駒子の備忘録

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有吉佐和子『非色』(河出文庫)

2024年02月09日 | 乱読記/書名は行
 終戦直後に黒人兵と結婚し、幼い子を連れてニューヨークに渡った笑子だが、待っていたのは貧民街ハァレムでの半地下生活だった。人種差別と偏見にあいながら「差別とは何か?」を問い続け、笑子はたくましく生き方を模索する…1964年、ニューヨーク留学後にアメリカの人権問題を内面から描いた傑作長編。

 2003年の重版を最後に、以後重版未定となっていた作品が復刊されたそうです。イヤすごい、全然古びていない、今も読まれる価値が十分にあります。文章がてきぱきしていて読みやすいのもあり、展開がスリリングなこともあり、ぐいぐい読んでしまいました。ラストも圧巻です。そしてなお考えさせられる…
「色に非(あら)ず」、その「色」とは何か…要するに「色眼鏡」の「色」と同じなのかな、とも思います。差別というより偏見、そして人権意識の欠如というか…人は弱いので誰しも自分より下を作って安心しようとしたり、敵を作って身内だけで固まって安心しようとしたりするものなのでしょう。そこを、そうじゃない、みんな違ってみんないい、みんな同じ、大事にし合おう、尊重し合おう…とまで持っていくには、人類はもう一段階優しく、賢くならないと駄目なんでしょう。でもその理想(というか本来あるべき姿であり、真実)、理屈が見えていて、わかっているのに、21世紀ももう4分の1が終わろうとしているのに未だ達成される気配がない。むしろ後退している国や地域すらある…情けない限りです。
 でも、笑子が決してへこたれなかったように、できるところから、前を向いて、進んでいくしかないですね。彼女のこのタフネス、バイタリティ、プライドや開き直り、ど根性は素晴らしい。こういうヒロインはなかなか描けないものなのではないかしらん…その点も、この題材で今なおこの作品を凌駕したものってある!? なくない!? と改めて新鮮に読みました。
 帯のブレイディみかこのコメントは「人を分かつものは色ではない。では何なのか? この小説の新しさに驚いた」とあります。この人選も的確だし、この人が言うからより価値あるコメントだと思いました。解説は斎藤美奈子、これもよかったです。必読。



 
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