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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『HiGH&LOW THE 戦国』

2024年02月10日 | 観劇記/タイトルは行
 THEATER MILANO-Za、2024年2月2日19時、7日19時。

 時は戦乱の世。かつてその一帯には五つの社が建てられ、社の周辺にそれぞれの国が栄えていった。以前は緑豊かだったが、内乱によって砂漠と化した「須和国」の若き指導者・黄斬(片寄涼太)は、国王の血を受け継ぐ幼馴染みの吏希丸(瀬央ゆりあ)らと国のために奔走していた。一方、河口に栄えた水の国「乃伎国」の湧水(水美舞斗)は若き城主で、本心では愛に満ちた世を望んでいるが、国を治める重圧に耐えるために非道な人間を演じていた。側近である弦流(藤原樹)は幼少期から一緒に育った湧水の心身を案じ、寄り添うが…
 企画・プロデュース/EXILE HIRO、演出/平沼紀久、脚本/平沼紀久、渡辺啓。多くの作品を生み出してきたシリーズの新作舞台で、演劇、コンサート、ダンス、ライブ、音楽、照明、世界観の融合を目指す。全1幕。

 宙組版以外の『ハイロー』ミリ知ら勢ですが、マイティー、せおっちの特別出演ということで(カチャの『テラヤマキャバレー』はスルーするくせに…)いそいそとチケットを取りました。というか友会抽選、どれだけ外れるものなのかよくわからなかったので二度入れたら二度とも当たりました(^^;)。マイ初日がA席で二階LB席、舞台の下手1/3が見切れましたがまあこんなものかな、と。マイ楽はS席一階下手ブロック後方で、視界はまったく問題ありませんでした。
 五チームに分かれて喧嘩してたら設定がなんだろうとはハイローなんでそうです(笑)。潔い、わかりやすい。実際、いつのどこの東京なんだ?って現代編よりは、日本でも地球ですらないなんちゃって「戦国」の方がなんでもアリで相性がよかったかもしれません。このアイディアは秀逸でしたね。
 ただ、その五つの国は頭文字がSWORDになるようにしなくていいんだ…?とはつっこみたかったです。また、全員主役がコンセプトで盛り沢山になりすぎたのかもしれないけれど、三つの国しかほぼ出てこないのもどうなんだろう…と外野ですがやはりつっこみたかったです。
 やってることはホント中二で、なんかラノベ作家志望の男子が書きたいところと書けるところだけ書いたみたいなホンだな、と思いましたが、やりたいことややろうとしていることがわかりやすいということもあり、意外にもとてもおもしろく観てしまいました。マイ初日は大仰なだけで芯を食っていない台詞や、会話の受け答えのおかしさ、強引さにやや鼻白んでしまい、ちょっと引き気味に観ていたのですが、だんだん物語というかドラマがヒートアップしてくるので、つい、つい…! なので二度目はわかって観られるおちつきもありましたし、わかって観ると意外に丁寧に作られていることもわかりましたし、しかしやっぱランボーだろ!ってところは熱さと勢いでごまかして、それでも成立させているんだからたいしたもんなんじゃないかい?と感心してしまったのでした。
 ミュージカルではなくて、演劇とライブとダンスが融合した舞台を新たに作ろうとしていて、初見ではトートツに思えたマイクを持っての歌唱タイムも、二度目には「ああ、これはキャラソン歌唱タイムなんだよね」と思えて、ストーリー展開を追うのを一休みして待てるようになりました(笑)。
 ただ、やはり休憩なし二時間半は長いのではあるまいか…尺的には半分手前かもしれませんが、全員が出てきて、弦流が「我が従うは、愛!」ってぶちかましたところで暗転、一幕終わり…でもよかったのではないかと思いました。
 あと、「生きろ、てめえら!」ってのは『ハイロー』の決め台詞なの? 他にも役者含めたメタっぽい台詞もあり、シリーズファンが観たらくすぐられる仕掛けもたくさんあるんだろうなと思いました。そこはわからなくて残念です。あとはラストに「ハイグラ」歌ってほしかった(なんの略? 正式な曲名すらよくわかっておらず、すみません…)、というツイートも見ましたが、それなら宙組版しか観ていない私のような新参者でもより楽しめたかもしれません。メインテーマ曲なんじゃないの? 残念…
 でも総じてホント楽しく観ました。なんならマイティーにもせおっちにもあまり興味がない私か、うっかり惚れる…!と震えるほど、いいお役を書いてもらっていたと思います。ありがたいことですねえぇ…!

