相模大野グリーンホール、2015年12月12日マチネ。
1890年代、スペインの首都マドリード。近頃、財界で名を揚げている焦燥実業家リカルド・ロメロ(望海風斗)の別邸では、花形闘牛士エリオ・サルバドール(早霧せいな)を迎えて盛大な夜会が催されていた。コルドバから彗星のように現れたエリオは華麗な演技で国中の人々を魅了しており、闘牛の師アントン・ナバロ(蓮城まこと)の娘アンフェリータ(星乃あんり)との婚約も整い、栄光への道を突き進んでいた。だがその夜エリオは、思いがけずある女性と再会する。夜会の女主人でロメロの愛人でもある美貌の貴婦人エバ・シルベストル(咲妃みゆ)、彼女はかつてエリオが故郷コルドバで闘牛士見習いをしていた頃の恋人だった…
作/柴田侑宏、演出/中村暁、作曲・編曲/吉田優子、橋城、寺田瀧雄。1985年星組で初演、95,09年に花組で再演されたものの四演目。
私にとっては、初めて好きになったスターさんであるヤンさんのサヨナラ公演として思い出深い作品です。当時はまだそんなに何度もリピートしたりはしていなかったと思うのですけれど、実況CDはずっとずっと愛聴してきました。初演は映像でも観たことがなくて、花組全ツでの三演は私が宝塚から一番遠ざかっていた時期のことでもあり、確か友会で当たらなかったのですぐチケ取りを断念した記憶があります。大空さんがロメロだったというのに…もちろんDVDは持っています。今回久々に再生して、やっぱり「かっけー!」となりました。
小説とか映画とか、あるいはなんらかの史実とかを原作・元ネタにしていない、まったくのオリジナル作品は宝塚歌劇では意外に少ないのですが、私はそのオリジナル性をかなり高く評価していて、分けても『コルドバ』はとりわけ愛してきた作品でした。何度かあちこちで語っていると思います。
すごくよくできていると思うのです。キャラクター造形も、ドラマも、ストーリーも。台詞もセットも音楽もダンスナンバーも…
愛しすぎていて、脳内で捏造しすぎたきらいはあったかもしれません。今回、久々に生の舞台を観て、あれっととまどう…そんな観劇になりました。観たいものが観られなかったという勝手な当惑、失望であり、おそらく正当な評価ではないのだと思います。毎度のごとくごく一個人の感想記事ではありますが、感動した、最高だったという方には、以下はオススメできないかもしれません。毎度すみませんです…
まず、プロローグを冗長に感じた自分がショックでした。
というか、ちぎちゃんがあまりに細く小さく見えてしまって、ぶっちゃけ貧相だな…と感じてしまったんですね。咲ちゃんとかひとことかと並ぶと、お衣装がひとりだけ違っていて明らかに主役だとわかるにもかかわらず、私には周りに負けて見えました。二番手格として颯爽と登場しただいもんが、同じように背は決して高くないんだけれど、こちらは大きく見せていて、それこそ風格があって主役と対峙するキャラクターであることを明確に打ち出せていたと思えただけに、ちぎちゃんが弱く見えたことがショックでした。
で、歌がまたつらかった。そもそも上手くないし、声も高くて男役としては難しいタイプだとは思うのですが、キーが合っていないというのかなんなのか、とにかく私は聴いていてしんどかったのです。だからその後群舞になったりフォーメーションが変わったりなんたりしても、銀橋がないとかいうこと以上に、とにかく場面としてつらく感じてしまったのでした。
で、本編に入って最初のナギショーの歌がまたつらかった。脳内でガイチの、まっつの歌声を必死で再生しようとしましたが、そんなことはとうてい無理で…これまた声が特異なタイプで決して歌が上手くないスターですよね。これではあらすじというか設定が頭に入らないし、アルバロ(彩凪翔)のキャラクターもわかるも何もあったもんじゃないな…とますますつらくなりました。
夜会のエリオはやっぱり小さく見えました。柄もそうだし、私には今をときめく花形闘牛士に思えませんでした。『星影の人』とかのちぎちゃんのお芝居は好きだったんだけどなあ…ううーむ。
で、ゆうみちゃんのエバがまた、あえての役作りだったんだろうとは思うんだけれど、ミハルの低い声のおちついた大人の女像が私の脳裏にあっただけに、こんなに最初からキンキンしていたらあとで少女になれなくない…?と不安にさせられたのでした。結局最後の慟哭以外は感心しなかったな…ううーむ。
