駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『39Steps』

2024年05月04日 | 観劇記/タイトルさ行
 宝塚バウホール、2024年4月30日11時半、15時。

 欧州各地の緊張が高まる1914年初頭、イギリスではドイツによる侵略戦争の計画が噂されている。南アフリカで鉱山技師として働いていた青年リチャード・ハネー(凪七瑠海)は、ダイヤモンドの採掘で一山当て、念願だった故郷での暮らしを叶えるためにロンドンへと戻ってきたが、代わり映えのしない毎日に飽き飽きしていた。そんなある日、退屈しのぎに訪れたミュージック・ホール「アリアドネ」で、店の踊り子アリス(野々花ひまり)と出会い、しばしダンスを楽しむが、憂鬱な気分は晴れない。だがアパートの自室に帰り着くやいなや、上の階に住む男が背中を刺された瀕死の状態で飛び込んできて…
 原作/ジョン・バガン、脚本・演出/田渕大輔、作曲・編曲/青木朝子、植田浩徳、多田里紗。ヒッチコックにより映画化され、近年はウェストエンドでも舞台化されたサスペンス『三十九階段』をミュージカル化したバウ・ヴォードヴィル。第二部は第一部の設定を踏襲し、「アリアドネ」のショータイムを見せる。全2幕。

 原作は未読。ライトに楽しめるミステリー、と聞いて楽しみに出かけました。午前の部を観たときには「二度観るほどのものでもないかな…」と思わなくはありませんでしたが、二度観ればやはりテンポが良く感じられるしあちこちチェックや再確認もできるし、ショーは楽しくて下級生までけっこう認識できたので、楽しい遠征となりました。咲ちゃんリサイタル組が観劇に来ていて、午前は咲ちゃんやすわっち、午後は愛すみれちゃんやはいちゃん、かせきょーのお姿を拝見しました。ありがたや…
 リチャードの現況は台詞や演技だけではよくわからず、本当に一山当てての帰国なのかもわからないくらいで、むしろ彼がスバイなのかな…とも思ったのですが、このミスリードは狙ったものなのでしょうか? でも、「♪人生は暇つぶし…」なんて歌う主人公に好感は持ちづらいので、もうちょっと台詞を足して、彼が現況に倦んでいるならそれをはっきり打ち出さないと、なんだかなあ、とはちょっと思いました。あとは警官の追及をかわすための無理チュー、って宝塚歌劇ではよくあるシチュエーションですが、今やこれは性犯罪だろうという視線が観客側にあるので、何もうちょっと考えた方がいいと思います。
 それでいうと頬に傷のある牧師(叶ゆうり)も別に本物の牧師ではないんだろうし、そのソロナンバーに歌い踊る修道女たちはイメージであって本物のシスターたちではないのかもしれませんが、ここの彼女たちのお衣装はいつかどこかからお叱りを受けるんではないでしょうか…イヤ大好物ですよ、私はね。でも宗教的なことに対してあまりに無頓着なことは、文化の違いという説明では逃げ切れない部分があるだろうとも思うので…あとリチャードの変装で中国人の易者になるのも、外国人差別表象と言われかねないと思いますよ? 原作や映画や舞台にあるのかもしれませんが、同じアジア人としてどうなのよ…?? こういうコンプラ意識は持っていきましょうよ劇団、それもパワハラ是正だけでない課題ですよ…?
 と、あちこちヒヤヒヤしなくもなかったですが、展開はわかりやすいし、なんせカチャはスマートでひまりが素晴らしいヒロインっぷりで、最後ににわにわがいいところをかっさらっていく、楽しい舞台だったので満足です。
 踊り子たちは妃華ちゃんに我が愛しの愛空みなみたんに星沢ありさちゃんがフィーチャーされていて(他にりなくる、仕事ができるもんで大家にイメージのダンサーに大活躍でした)、『ボイルドドイル』新公ではまだ笑顔が一種類しかないなー、と思ってしまった星沢ちゃんが表情豊かになっていて、成長著しかったです。まだまだ地味な潤花、くらいには見えたかな(笑)。なのでみなみたんもがんばれー! 下級生3人では星姫あやかちゃんが鬘が可愛くて、ちょっとバタ臭い顔立ちも映えていて良きでした。
