駒子の備忘録

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宮部みゆき『ソロモンの偽証』(新潮社)全3巻

2014年04月29日 | 乱読記/書名さ行
 彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そしてその悪意ある風評は、目撃者を名乗る匿名の告発状を産み落とした…著者5年ぶりの現代ミステリー。

 ミステリーだし法廷ものでもあるけれど、何より青春小説でした。思春期小説といっても、ジュヴナイル小説といってもいいと思う。この時期の子供たちの物語でした。
 ギミックについては私にしてはかなり早い段階から気づいていたのですが、何せ和彦みたいなキャラクターが大好きなので、後半は「彼を幸せにしてあげて…!」と念じながら読みました。
 井上くんとかも好きです。ああいうお姉さんがいるというのもまたそれっぽいキャラクターです。
 藤野さんも好きです。優等生が好きなんですよねー。幼い妹たちがいる姉、というのはよくわからないんだけれど、さもありなんという感じ。

 大出くんや三宅さんがきちんと更生できたのかは、はっきりいってなんとも言えないとも思いました。
 でもたとえば、野田くんは確かに変わった。それでよかったのかな、と思います。柏木くんは自分で自分を殺してしまったけれど、それで憎悪とか混乱しか生まなかったわけではなくて、いい変化もちゃんとこの世界に与えて去ったのです。彼はこの世界に絶望してしまっていたけれど、本当は世界はこんなにも伸びやかなものなのでした。
 だからこそ彼の死を悼みつつ、泣きながら読み終えました。

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