咲ちゃんのビセント(彩風咲奈)も役作りがよくわからなくて、エリオと対比が出ているのかもよくわからなくて、エリオが彼を諭せる先輩の位置にちゃんとあるのかどうかもよくわからなくて…しかもビセントとメリッサ(大湖せしる)ってここまで一緒にいる場面がないままに話が進みますよね。彼らがどんなに真剣な恋をしているのかということは台詞でしか語られないから、ちょっと弱く感じてしまいました。プロローグをあんなに長くやるくらいなら、きちんとこのふたりの逢い引きを見せる場面を新設した方がよかったのでは…などと考えてしまいました。
アンフェリータはすごくいい役だと思うのですが、無邪気なのかお馬鹿なのか残酷なのか考えなしなのかなかなか微妙な台詞を振られた、難しい役だとも思います。あんりの役作りはこれまたよくわからなかった…そしてこれも歌があまりにもつらかった。私はあんりは『パルムの僧院』でけっこう見直していて、これだけできるんだったらいっそメリッサが見たかった、というかもうこういう役のせしるには飽きた、とか思っていたのですが…ううーむ。
唯一胸がすくようだったのがだいもんロメロでした。決して出番は多くありませんが、声がいいし台詞がいいし歌がいいし居方がいいし演技がいいしとにかくカッコいい。だいもんだけがちゃんとしていたように私には見えてしまいました。
きんぐも大ちゃんももうちょっと素敵なはず、と、それは私が勝手に期待しすぎていたんだろうなあ、と思うのですが…ひとこは過不足ない感じだったかな。フェリーペ(永久輝せあ)はおいしい役だと思うけれど、ヘンに悪目立ちしたり場をさらっちゃったりしていないのがいいなと思いました。
とにかく全体的に、舞台の構成、構造が古くさく思えてしまったことが個人的にはショックでした。シンプルなだけに時を超えられるし、全ツにも持って行ける素晴らしいセットだ、だと今まで考えてきたのですが…うううーむむむ。
この大時代的なクラシカルなロマンを、香気と含蓄にあふれ今観てもゆかしく思える舞台に、できていないなと思いました。生徒の演技力の問題なのか、演出の手の加え方の問題なのか…?
現代的な、スピーディーな、山あり谷ありのドラマチックな舞台ではもちろんないのはわかっている、しかしそれと遜色ない古典的な美しさと普遍性のある人間ドラマが観られるはずだと、私は思っていたのですけれどね…
秘密を知ってからのちぎちゃんエリオはすごくよかったかなーと思えただけに、なんだろうこのちぐはぐさは…と思いながら、観終えることになってしまったのでした…
そしてショーは、やっぱり疲れました…
あと、こちらもだいもん以外の歌がとにかくつらかったです。本公演からの役替わりでキーが合っていないスターさんも多かったのかもしれないけれど…
「エスメラルダ」以外のたいした歌詞があったわけではないのかもしれませんが、とにかく歌詞なんかまったく聴き取れなかったし、メロディも追えないし、雰囲気というかどんなムードを出したい歌なのかもよくわからないものばかりだった気がします…ううーむ。
でも私はヨシマサショーがわりとダメなので、個人的な問題なのかもしれません。こんな感想でホントすみませぬ…
1890年代、スペインの首都マドリード。近頃、財界で名を揚げている焦燥実業家リカルド・ロメロ(望海風斗)の別邸では、花形闘牛士エリオ・サルバドール(早霧せいな)を迎えて盛大な夜会が催されていた。コルドバから彗星のように現れたエリオは華麗な演技で国中の人々を魅了しており、闘牛の師アントン・ナバロ(蓮城まこと)の娘アンフェリータ(星乃あんり)との婚約も整い、栄光への道を突き進んでいた。だがその夜エリオは、思いがけずある女性と再会する。夜会の女主人でロメロの愛人でもある美貌の貴婦人エバ・シルベストル(咲妃みゆ)、彼女はかつてエリオが故郷コルドバで闘牛士見習いをしていた頃の恋人だった…
作/柴田侑宏、演出/中村暁、作曲・編曲/吉田優子、橋城、寺田瀧雄。1985年星組で初演、95,09年に花組で再演されたものの四演目。
私にとっては、初めて好きになったスターさんであるヤンさんのサヨナラ公演として思い出深い作品です。当時はまだそんなに何度もリピートしたりはしていなかったと思うのですけれど、実況CDはずっとずっと愛聴してきました。初演は映像でも観たことがなくて、花組全ツでの三演は私が宝塚から一番遠ざかっていた時期のことでもあり、確か友会で当たらなかったのですぐチケ取りを断念した記憶があります。大空さんがロメロだったというのに…もちろんDVDは持っています。今回久々に再生して、やっぱり「かっけー!」となりました。
小説とか映画とか、あるいはなんらかの史実とかを原作・元ネタにしていない、まったくのオリジナル作品は宝塚歌劇では意外に少ないのですが、私はそのオリジナル性をかなり高く評価していて、分けても『コルドバ』はとりわけ愛してきた作品でした。何度かあちこちで語っていると思います。
