東京宝塚劇場、2002年1月29日マチネ。
春秋時代の中国。呉王夫差(轟悠)は父を越王に殺されていた。積年の恨みを晴らすべく越に攻め入る夫差。呉は勝利し、越は忠誠を誓う。祝いの席に、越の将軍范蠡(絵麻緒ゆう)が越王の娘・西施(月影瞳)を連れてくる。それが越の忠誠の証だというのだが…作・演出/酒井澄夫、作曲/吉田優子。
私は基本的にはこのタイプの宝塚歌劇が一番好きです。
歴史もの(架空のものでも可)で大芝居、コスチューム・プレイ。
トップと二番手が敵同士とかライバルで、トップ娘役はふたりの間で揺れる。
トップと三番手は主従か親友同士。
登場人物は愛と大義の間で思い悩む。
きらびやかな宴会ないし舞踏会シーンがあり、勇壮な戦闘を模した激しいダンスシーンがある。
この形が私としては最も、いわゆる「萌え」るのです。
今回はそれにぴったりの形で、専科の特出も大ベテランだけで組としてもがっちり固め合い、理想的でした。
まして主役カップルのあり方。私は「好き合っているのに素直になれない、反目しあう」という形がまた好きで好きで。
戦いに疲れてしまいひとときの安らぎと静けさを望む男が、敵の罠だと知りつつも貢がれてきた美女の麗しさにかりそめの愛を見ようとする。女は故国のため、幼なじみの恋人のため、自分を殺して人形となって敵国へ来たものの、思いがけない男の優しさに心惹かれてしまう。男は女を溺愛し、周囲はその様子に眉をひそめる。女も男を愛するが、故国のために男から機密を盗む。男は女の裏切りを知らないではないが、もうあと戻りはできない。やがて敵に買収された家臣が敵と結託して反旗を翻し、燃え盛る炎の中、ふたりは!!! ってなもんですよ。もりあがるでしょ?
でもね。実は私はイシちゃん(轟悠)が苦手なので、雪組はずっとご無沙汰だったんですけれど、むしろ今回はグンちゃん(月影瞳)の方が私には駄目でした。
なんであんな声でしゃべるの? 『凍てついた明日』(だっけな?)はどこに行っちゃったの? もっと地声で普通にしゃべったって十分お姫様らしさも情感も出せると思うんだけれど。妙に鼻にかかった裏声でしゃべるので、どうしても「作った声」にしか聞こえないんです。
この設定でおもしろいのはジレンマに葛藤するところなんだから、何が本心で何が演技なのか、何が真実で何が嘘なのかきちんと表現してくれないと訳わからなくなるというか、おもしろくなくなってしまうんです。でも、全部作った声に聞こえて、全部嘘に聞こえてしまったんですね。それじゃせつなくなれないんだよ~
もっとも、マヒルちゃん(紺野まひる)の超地声はかわいらしさがまったくなくて、次期トップ娘役も確定しているというのに、そんなんでいいんだろうかと思っちゃいましたが。
西施の命を狙う婉華は、国のため、そして恩ある伍封(朝海ひかる)に報いるために行動することになっていますが、伍封には恩返しだけでなく淡い恋心を抱いていたことにした方が、いじらしくてよかったんじゃないかなあ。別になんでもかんでも可愛子ぶれって言うんじゃないですけれどね。
ヒットだったのが王孫惟(貴城けい)。正しい四番手のポジションだわ。
三番手がトップの忠臣で耳に痛いことも言って最後には主の目を覚ますべく自決しちゃうようなキャラなら、四番手はもうちょっと周りが見えていない、主べったりの可愛らしい家臣(笑)。それが、西施の美しさに惚れ込んでしまう。
「弱みに付け込んで強引に迫」る、とパンフレットではなっているけれど、そういうコスい悪人ではなくて、なんかもっと純朴そうでポーっとなってて必死そうで、
「ご主人様は西施さまを護りきっていない、幸せにしていない、私と一緒にこの国を出て逃げよう!」
って感じで、妙によかったなあ。
この場に夫差が出てきて王を切っちゃって嫉妬や疑惑が燃えあがるのもよかった。ただし伏線として第6場のやりとりがあったんだろうけれど、私はのちにこのキャラがそんなおもしろいことをやってくれるとはこのときは思えなかった(つまり王が西施に惚れてるように見えなかった。ただの真面目な官僚かと思いました)ので、演出としてもう一考、というところなのかもしれません。
ラストシーンは、カッコよかったんだけれど(少なくとも「天上でのふたり」みたいなはしなかったことは私はうれしい。そういうの好きじゃないんです)、西施はセリ下がる必要あったのかなあ。横たわったままでも最後まで板付きでいてほしかった気がします。イシちゃんは専科に残るけれど、グンちゃんはサヨナラ公演なんだからさ。
ともあれ要のヒロインの演技が疑問だったものの、衣装も豪華で、役者も所を得ていて、いい作品だったと思います。
ロマンチック・レビュー『Rose Garden』は作・演出/岡田敬二、作曲は吉崎憲治他。薔薇づくしのレビューでした。
目についたのはブンちゃん(絵麻緒ゆう)の元気ぶり。次期トップは任しとけ!って感じ。
私はけっこう以前から密かにファンだったので、いつのまにこんなに大きく…と感涙ものでした。
コンビを組むことになるマヒルちゃんは、薔薇戦争のようなタイプのダンスはややつらそう。あと、張り付いたようにいつも同じ笑顔なのも気になりますが、精進してくれることではありましょう。
ダンシング・ローズの場では思わず『ダンディズム』を思い起こしてうっとりしました。
パレード前のデュエットダンスでイシちゃんが着た服のグレーというかベージュというかの色加減が美しかったなあ。岡田先生らしい、美しく楽しいレビューでした。