 惜しいなと思ったのは、白1である黄斬がトップオブトップ、座長なんだと思うのですが、キャラクターとして今ひとつカッコ良く見えないというか、良さがわかりづらいお役だったんじゃないかなー、ということです。内乱で国土を砂漠化させてしまったこともあり、また兄とも慕った男を敵に回して斬らねばならなかったこともあったようで(つーかこのあたりの設定が盛りすぎなんですよね、みんな回想台詞で語るし…もう少し整理してもよかったかも)、三歩先を読む力を買われて国のトップになったようですが、やや厭世気味というか戦をすることの是非に悩んでいて、そこを剣の呪いにつけ込まれるような形になるのですが…なんかずっとうだうだしているだけに見えかねなくて、本当は平和主義とか理想主義者って悪いことではないしむしろ一段高いところにいるはずなんだけれど、戒(うえきやサトシ)あたりが言うようにこの戦乱の世では弱腰に思えて頼りない、ぐだぐだしているだけで決断力やリーダーシップに欠けるように見えちゃうと思うのです。台詞にあるほど三歩先を読んで民をビシバシ導くような場面が実はないしね。中の人は役のナイーブな感じをよく演じていたかな、とは思うのですけれど、このジャンプかマガジン、いやヤングチャンピオンかな、みたいな世界観のヒーロー、主人公としてはヌルかったのではないかしらん…
 まして、ここも設定盛りすぎなんだけれど、先代リーダーの息子はせおっち吏希丸なんでしょ? なのに世襲じゃなくて黄斬が今のリーダーに選ばれているんでしょ? そこには本当は何があったの? 吏希丸のクールさの方がむしろリーダー向きな気がするし、別に幼馴染みだから本人同士はどっちがやってもいいよくらいに思っているのかもしれないけれど、ここはなんか説明が要る気がします。よくあるのは御曹司の方が隻眼だとか病弱だとかでそれが忌避されて…みたいな設定ですかねえ。
 ともあれここは颯斗(小野塚勇人)の存在も効いていて、なかなか良きチームでした。この中の人はシリーズ初期からの参加組なんだそうですね、良き。

 さて、先に赤チーム尊武国の話をすると、ここは2の白銀(浦川翔平)がちょっとキャラブレして見えたかな…
 1の玄武(RIKU)はとてもわかりやすくハマっていて、喧嘩上等脳筋マッチョdeファイヤー!みたいなキャラで、中の人も十二分に楽しんで演じている感じがして、これまたいろいろ設定が乗ってるんだけど要らないんじゃないかなー、というくらいにベタでよくできていると思うのです。で、白金は彼に心酔している、より鉄砲玉気質の腰巾着子分に見えると思うのですよ、なんせ見目が。多分LDH界では宝塚歌劇の男役界と同様かそれ以上にタッパがないことはネックなんじゃないかと思いますが(少なくとも男性界がどうもそうらしいので。知らんけど)、それかこちらの思い込みか、とにかくそういうベタな子分キャラの2なのかな、と私は思ってしまったのです。ところがどっこい、彼はもっと賢明で冷静で視野が広い、むしろ参謀っぽいキャラなのでした。というか脚本と演技がそうなっている。そして中の人も、そもそもラッパーさんなのかな? ダンス・パフォーマンスもめっちゃすごいし、なんか「リーダーさんカッケーっス!」とかだけ言ってるような雑魚子分じゃないんですよ…! このイメージの裏切りが、なんかこうまた微妙にズレている気がして、ここもちょっともったいない気がしたのでした。