すごくよくできていると思うのです。キャラクター造形も、ドラマも、ストーリーも。台詞もセットも音楽もダンスナンバーも…
愛しすぎていて、脳内で捏造しすぎたきらいはあったかもしれません。今回、久々に生の舞台を観て、あれっととまどう…そんな観劇になりました。観たいものが観られなかったという勝手な当惑、失望であり、おそらく正当な評価ではないのだと思います。毎度のごとくごく一個人の感想記事ではありますが、感動した、最高だったという方には、以下はオススメできないかもしれません。毎度すみませんです…
まず、プロローグを冗長に感じた自分がショックでした。
というか、ちぎちゃんがあまりに細く小さく見えてしまって、ぶっちゃけ貧相だな…と感じてしまったんですね。咲ちゃんとかひとことかと並ぶと、お衣装がひとりだけ違っていて明らかに主役だとわかるにもかかわらず、私には周りに負けて見えました。二番手格として颯爽と登場しただいもんが、同じように背は決して高くないんだけれど、こちらは大きく見せていて、それこそ風格があって主役と対峙するキャラクターであることを明確に打ち出せていたと思えただけに、ちぎちゃんが弱く見えたことがショックでした。
で、歌がまたつらかった。そもそも上手くないし、声も高くて男役としては難しいタイプだとは思うのですが、キーが合っていないというのかなんなのか、とにかく私は聴いていてしんどかったのです。だからその後群舞になったりフォーメーションが変わったりなんたりしても、銀橋がないとかいうこと以上に、とにかく場面としてつらく感じてしまったのでした。
で、本編に入って最初のナギショーの歌がまたつらかった。脳内でガイチの、まっつの歌声を必死で再生しようとしましたが、そんなことはとうてい無理で…これまた声が特異なタイプで決して歌が上手くないスターですよね。これではあらすじというか設定が頭に入らないし、アルバロ(彩凪翔)のキャラクターもわかるも何もあったもんじゃないな…とますますつらくなりました。
夜会のエリオはやっぱり小さく見えました。柄もそうだし、私には今をときめく花形闘牛士に思えませんでした。『星影の人』とかのちぎちゃんのお芝居は好きだったんだけどなあ…ううーむ。
で、ゆうみちゃんのエバがまた、あえての役作りだったんだろうとは思うんだけれど、ミハルの低い声のおちついた大人の女像が私の脳裏にあっただけに、こんなに最初からキンキンしていたらあとで少女になれなくない…?と不安にさせられたのでした。結局最後の慟哭以外は感心しなかったな…ううーむ。
咲ちゃんのビセント(彩風咲奈)も役作りがよくわからなくて、エリオと対比が出ているのかもよくわからなくて、エリオが彼を諭せる先輩の位置にちゃんとあるのかどうかもよくわからなくて…しかもビセントとメリッサ(大湖せしる)ってここまで一緒にいる場面がないままに話が進みますよね。彼らがどんなに真剣な恋をしているのかということは台詞でしか語られないから、ちょっと弱く感じてしまいました。プロローグをあんなに長くやるくらいなら、きちんとこのふたりの逢い引きを見せる場面を新設した方がよかったのでは…などと考えてしまいました。
アンフェリータはすごくいい役だと思うのですが、無邪気なのかお馬鹿なのか残酷なのか考えなしなのかなかなか微妙な台詞を振られた、難しい役だとも思います。あんりの役作りはこれまたよくわからなかった…そしてこれも歌があまりにもつらかった。私はあんりは『パルムの僧院』でけっこう見直していて、これだけできるんだったらいっそメリッサが見たかった、というかもうこういう役のせしるには飽きた、とか思っていたのですが…ううーむ。
唯一胸がすくようだったのがだいもんロメロでした。決して出番は多くありませんが、声がいいし台詞がいいし歌がいいし居方がいいし演技がいいしとにかくカッコいい。だいもんだけがちゃんとしていたように私には見えてしまいました。
きんぐも大ちゃんももうちょっと素敵なはず、と、それは私が勝手に期待しすぎていたんだろうなあ、と思うのですが…ひとこは過不足ない感じだったかな。フェリーペ(永久輝せあ)はおいしい役だと思うけれど、ヘンに悪目立ちしたり場をさらっちゃったりしていないのがいいなと思いました。
とにかく全体的に、舞台の構成、構造が古くさく思えてしまったことが個人的にはショックでした。シンプルなだけに時を超えられるし、全ツにも持って行ける素晴らしいセットだ、だと今まで考えてきたのですが…うううーむむむ。
この大時代的なクラシカルなロマンを、香気と含蓄にあふれ今観てもゆかしく思える舞台に、できていないなと思いました。生徒の演技力の問題なのか、演出の手の加え方の問題なのか…?