 アリアドネの歌手ピーター(久城あす)のあすくんがさすがに華があって手堅く、バーテンダーのジャック(紀城ゆりや)も目立つところなんだけれどこれは可もなく不可もない感じ…この人は新公でもなんかいつも手堅いんだけど、私からしたらもう一押し爪痕を残してほしいところなんですよね。それからすると叶ゆうりが濃いのはもちろん、手下のしゃんたんと蒼波くんが振りきっていたのはよかったです。特に蒼波くんはあの前髪でファンを何人かつかんだと思う…(笑)あとは刑事(紗蘭令愛)の紗蘭くんも、これまで新公では手堅く上手いなーという印象でしたが、丸顔長身スタイル良しで、ちょっといいんじゃない!?実は有望な若手スターなのでは!?と今回開眼しましたよ私…なんかこれまで老け役ばっかやってなかった? 使おう、使っていこう!
 というわけでショーは英国のスパイといえば…で007推しでゴールドフィンガーから、若手男役では客席降りもあって、下級生みんながんばってカッコつけててめっちゃよかったです。本公演ではまだこんな大勢口にも入らない子も多いだろうから、貴重な経験だったと思います。下半身がまだパツパツなのも、豊かな将来性が詰まっているんだと思いました(笑)。
 次いでカチャがマタ・ハリ、ターゲットが叶ゆうり、そこに現れちゃった恋人の兵士?がしゃんたん、ギャルソンとして「スカイフォール」を歌うあすくん…という場面がまたよかった。てかカチャの女装なんて何度も何度も何度も観てきましたが、ここのお衣装の胴の透け具合はかなりアグレッシブでしたよね…! でも下品でないところが素晴らしいのですが(衣装/薄井香菜)。あすくんのお歌は絶品で、兵士が持ってきた薔薇の花束が最後に彼の手に渡るところも実にいいなと思いました。
 その後、名探偵ニワニワ(奏乃はると)と助手ヒマリ(野々花ひまり)、助手サラン(紗蘭令愛)がミスター・カチャを探しにクラブ「コパカバーナ」へ潜入…という流れ、メガネのひまりが可愛いよ! 手帳に金のヒマワリのシールが貼ってあるのも可愛いよ!! コパカバーナは全ツでも使ってるんだから被らないよう知恵使えよ…と思わなくもなかったですが、ニャンコみたいな手の振りが可愛いのと(振付/三井聡)懐かしの『A Motion!!』お衣装のアレンジだったので許します…(笑)
 そこからの娘役ちゃんのファンキーズは、めっちゃ可愛くてよかったんですが、歌はキーが低すぎてみんな合っていなかったのでは…星沢ちゃん上げを感じましたが、場数でゆきのちゃんとりなくるが歌えていて面目キープかと思いました。
 からの黒燕尾と娘役のブルーダイヤモンドは、ベタだけどうっとりしましたね…! バウであの人数であの大きさのスカートを広げて回るのはなかなか圧巻でした。デュエダンもしっかりあって、ひまりの役名は「ステイ・ゴールド」…! デコルテにVのラインのネックストラップがあるドレスって素敵ですよね! ごちそうさまでした。
 パレードは第一部の役に戻る感じで、手拍子で楽しく華やかに終えられて、よかったです。

 カテコでは劇中の台詞にある「最近ワクワクしたこと」をふたりずつ言っていくようでした。星沢ちゃんが美味しいもののことを考えるのが大好きで、千秋楽が終わったらアレ食べようコレ食べようと楽しみにしている、というのを、それが地なんでしょうけれどすごく高い声でハアハア語るもんだから、カチャがデレて合いの手をどんどん高い声にしていくのもおもしろかったですし、祈菜さあやちゃんが初めて男役さんと組んでカップル振りができて嬉しい、男役さんが本当にカッコよくて…みたいなことを、まだ全然できあがっていない声でほとんど素人みたいに話すのもホントいじらしくて可愛らしかったです。これもこういう別箱公演でないと下級生はなかなか経験できないことだと思うので、ホントよかったねーとこちらも微笑ましくなりました。
 贅沢に生バンドで、それも生徒には勉強、経験になったことでしょう。大阪公演もどうぞ無事の完走を、お祈りしています…!













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