 しかし、フツーにしてればこの赤12、ないし白12でフツーにBLなんです(フツーとは)。しかし今作はあえて、青12の関係性をぶっ込んできているんですね。それがなんか、「ほほう、こういう(どういう?)男性が作るBLってこうなるんだな…)というようなことを考えさせられて、おもしろかったです。
 それはともかく、私の推しは青3です(笑)。稲清水鉄湯(櫻井佑樹)、これがむしろ腰巾着子分っぽくあるキャラだったのですが、タッパがあって妙にカッコいいし顔はいいし声もいいし、でもおもろ担当をさせられているようで、でも微妙に上手くできていなくて、その中途半端な感じすら愛しい…!と私はツボってしまったんですけれど、中の人は22年入団のようなのでまだ新人さんなんでしょうか。でもシリーズ出演二度目らしい。でもプログラムで「僕自身、中学・高校の頃にHiGH&LOWのファンでしたし」とか語っちゃってて、ソレずっとやってたパイセンが膝抜けて床に伏せるヤツ、この間れいこちゃんが下級生に「音校で『銀二貫』を観た」と言われて腰砕けになっていたヤツ…!って思いましたよね…(笑)でもその愛嬌含めて愛しいわ。てかマジもっと上手くやったらもっとすごい儲け役になっていた、ポテンシャルある役だと思いました。ずんちゃんとかそらとかがやるとめっちゃ上手いよ!みたいな…
 まあいい、BLに話を戻すと(BL言うな)、湧水と弦流も「昔からの友人」となっていて、白12の幼馴染みと同じやないかい!というのはまずつっこみたいのですが、湧水のキャラというか設定もまた黄斬と似ているところがあって、それはちょっとどうなのよ、もったいないなあ…とはまたまた思いました。こちらは若くしてリーダーとなったようで、その若さと美しさを侮られることを案じて、鬼面を被ってあえて冷酷に裏切り者を斬ってみせたりする…みたいなことをしていて、ソレ蘭陵王…!ってなりましたが、要するに本当は争いごとが嫌いな平和主義者で、というところが黄斬とかぶっているわけです。あと、後半この鬼面設定が全然出てこなくなっちゃうんで、オーイ(^^;)ってのも、ある。まあ本気で怒って戦うようになったからお面が要らなくなった、ってことなのかもしれませんが…でもなんせマイティーが、ある種の美形キャラとして配役されたんだと思うんですけれどまあ誰よりも男気にあふれた芝居をするので、なんか当初の意図と違うところでがっつり成立している気がしました。
 で、彼を慕う2の弦流の中の人がまた、え?この人もタカラヅカ?みたいな、いやタッパも体つきも立派に男性なんだけどスタイル良くて顔が綺麗で佇まいがなんとなくなよやかで、おおっとそうキタか…という腹心の友っぷりなんですよ。たいていは、1が無理して強がっているようなキャラなら、それを支える2は「ふたりだけのときは装わなくていい、つらいなら俺の胸で泣け」みたいに甘やかしてくれる、俺だけは本当のあいつを知っている、あいつのすべてを愛している…!みたいな形の関係に(要するに受け攻め、左右で言えば21に)なるものなんじゃないの?と私なんかはつい考えるのですが、それってもしかして古いのかしらん…プログラムでもしっかり「恋心」と表記されていますが、弦流自身も自分の想いに自覚的で、そしてそれは突き詰めれば「湧水さまに抱かれたい」と言っているようで、私はちょっと「おおぉ、そっち!?」と思ってしまったのでした。普通の男性をも右に置くマイティー、どんだけ…!
 ただ、まあもともと男子ばっかの喧嘩上等マッチョ馬鹿ワールドはボーイズクラブだしブロマンスとも相性良すぎなわけですが、そこであえて「禁断の恋」を描こうというなら(異性愛以外を禁断扱いすることの問題性は、ここではおきます)、前半に台詞でいいから母とか姉とか妹とかを出して、この世界にも女性はいるのね、と示しておかないと…とは思いました。なんせ日本でも地球でもない「戦国」なので(パラレルワールド、ってことなんでしょうね。しかし片寄さんとせおっちが二役でやる信長と蘭丸、要りました…?)、この世界にはそもそも男性しかいなくて単性生殖で増えたり世代交代している世界なのかもしれないな、なら男性同士の恋愛って普通のことじゃんねえ…ってなっちゃうでしょ? 後半に玄武の台詞で「酒、女、地位、名誉」みたいなベタな並べ方で言及されて初めて、ああここ女性がいるんだ…?ってなるんじゃ、駄目じゃん(アンサンブルのダンサーには女性たちがいて、これがまたものすごいアクロバティックを披露してくれるんですけどね)。私は女性キャラがいないBLにも男性キャラがいない百合にも厳しいんですよ…あくまで私のこだわり、ですが。
 まあでも、そうかこういう作品群を作っている座組でもこういうことを正面からやりたがるんだねえ、へーっ! でもさすがにガチ男優同士だと恥ずかしいから男役を呼んだってことなのかねー、とか考えました。そしてその起用は当たったのではあるまいか…そしてイメージ的にはマイティーの方が美形、優男キャラでせおっちの方が野郎臭いのでは、というところを、実はせおっちがクールな参謀格の腹心役にハマり、マイティーが腹心をも惚れさせる美丈夫リーダー役にハマるという、ミラクルが起きていたのでした…!
 しかし湧水は弦流に何を耳打ちしたの? 「俺もだよ」じゃないの? でもそのあとすぐ弦流は「始まる前に散る我が恋」みたいなことを言うんですよね、なら失恋したってこと…? なんかこのあたりの考察ツイートとか全然流れてこないんですけど、文化が違うの? 私がそのコミュニティにいられていないだけ? 私に見えていないだけ…?
 イヤしかしホントあのバックハグは至宝では…!?
 そして白も青も2が1の腕の中で息絶えるわけですが、トーゼンのように圧倒的にせおっちの方が上手いんですよね。苦しがり方とか、それでも微笑む感じとか…弦流は一本調子なんだもん、それでは萌えられないわ…まあスキルと経験値の差でしょう、いい機会だしよく見て勉強してください。てかマイティーはボロ泣きの大熱演で、さすがでしたよ…!