現代的な、スピーディーな、山あり谷ありのドラマチックな舞台ではもちろんないのはわかっている、しかしそれと遜色ない古典的な美しさと普遍性のある人間ドラマが観られるはずだと、私は思っていたのですけれどね…
秘密を知ってからのちぎちゃんエリオはすごくよかったかなーと思えただけに、なんだろうこのちぐはぐさは…と思いながら、観終えることになってしまったのでした…
そしてショーは、やっぱり疲れました…
あと、こちらもだいもん以外の歌がとにかくつらかったです。本公演からの役替わりでキーが合っていないスターさんも多かったのかもしれないけれど…
「エスメラルダ」以外のたいした歌詞があったわけではないのかもしれませんが、とにかく歌詞なんかまったく聴き取れなかったし、メロディも追えないし、雰囲気というかどんなムードを出したい歌なのかもよくわからないものばかりだった気がします…ううーむ。
でも私はヨシマサショーがわりとダメなので、個人的な問題なのかもしれません。こんな感想でホントすみませぬ…
思い入れのある作品の再演を楽しむのは、なかなか難しいことかもしれませんね。
私はヅカ観劇歴10年程度の新参者なので、あまりそういう経験がありません。
柴田作品にもことさら愛着があるという訳ではないので、「哀しみのコルドバ」は普通に楽しめましたし、09年の花組全ツよりは、面白く感じました。
ちぎちゃんの役作りは、私は全くOKでした。
あんりちゃんについては、私ももう少し別のアプローチで良かった気がしましたけど…。
ただ何となく、あれって本人の演技プランではない気がします。
「ラ エスメラルダ」は、私の周囲では割と評判が良かったです。
私自身、本公演でも全ツもとても楽しく観たのですが、場面ごとに考えてみると好みのシーンはあまりないという…。
だいもんは大好きなんですが、パリの場面はあまり面白いとは思わなかったし(苦笑)。
歌詞が聞き取りにくいのと、スターさんの音域とあっていない曲が多いことについては、ムラで見てすぐヨシマサに手紙を書きました!
色々と瑕疵はある。でも、ショー全体としては「あー、楽しかった」という満足感がある。そんな不思議な作品でした。
何といっても、組子が皆楽しそうに歌い踊っているのが嬉しかったのかも知れません。
まあ、所詮組ファンですから。
ムラの「星逢一夜」で初めてヅカ観劇された知人(50代男性)が「ラ」について、
「ショーは何だか、とても元気になれる」とおっしゃっていたのが、的を射ている感想のような。
全ツ宮崎では、夫を亡くしたばかりの友人(50代女性)が、「あー、すごく元気が出た」と言ってくれて嬉しかったです。
いつも言いっぱなしになってしまうこんな不遜なブログにいらしていただけて、感謝しております。
来年も懲りずによろしくお願いいたします…
私の周りのオールドファンは、やはり初演の記憶があるような方もいるのでなおさら、
ダメだった方が多かったんですよね、『コルドバ』。
本当はもっとフラットに観たいし、観るべきだし、組ファンと同じ気持ちで宝塚ファンとして心広く観たいのですが…
ら、来年の課題とさせてください(^^;)。
ショーに関しては特に、自分でも見方が下手だと思っているので、さらに精進を重ねたいです…
こちらでは、とりいそぎ。
●駒子●