春秋時代の中国。呉王夫差(轟悠)は父を越王に殺されていた。積年の恨みを晴らすべく越に攻め入る夫差。呉は勝利し、越は忠誠を誓う。祝いの席に、越の将軍范蠡(絵麻緒ゆう)が越王の娘・西施(月影瞳)を連れてくる。それが越の忠誠の証だというのだが…作・演出/酒井澄夫、作曲/吉田優子。
私は基本的にはこのタイプの宝塚歌劇が一番好きです。
歴史もの(架空のものでも可)で大芝居、コスチューム・プレイ。
トップと二番手が敵同士とかライバルで、トップ娘役はふたりの間で揺れる。
トップと三番手は主従か親友同士。
登場人物は愛と大義の間で思い悩む。
きらびやかな宴会ないし舞踏会シーンがあり、勇壮な戦闘を模した激しいダンスシーンがある。
この形が私としては最も、いわゆる「萌え」るのです。
今回はそれにぴったりの形で、専科の特出も大ベテランだけで組としてもがっちり固め合い、理想的でした。
まして主役カップルのあり方。私は「好き合っているのに素直になれない、反目しあう」という形がまた好きで好きで。
戦いに疲れてしまいひとときの安らぎと静けさを望む男が、敵の罠だと知りつつも貢がれてきた美女の麗しさにかりそめの愛を見ようとする。女は故国のため、幼なじみの恋人のため、自分を殺して人形となって敵国へ来たものの、思いがけない男の優しさに心惹かれてしまう。男は女を溺愛し、周囲はその様子に眉をひそめる。女も男を愛するが、故国のために男から機密を盗む。男は女の裏切りを知らないではないが、もうあと戻りはできない。やがて敵に買収された家臣が敵と結託して反旗を翻し、燃え盛る炎の中、ふたりは!!! ってなもんですよ。もりあがるでしょ?
でもね。実は私はイシちゃん(轟悠)が苦手なので、雪組はずっとご無沙汰だったんですけれど、むしろ今回はグンちゃん(月影瞳)の方が私には駄目でした。
なんであんな声でしゃべるの? 『凍てついた明日』(だっけな?)はどこに行っちゃったの? もっと地声で普通にしゃべったって十分お姫様らしさも情感も出せると思うんだけれど。妙に鼻にかかった裏声でしゃべるので、どうしても「作った声」にしか聞こえないんです。
この設定でおもしろいのはジレンマに葛藤するところなんだから、何が本心で何が演技なのか、何が真実で何が嘘なのかきちんと表現してくれないと訳わからなくなるというか、おもしろくなくなってしまうんです。でも、全部作った声に聞こえて、全部嘘に聞こえてしまったんですね。それじゃせつなくなれないんだよ~
もっとも、マヒルちゃん(紺野まひる)の超地声はかわいらしさがまったくなくて、次期トップ娘役も確定しているというのに、そんなんでいいんだろうかと思っちゃいましたが。
西施の命を狙う婉華は、国のため、そして恩ある伍封(朝海ひかる)に報いるために行動することになっていますが、伍封には恩返しだけでなく淡い恋心を抱いていたことにした方が、いじらしくてよかったんじゃないかなあ。別になんでもかんでも可愛子ぶれって言うんじゃないですけれどね。
ヒットだったのが王孫惟(貴城けい)。正しい四番手のポジションだわ。
三番手がトップの忠臣で耳に痛いことも言って最後には主の目を覚ますべく自決しちゃうようなキャラなら、四番手はもうちょっと周りが見えていない、主べったりの可愛らしい家臣(笑)。それが、西施の美しさに惚れ込んでしまう。
「弱みに付け込んで強引に迫」る、とパンフレットではなっているけれど、そういうコスい悪人ではなくて、なんかもっと純朴そうでポーっとなってて必死そうで、
「ご主人様は西施さまを護りきっていない、幸せにしていない、私と一緒にこの国を出て逃げよう!」
って感じで、妙によかったなあ。
この場に夫差が出てきて王を切っちゃって嫉妬や疑惑が燃えあがるのもよかった。ただし伏線として第6場のやりとりがあったんだろうけれど、私はのちにこのキャラがそんなおもしろいことをやってくれるとはこのときは思えなかった(つまり王が西施に惚れてるように見えなかった。ただの真面目な官僚かと思いました)ので、演出としてもう一考、というところなのかもしれません。
ラストシーンは、カッコよかったんだけれど(少なくとも「天上でのふたり」みたいなはしなかったことは私はうれしい。そういうの好きじゃないんです)、西施はセリ下がる必要あったのかなあ。横たわったままでも最後まで板付きでいてほしかった気がします。イシちゃんは専科に残るけれど、グンちゃんはサヨナラ公演なんだからさ。
ともあれ要のヒロインの演技が疑問だったものの、衣装も豪華で、役者も所を得ていて、いい作品だったと思います。
ロマンチック・レビュー『Rose Garden』は作・演出/岡田敬二、作曲は吉崎憲治他。薔薇づくしのレビューでした。
目についたのはブンちゃん(絵麻緒ゆう)の元気ぶり。次期トップは任しとけ!って感じ。
私はけっこう以前から密かにファンだったので、いつのまにこんなに大きく…と感涙ものでした。
コンビを組むことになるマヒルちゃんは、薔薇戦争のようなタイプのダンスはややつらそう。あと、張り付いたようにいつも同じ笑顔なのも気になりますが、精進してくれることではありましょう。
ダンシング・ローズの場では思わず『ダンディズム』を思い起こしてうっとりしました。
パレード前のデュエットダンスでイシちゃんが着た服のグレーというかベージュというかの色加減が美しかったなあ。岡田先生らしい、美しく楽しいレビューでした。
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