 玄武の師の影森(冨田正則)、もと盗賊の糜爛(阿部亮平)のふたりがどかんと立っていたのも勝因でしたね。星組ならひーろーとオレキザキがやるところです、わかりやすい。龍がどうとかいうのもシリーズ共通のネタなのかな…?
 結局のところ、ずっと戦っている話ではあるんですけれど(笑)、それでも最後には愛が大事、とか臆面もなく言っちゃうところが、素直でほほえましいしでも真実だし熱いし、で心に響いちゃうんでしょうね。ヤンチャとかヤンキーとかまったく興味ない私でも、そこに奮えたのでした。

 イヤしかしサブタイトルが「戦国時代活劇」はいいとして「拳は刀となり、天下は夢となる」ですよ!? いやーワケわかりませんよね!(笑)だがロマンがある、ドラマも作れている。ものすごいダンスやラップやアクロバティックのパフォーマンスがあり、しっとりバラードのコンサートタイムもある。何故公式グッズにペンラがないのかわかりません! それはともかく、エンタメとして志があるし、もっと望める気もするけれどとりあえず一定のレベルがちゃんとある。お客もしっかり入っているようですし、良き企画だったのではないでしょうか。男性ならでは、LDHならではのパフォーマンスもホント楽しかったです。有村先生のひょんなご縁から始まって、いいものが結実したなーと思います。
 ところで今プログラムを見たら「逢いことば」の作詞にマイティーがクレジットされていますね…? まあ歌うにあたり歌いやすいように歌詞に口を出した、程度かもしれませんが…てかこの曲は私も耳に残っていて、まだなんとなく歌えます。というか別にマイティーもせおっちも歌の人ではないけれど、やはり舞台スキルが圧倒的で、歌唱もしっかりしていてホントよかったです。やっぱ場数が違うよね…! 専科ってのもあるけど、どこに出しても恥ずかしくない、ってところまで仕上げてきた生徒に感服です。


 ところでやはりせおっちは外部でも愛されキャラなんですかね? まあマイティーの方がシャイで絡みづらいのかな、せおっちは人が好さそうだからなあ。カテコのいじりはたいていせおっちに飛ぶようで、そんなレポばっかだし私が観た二回とも同様でした。
 さらにマイ楽はアドリブがナートゥだったので、もしや?と思ったらこっちゃん、ひーろー、紫りらちゃんご観劇だったようで(雪東宝13時からハシゴしたらしい(笑))、カテコもナートゥ祭りになり、上手ブロック前方おそらく通路側に座っていたらしきこっちゃんは、スタオベになったあとは通路で見本ナートゥを踊ってくれて客席大盛り上がり、舞台もそれを真似て全員ナートゥのちバタバタ倒れる中、幕…となったのでした。おもしろすぎました! 規制退場の中、係に誘導されて先にハケる三人に客席から拍手…真性LDHファンにはなんのことやら、だったかもしれませんが、あとで解説されてください…(^^;)
 良きクロスオーバーになったのなら、ホントよかったですよね…! 宝塚歌劇が原作ものばかりになっちゃうんだったら、こういう外部コラボのオリジナルの方がチャレンジングでおもしろいぞ、ともなりかねないのかな、とも思います。娘役も、外部で女優とは違う働きをすることがありえると思うし、まだまだいろいろ可能性はあるんじゃないかしらんと思うと、やっぱりワクテカなのでした。
 引き続き、今後も見守り、わあわあ言いたいことを言おうと思います!










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