラスのギミックは、ちょっとおもしろくもあります。
 テヨンは再びパリに旅立ち、ギジュは再会を約束してそれを送り出し、2年かけて新車発売を成功させ代表理事となって社長を退き、骨休みと称してパリに出かけ、町工場で車の修理をしながら街をくまなくさまよい歩き、そしてテヨンと偶然再会して、本編はめでたく終わります。ふたりのそもそもの出会いから回想が始まり、しかしそれはソウルの高級マンションで家政婦として働くシナリオライター志望の女性が書き始めた原稿の冒頭で、彼女は通りに屋台を出して働くバイトもしていて、そこに車が突っ込んできて、その車の乗り手が実はそのマンションの持ち主で…この家政婦はもちろんキム・ジョンウンが演じていて、車の持ち主はパク・シニャンが演じています。屋台に車がぶつかって始まるのは、パリでのテヨンとギジュの出会いと同じです。そういう不思議なメタ構造になって、ドラマはソウルで終わるのでした。夢オチならぬ…なんでしょうね? 劇中劇オチ? ともあれ、このアイディアはちょっとおもしろいなと思ったでした。単に尺が余ったから、ではないとは思いますが、どうなんだろう…

 それはともかく、今回改めて見て、このハン・ギジュって、私にとって『ホテリアー』のシン・ドンヒョクに並ぶ素敵スーツ眼鏡キャラだわ、ということを発見しました。派手なスーツとシャツとネクタイがまたいい味出しているんですよね。プライベートのシャツがさらに派手な柄なのもツボです。あと眼鏡がたくさんあっていちいちお洒落!
 財閥会長の息子として生まれ、母は亡く、歳の離れた姉を母親代わりに、年の近い甥を弟代わりに、スネたりヒネたりせずまっすぐ育ち、成績優秀でスポーツ万能で趣味はアイスホッケーとクレー射撃というお坊ちゃま。外国語も堪能で、入社してからも親の七光りと陰口を叩かれたこともあったでしょうが豪腕でねじ伏せ、有無を言わさぬ実績を上げて今や名実ともに社長として信任を得てバリバリ働いている、カリスマのあるビジネスマンです。
 親の言うとおり政略結婚をして、妻となったスンギョンにはそれなりに誠意を持って対していたのだけれど、スンギョンはお嬢様にしてはちょっと芯がある女性だったのでその「それなりに」に我慢がならずまた寂しく思えて、彼女から離婚を切り出し、ギジュにはまだ未練があるというか承服しかねているところがあるんだけれど、とりあえず離婚後もいい友達、みたいな関係で。ギジュがパリに移ったのは離婚が社交界的にはスキャンダルで、そのほとぼりが冷めるまでの間、ということだったのでした。
 真面目で神経質で自分にも他人にも厳しく、豪腕で辣腕で人の恨みを買うことも多いけれど、とにかく仕事はできるし身内に対しては情が篤い。庶民的な食べ物とか遊びとかは全然知らなくて、ちょっと浮き世離れしたお坊ちゃんなところもあるんだけれど、テヨンやゴンに教わればてらいなく試してみる心の柔らかさはあるし、逆にテヨンがダンスや語学ができなかろうと決して馬鹿にしないし、自分ができるのはたまたま勉強したからでそんなにたいしたことではない、と決して偉ぶらない。尊大なところがなく、いたって鷹揚なのです。
 実はテヨンに対してが初恋で、でも当初の、これが恋だという自覚が全然ないころの、ギジュのテヨンやスヒョクに対する心の広さ、愛の大きさが私は本当に好きです。スヒョクはハナからテヨンが好きなのでギジュに対しても妬いたりなんたりいろいろしてるんだけれど、ギジュはテヨンとスヒョクが仲良しなのも一緒にいるのもすごく喜ぶんですよね。自分の仲良しが仲良しと仲良しなのが嬉しいし、スヒョクがテヨンを気にかけたりテヨンがスヒョクの世話を焼いてくれるのを喜ぶのです。彼のこの純粋さがとても愛しいです。そしてそれは、これが恋愛というものか、と自覚してからも意外と変わらない。テヨンを愛している、テヨンが一番大事、それは譲れない、というのがはっきりしていて、でも嫉妬とか執着とかで器の小ささを見せるようなこともなくて、ただただまっすぐで大きな愛情を注ぐのです。
 一方で、なのでこれまでそれなりにまっすぐ明るい道を歩いてきて、自己憐憫みたいなものに陥るようなこともなく、うつむいたことも自分の影を見つめたこともなかった男だったのが、恋を知り、苦しさを知り、うつむくことも泣くことも悔やむことも覚えていって、そしてそれをすべて受け入れていきます。その素直さもまた素晴らしく愛しく思えるキャラクターなのでした。
 そしてなんといってもえくぼがいい…! キャラとしても役者としても、ときめきまくりました。

 スンギョンがテヨンに対し変な小姑みたくならず、また妙に「良き魔女」みたくならない展開なのもよかったです。あと、ユナにはスンジュンを勧めたいが、どうだろう(笑)。スヒョクと同級生でギジュの後輩、今は社長秘書で公私ともにギジュを支えるナイスアシスタントのナイスガイ、いい物件だと思いますよ!?
 ちょっと余貴美子みたいな女優さんのギヘも素敵でした。こういういつまでもスレンダーで華やかでしっとりした色気があるマダム、これまた韓ドラあるあるですがホント素敵です。
 映画ネタが『オールド・ボーイ』押しなのも時代を感じて楽しいです。
 しかしキム・ジョンウンって細面というよりは単なる馬面であんま美人じゃないと思うんですよねー…というかテヨンって、そりゃけなげでいじらしくてバイタリティはあるかもしれないけれど、パリ留学だって映画監督だった父親への感傷でしているだけだし、帰国してもその日暮らしのバイトばかりでどうキャリアを積む気があるのか、どういう人生を生きたいと思っている女性なのかがまったく見えてこないキャラで、いい男ふたりに好かれるヒロインにしては魅力に欠ける気がしました。私が会長の家族でも嫁に迎えたくないよ…ここが私好みの女優かキャラなら、もっと萌えられて見られたのになー…
 あと、韓ドラを見ているとたびたび出てくる婚約式って、なんなんでしょうね? ほとんど結婚式の披露宴と同じことをやっているんだけれど、なんの意味があるものなんでしょう? ドラマの世界だけ? お金持ちの世界だけにあるもの? 届けを出していないだけで(韓国も結婚は婚姻届を出してするものなのかな?)あと全部結婚と一緒…ってのはよくわからん。同居するのは結婚したあととされているようだけど…ドラマ都合??
 なんにせよ、この時代の韓ドラを見ていると、昭和の残り香と遅れてきたバブル感がたまらなかったんだろうなと改めて思います。ギジュはともかく、テヨンやスヒョクやユナの働き方の描写は今見るとひどすぎて、イライラするくらいです。今の韓ドラはだいぶ違うんだろうなー…

 次こそ『コヒプリ』か、『太王四神記』にも行きたい気分でいます。でもまたしばらくノー予定の週末がないかな-。映画DVDもまだまだあるし、引き続きな懐かしくも楽しみです。



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